藤原進之介 | 2026年6月6日
2018年、ある個別指導塾の教育コラムに「センター試験廃止後はこうなる!」という記事が掲載されました。大学入試改革への警鐘を鳴らし、保護者や生徒への情報提供を目的としたその記事は、2018年当時の答申や文部科学省の方針をもとに、2020年以降の大学入試の変化を予測したものでした。
あれから8年が経ちました。2026年の今、実際の入試はどうなったのでしょうか。2018年の予測と現実を比較しながら、これから受験を迎えるお子さんを持つ保護者の方に、今の大学入試のリアルをお伝えします。
この記事で比較・整理すること
- 2018年時点で予測されていた大学入試改革の内容
- 2026年の実際の大学入試(共通テスト)の状況
- 英語外部検定利用入試:予測と現実の乖離
- 総合型選抜(旧AO入試)の現在
- 情報I という「新たな変化」
- 2026年を生きる受験生・保護者が今すべきこと
2018年の予測:「センター試験廃止でこうなる」
2018年の記事では、文部科学省の中央教育審議会が提出した答申に基づき、以下のような変化が予測されていました。
- センター試験の廃止と「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の導入
- 記述式問題の導入
- 高校在学中に複数回受験できる仕組みの創設
- 英語外部検定試験(英検・TEAP・IELTS等)の1次試験代替
- AO入試・推薦入試の廃止と新しい選抜方式への移行
- 思考力・判断力・表現力を問う「21世紀型学力」の評価
こうした予測は、当時の保護者・受験生に衝撃を与えました。「暗記中心の勉強では通用しなくなる」「英語は4技能が問われる」「AO推薦が廃止される」……。不安と期待が入り混じる大きな変化が、まさに迫ってきているように見えました。
2026年の現実:何が実現し、何が変わったのか
実現したこと
共通テストへの移行(2021年〜):センター試験は2020年度(2021年1月)をもって廃止され、大学入学共通テストに移行しました。これは予測通りです。ただし「5〜10段階評価」は実現せず、引き続き点数制で実施されています。
英語の均等配点化:共通テストの英語はリーディング100点・リスニング100点の均等配点となりました。旧センター試験のリーディング200点・リスニング50点という偏りが解消され、「聞く力」が従来より重要になりました。
英語外部検定の活用拡大:英検・TEAP・IELTSなどのスコアを入試に活用する大学は2026年時点で700校以上に上ると言われています(詳細は各大学公式情報でご確認ください)。ただし、共通テストの「代替」にはなっておらず、あくまでも「加点・換算・出願要件」という位置づけの大学がほとんどです。
総合型選抜(旧AO入試)の拡大:「廃止」という予測は実現せず、むしろ逆方向に動きました。現在、私立大学入学者の約50〜60%が総合型選抜・学校推薦型選抜で入学しているとも言われています(大学・年度によって異なります)。AO・推薦は廃止されるどころか、拡大したのです。
実現しなかったこと・変わったこと
記述式問題の大規模導入:共通テストへの記述式問題導入は、採点の公正性・採点者確保の問題から見送られました。現在も共通テストは基本的にマーク式(選択式)です。
複数回受験:年に複数回受験できる仕組みは実現しませんでした。共通テストは依然として年1回(1月)の実施です。
英語外部検定の一次試験代替:「英検に合格すれば共通テストの英語が免除される」という方向性は実現しませんでした。外部検定は「加点・優遇」という位置づけで、共通テスト自体の代替にはなっていません。
2018年には予測されていなかった変化:情報Iの追加
2018年当時の記事には含まれていませんでしたが、2026年の大学入試において最も大きな変化のひとつが「情報I」の追加です。
2025年度入試(2025年1月実施)から、大学入学共通テストに「情報I」が新設されました。国公立大学を受験するほぼすべての受験生が対象となる100点満点の科目です。プログラミング・アルゴリズム・データ分析・ネットワーク・情報社会・論理回路などが出題範囲です。
2018年の記事は「AIや3Dプリンターによる社会変化」を論じていましたが、まさにそのAI時代への対応として、「情報を読み解き、論理的に考え、デジタル社会を生き抜く力」を問うことが入試でも求められるようになったといえます。
2018年の予測が正しかった本質的な部分
細かい制度の予測には外れた部分もありますが、2018年の記事が指摘した「本質的な変化の方向性」は、多くが正しかったといえます。
「暗記中心の学力では通用しなくなる」:共通テストの問題はセンター試験より「思考・判断・表現」を問う傾向が強くなっています。長文の情報処理・複数の資料を統合する力・考えを表現する力が重視されています。
「英語4技能が重要になる」:リスニング配点の均等化・英語外部検定の活用拡大により、「読むだけ」の英語力では不十分になっています。
「中高一貫校が有利になる」:高校受験がない6年間を大学受験準備に使える中高一貫校の有利性は、2026年も変わりません。特に総合型選抜が拡大した現在、中高一貫校で活動・探究・資格取得を積み上げられる環境の優位性は高まっています。
