直角三角形には専用の合同条件が2つあります。
①斜辺と1つの鋭角 ②斜辺と他の1辺
なぜ専用の条件があるのか——直角が1つ、はじめから等しいと分かっているからです。そのぶん必要な条件が減ります。
一般の合同条件との関係
| 直角三角形の条件 | 帰着する一般の条件 |
|---|---|
| 斜辺と1つの鋭角 | 1辺とその両端の角 |
| 斜辺と他の1辺 | 3辺 |
なぜ「斜辺と1鋭角」でよいのか
直角が90度、鋭角が分かれば、残りの角も自動的に決まります。
3つの角がすべて決まり、さらに1辺(斜辺)が等しいので形も大きさも一致します。
なぜ「斜辺と他の1辺」でよいのか
三平方の定理で、残りの1辺が計算できるからです。
斜辺5、他の1辺3なら
残りは必ず4——3辺がそろうので合同です。
【検算】斜辺13、他の1辺5なら で12。やはり1通りに決まります ○
ここが大事:直角でないと成り立たない
「2辺と1角が等しい」——その角が直角でなければ、合同とは限りません。
AB=5、∠A=30度、BC=3 の三角形は、1つに決まりますか。
2つあります。点Cの位置が2か所とれるからです。
Aから30度の向きに引いた直線上で、Bからの距離が3になる点は2つ見つかります。
【検算1】Bから直線までの距離を計算します。
BC=3は2.5より大きく、5より小さい。この範囲だと交点が2つできます ○
【検算2】実際に長さを求めると、AC は約5.99 と約2.67 の2通り。合同ではありません ○
直角のときだけ、斜辺が最長なので位置が1つに決まる
これが「直角三角形専用の条件」が成り立つ理由です。
使ってみる:二等辺三角形の性質
AB=ACの二等辺三角形ABCで、Aから辺BCに垂線AMを引きます。BM=CMであることを証明しなさい。
証明
△ABMと△ACMにおいて
- (垂線だから)
- (仮定)——斜辺
- は共通——他の1辺
直角三角形の斜辺と他の1辺がそれぞれ等しいので
△ABM ≡ △ACM
対応する辺は等しいので 。
【検算】座標で確かめます。A(0,4)、B(-3,0)、C(3,0)、M(0,0)とすると
どちらも5。そして
一致 ○ AM は共通で4です。
斜辺はどれか、必ず確認する
斜辺=直角の向かい側の辺=いちばん長い辺
この2つは同じことです。三平方の定理から、直角の対辺がいちばん長くなります。
【検算】3・4・5の直角三角形で、いちばん長いのは5。直角は5の向かい側にあります ○
条件を書くときは「斜辺」と明記してください。ただ「1辺が等しい」では不十分です。
使い分けの早見表
| 分かっているもの | 使う条件 |
|---|---|
| 斜辺+鋭角 | 斜辺と1つの鋭角 |
| 斜辺+斜辺でない辺 | 斜辺と他の1辺 |
| 直角をはさむ2辺 | 一般の2辺とその間の角 |
| 斜辺でない1辺+鋭角 | 一般の1辺と両端の角 |
直角三角形でも、一般の条件が使えるなら使ってかまいません。専用条件は「そのほうが早いとき」に使います。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 「追加で2つ覚える」形になりやすいから
一般の3条件に加えて2つ——合計5つを覚えることになります。
ところが直角三角形の2つは一般の条件に帰着できます。「角が1つ分かっているから、そのぶん条件が減る」と理解すれば、暗記量は増えません。
2. 「なぜSSAではだめなのか」が扱われにくいから
2辺と1角では合同にならない——反例を見ないと納得できません。
ところが反例を作るには作図か三角比が必要です。中学2年の段階では扱いにくいため、「そういう決まり」として流れがちです。
3. 三平方の定理を習う前だから
「斜辺と他の1辺」で残りが決まるのは三平方の定理があるからです。
しかし三平方は中学3年。中2の段階では理由が説明できません。学年をまたぐため、根拠が後になってから分かる構成になっています。
【検算】3つの方法
1. 三平方で残りの辺を計算する
1通りに決まるかを確かめます。
【検算】斜辺5・他の辺3なら残りは4に決まる ○
2. 斜辺が最長になっているか
【検算】3・4・5で最長は5。直角の対辺 ○
3. 対応する頂点の順で書けているか
【検算】△ABM ≡ △ACM なら B と C が対応 ○ だから BM=CM
よくあるミス
ミス1:斜辺を確認せずに使う
「斜辺」と明記が必要です。
ミス2:直角でないのに専用条件を使う
直角三角形限定です。
ミス3:2辺と1角で合同と決めつける
間の角でなければ成り立ちません。
ミス4:鋭角が2つ必要だと思う
1つで十分です(直角と合わせて2角)。
ミス5:条件名を書かずに結論だけ書く
どの条件を使ったか明記します。
ミス6:対応順を無視する
≡ の左右を対応順にそろえます。
練習問題
- 直角三角形の合同条件を2つ答えなさい。
- 斜辺5・他の1辺3のとき、残りの辺を求めなさい。
- 斜辺13・他の1辺5のとき、残りの辺を求めなさい。
- 直角が90度、鋭角が30度のとき、残りの角を求めなさい。
- AB=5、∠A=30度、BC=3の三角形が2つある理由を答えなさい。
- A(0,4)、B(-3,0)、C(3,0)でAB、ACの長さを求めなさい。
- 6の三角形でBM=CMとなる理由を、使う条件名とともに答えなさい。
解答
- 斜辺と1つの鋭角/斜辺と他の1辺
- 4
- 12
- 60度
- Cの位置が2か所とれるから(直角でないため)
- どちらも5
- 斜辺と他の1辺がそれぞれ等しいので合同だから
まとめ
- 直角三角形の条件は①斜辺と1鋭角 ②斜辺と他の1辺
- 理由は直角が1つ決まっているから条件が1つ減る
- ①は1辺と両端の角、②は3辺に帰着する
- 2辺と1角(間の角でない)では合同にならない
- 斜辺=直角の対辺=最長辺
- 検算は三平方で残りの辺/最長辺の確認/対応順
合同条件は覚える数を増やさないことが大切です。直角三角形の2条件も、「角が1つタダでもらえる」と考えれば一般条件の一部。丸暗記を減らすほど、証明で迷わなくなります。
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