横軸が時間、縦軸が道のり。ダイヤグラムと呼ばれるこのグラフは、高校入試の定番でありながら最も読み方が伝わっていない図です。
「グラフは読めるけど、何を表しているか分からない」——原因は1つです。傾きが速さだということが結びついていない。ここを押さえれば、ダイヤグラムは一次関数の問題そのものになります。
結論:傾き=速さ
ダイヤグラムでは、軸の意味がこう決まっています。
- 横軸 … 時間(分や時間)
- 縦軸 … 道のり(mやkm)
すると傾きは
傾き =( の増加量)÷( の増加量)= 道のり ÷ 時間 = 速さ
傾きがそのまま速さになります。これがダイヤグラムの読み方のすべてです。
この対応が分かると、グラフの形から状況が読めます。
| グラフの形 | 意味 |
|---|---|
| 右上がりの直線 | 一定の速さで進んでいる |
| 水平(傾き0) | 止まっている(時間は進むが道のりは増えない) |
| 急な直線 | 速い |
| ゆるやかな直線 | 遅い |
| 右下がり | 戻っている(出発点に近づく) |
| 折れ曲がる点 | 速さが変わった瞬間 |
水平な部分=休憩、折れ曲がり=速さの変化。この2つを読めれば、ほとんどの問題文が理解できます。
基本の読み取り
AさんはP地点を出発し、12km離れたQ地点へ向かった。グラフは出発から 分後の、P地点からの道のり kmを表している。Aさんは出発から40分後に道のり8kmの地点に着き、そこで20分休憩し、その後80分後にQ地点に到着した。
この文章をグラフの言葉に直します。
| 区間 | 状況 | ||
|---|---|---|---|
| 1 | 進む | ||
| 2 | 休憩 | ||
| 3 | 進む |
それぞれの速さ
区間1:8kmを40分。
分速 km、つまり分速200m。時速に直すと km/時。
区間2:傾き0なので速さ0(止まっている)。
区間3:4kmを20分。
区間1と同じ速さです。
【検算】全体を確かめます。進んだ距離は km ○。かかった時間は 分 ○。問題文と一致しました。
区間ごとの式
区間1():原点を通り傾き 。
区間2(): で一定。
区間3():点 を通り傾き 。
【検算】 を入れると 。Q地点の12kmと一致 ○。 なら 。区間2の終わりと一致 ○。
2人が出会う・追いつく
ダイヤグラムの真価はここです。2人ぶんのグラフを描くと、交点が「出会う瞬間」を表します。
BさんはAさんが出発してから30分後に、同じP地点を出発し、分速400mでQ地点へ向かった。BさんがAさんに追いつくのは、Aさんが出発してから何分後か。
Bさんの式を作ります。分速400m=分速0.4km。Aさんの出発から 分後、Bさんは 分進んでいるので
追いつく=同じ地点にいる=グラフの交点です。Aさんは休憩中()だとして と連立します。
は の範囲内なので、この解は正しい。50分後です。
【検算】Bさんは 分進んで km。Aさんは8km地点で休憩中。同じ地点にいます ○。
範囲の確認が必須
ここが最大の落とし穴です。区間ごとに式が違うので、求めた解がその区間に入っているかを必ず確認します。
もし が の外に出ていたら、別の区間の式で解き直す必要があります。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 「傾き=速さ」の対応が、単元をまたぐから
傾きの意味は一次関数の単元で、速さの計算は中1の方程式の文章題で扱われます。ダイヤグラムはこの2つを結びつける内容ですが、結びつける作業そのものを主題にする場面は構成上生まれにくいのです。
「傾きが速さである」という一言があるかないかで、この単元の難度はまったく変わります。
2. グラフを読む練習と、式を立てる練習が分かれているから
ダイヤグラムの問題では、グラフから情報を読み取る作業と式を立てて解く作業の両方が必要です。