「21世紀型学力の時代が来る」:情報Iの追加・総合型選抜の拡大・プログラミング的思考の重視と、2018年に予測された「知識の暗記だけでは通用しない時代」は確かに来ています。
2026年の大学入試:2018年と比較したまとめ表
| 項目 | 2018年の予測 | 2026年の現実 | 一致度 |
|---|---|---|---|
| センター試験廃止 | 2020年廃止 | 2021年から共通テストに移行 | ◎ほぼ一致 |
| 記述式問題 | 共通テストに記述式を導入 | 見送り(マーク式のみ) | ✕実現せず |
| 複数回受験 | 年複数回受験可能に | 年1回のみ継続 | ✕実現せず |
| 英語外部検定 | 共通テスト代替になる | 代替ではなく加点・優遇で700校以上 | △方向は正しいが形が違う |
| AO・推薦入試 | 廃止し新形式へ | 廃止されず総合型選抜として拡大 | △廃止は誤り、方向性は近い |
| 思考力・表現力重視 | 21世紀型学力が問われる | 共通テスト・総合型選抜で実現 | ◎ほぼ一致 |
| 情報教育 | (記述なし) | 情報Iが共通テスト必須科目に(2025〜) | →2018年には予測されなかった変化 |
2026年の受験生と保護者が今すべきこと
2018年の記事は「この改革に合わせた勉強が必要だ」と警鐘を鳴らしました。2026年の今、その「改革後の入試」は現実となっています。
英語:4技能のバランス強化と外部検定取得
共通テストの英語はリーディング・リスニングが各100点の均等配点です。「読む力だけ」の受験英語は通用しません。加えて、英検・TEAP等の外部検定スコアが700校以上の大学で活用されている今、英検2級〜準1級の取得は推薦・総合型選抜を有利にする武器です。英語の学習は「受験英語」と「外部検定対策」を並行して進めることが効率的です。
情報I:共通テスト必須科目の確実な対策
2025年から追加された情報Iは100点満点の必須科目です。プログラミング(DNCL擬似言語)・データ分析・ネットワーク・論理回路が出題範囲です。学校の授業だけでは対策が不十分なケースも多く、早めの確認と補強が必要です。
総合型選抜:高1から意識した活動と記録
私立大学入学者の約50〜60%が総合型・推薦選抜で入学している現在、一般入試だけを見据えた準備は選択肢を狭める可能性があります。部活動・課外活動・英検スコア・探究学習の成果を高1〜高2から意識して積み上げることで、総合型選抜という選択肢を持てます。
中高一貫校生:高1・高2から大学受験準備を
高校受験がない6年間を大学受験に活かせる中高一貫校は、2026年も有利な立場にあります。ただし「まだ時間がある」という先送りは危険です。高1から数学・英語の土台を固め、英検を取得し、探究活動に取り組むことで、その優位性が最大化されます。
AIの時代に、入試改革の本質を考える
2018年の記事は「知識は検索できる時代になった。思考力・判断力・表現力こそが問われる」と書いていました。あれから8年、ChatGPTを始めとするAIが日常に入り込み、その言葉はさらに真実味を増しています。
AIで検索すれば、世界中の知識に瞬時にアクセスできます。しかしAIの出力を「正確に評価し、自分の文脈で活用し、責任を持って使う」ためには、英語の構造を理解する力・情報の論理を読み解く力・数学的な思考力・自分の言葉で表現する力が必要です。
大学入試改革が目指していた「21世紀型学力」は、まさにAI時代を生き抜くための学力でもあったのです。
学びとは、点数のためにあるのではありません。不確かな世界で、自分の頭で考え、言葉で伝え、他者と協力して未来を作るための力をつけるためにあります。2018年の記事も、2026年の現実も、そしてこれからの教育も、根本ではそこにつながっています。
まとめ
2018年に予測されたセンター試験廃止・英語4技能重視・21世紀型学力の評価という「本質的な変化の方向性」は、2026年の現実にほぼ反映されています。一方、記述式問題・複数回受験・英語外部検定の完全代替という「細かい制度変更」は実現しませんでした。
そして2018年には予測されなかった変化として、情報Iの必須化・AIの普及・総合型選抜のさらなる拡大があります。
受験制度は変わり続けています。しかし、「思考力・表現力・真の理解力を持つ人材を育てる」という方向性は変わっていません。その本質を見据えながら、今できることを一つずつ積み上げていくことが、これからの受験でも、そしてその先の人生でも、最も確実な道です。
※この記事は2026年6月時点の情報をもとに整理しています。大学入試制度・各大学の選抜方法は毎年変更される可能性があります。最新情報は大学入試センター公式サイト・各大学の公式入試要項でご確認ください。参照:文部科学省中央教育審議会答申(2014年12月)・大学入試センター公式情報(2026年6月確認)。
著者:藤原進之介(株式会社数強塾 代表)
東進ハイスクール情報科専任講師。株式会社数強塾代表。数強塾グループ代表。累計指導生徒数2,000名超。横浜市石川町。2018年当時から大学入試改革を注視し、保護者・生徒への情報発信を続けてきた。
数強塾グループ 無料相談・学習サポート
数強塾グループでは、大学入試改革に対応した数学・英語・情報Iの個別指導、総合型選抜対策、英検対策を行っています。入試改革について不安や疑問のある方は、まず無料相談をご活用ください。


コメント