ところが練習問題は、どちらか一方に寄りがちです。読めるが式にできない、あるいは式は立てられるがグラフの意味が分からない——という状態が生まれやすい構成になっています。
3. 「水平=止まっている」が直感に反するから
グラフが水平だと「何も起きていない」ように見えます。しかし実際には時間は進んでいる——止まっているという出来事が起きています。
これは縦軸が道のりであって速さではないことに由来します。速さのグラフ(縦軸が速さ)なら、水平は「一定の速さで進んでいる」を意味します。軸の意味が違えば、同じ形が違うことを表す——この区別は明示されないと気づきにくい。
対策はグラフを見る前に必ず軸のラベルを読むこと。「縦軸は何か」を口に出して確認してください。
【検算】3つの確認法
1. 折れ点の座標を両方の式で確認する
区間の境目では、左右の式が同じ値になります。動点問題と同じ原理です。
| 折れ点 | 左の式 | 右の式 |
|---|---|---|
| ○ | ||
| ○ | ||
| — | ○ |
2. 速さを常識で確かめる
問題文で歩く速さとしてよく使われるのは分速数十m〜100m台、自転車なら分速数百mです。
計算結果が分速10kmのような値になったら、単位換算を間違えています。桁を1つ見るだけで気づけます。
3. 交点が正しい区間にあるか
連立して出た が、使った式の変域の中にあるか。外れていたら別の区間で解き直します。
この確認を飛ばすのが最も多いミスです。
よくあるミス
ミス1:縦軸と横軸を逆に読む
横が時間、縦が道のりです。逆にすると傾きが「時間÷道のり」になり、速さの逆数になってしまいます。
必ず軸のラベルを確認してから読み始めてください。
ミス2:単位をそろえない
縦軸がkm、横軸が分なら、傾きの単位はkm/分です。分速400mと比べるには、どちらかにそろえます。
0.4km/分 と 400m/分 は同じ。混ぜたまま計算しないこと。
ミス3:出発時刻のずれを式に入れ忘れる
30分後に出発した人の式は。 ではありません。
「その人が動き始めてからの時間」を式に書くのがポイントです。
ミス4:交点の範囲を確認しない
区間ごとに式が違うので、解が変域内にあるか必ず確認します。範囲外なら、その解は無効です。
ミス5:水平部分を「グラフがない」と思う
水平部分も立派なグラフです。止まっているという状態を表しています。
練習問題
- ダイヤグラムで、(分)のあいだに が0kmから5kmまで増えた。この区間の速さを分速何kmで答えなさい。
- 1の速さは分速何mか。また時速何kmか。
- ある区間でグラフが水平になっている。このとき何が起きているか。
- 点 を通り、傾き の直線の式を求めなさい。
- Aさんは 、Bさんは で表される。2人が出会うのは何分後か。
- 5で、出会う地点はスタートから何kmか。
解答
- 分速 km
- km=250mなので分速250m。時速は 時速15km
- 止まっている(時間は経過するが道のりが増えない)
- より 。検算: で ○
- 。両辺を4倍して 、。20分後
- 5km。検算:Bさんは km ○
まとめ
- 横軸=時間、縦軸=道のり。だから傾き=速さ
- 水平=止まっている/折れ点=速さが変わった瞬間/急なほど速い
- 2人ぶんのグラフを描けば、交点が出会う瞬間
- 出発が遅れた人は の形。ずれを式に入れる
- 検算は折れ点で左右の式が一致するか/解が変域内にあるか/速さが常識的か
- 読む前に必ず軸のラベルを確認する
ダイヤグラムは、グラフから現実の状況を読み取るという訓練そのものです。この力は高校の速度・加速度のグラフ(縦軸が速さになると、傾きは加速度、面積が道のりになります)、さらには数IIIの微分積分へつながっていきます。「軸が何かで、傾きの意味が決まる」——中2のここで身につけておくと、以降のグラフがすべて読めるようになります。
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