合同式は「余りが等しい」を書き表す記号です。ただの言い換えに見える。それで何が便利なのか——ここが分からないと使う気になりません。
答えは1つです。余りだけを持ち歩ける。巨大な数をそのまま扱わず、小さな余りだけで計算を進められます。
結論:余りだけで足し算・かけ算ができる
⇔ が の倍数 ⇔ で割った余りが等しい
この記号のよいところは、等式と同じように計算できることです。
、 のとき(すべて )
足す・引く・かける・累乗する——どれも余りのままできます。
ただし割り算はできない
ここが最大の注意点です。
両辺を2で割ると になってしまいますが、これは成り立ちません(3を6で割った余りは3)。
割ってよいのは、割る数が と互いに素なときだけです。等号と同じ記号に見えるので、油断すると必ずここで間違えます。
使いどころ1:大きい数の余り
を5で割った余りを求めよ。
を計算する必要はありません。まず7を小さくします。
累乗しても成り立つので
次に1になる累乗を探します。
4乗で1に戻りました。 なので
余りは1です。
【検算】7の累乗の余りを直接調べます。
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 7 | 49 | 343 | 2401 | 16807 | |
| 5で割った余り | 2 | 4 | 3 | 1 | 2 |
周期4で繰り返しています。 は4の倍数なので、 と同じ余り1 ○
使いどころ2:一の位を求める
の一の位を求めよ。
一の位=10で割った余りです。
周期4。 なので
一の位は1です。
【検算】 の一の位は1、 の一の位も1 ○ 4の倍数乗で1になっています。
使いどころ3:倍数判定の理由が分かる
「各位の数の和が9の倍数なら、その数は9の倍数」——この理由も合同式で説明できます。
だから、累乗しても
したがって、たとえば4桁の数は
もとの数と各位の和が、同じ余りになる。これが判定法の正体です。
【検算】1234567を9で割った余りを求めます。各位の和は
28の各位の和は 、さらに 。余りは1のはずです。
実際に割ると 。一致 ○
11の判定は交互に足し引き
なので 。だから1桁ごとに符号が入れ替わります。
使いどころ4:解がないことを示せる
を満たす整数 は存在しないことを示せ。
4で割った余りを見ます。まず整数の2乗が4で割ってどんな余りになるか調べます。
| 0 | 1 | 2 | 3 | |
|---|---|---|---|---|
| 0 | 1 |
2乗は必ず0か1です。したがって
3にはなりません。一方
だから整数解は存在しません。
【検算】、 ○
「存在しない」を示すのは本来とても難しいのに、余りを見るだけで一発で片づきました。これが合同式の最大の威力です。
使いどころ5:連立の条件
3で割ると2余り、5で割ると3余る自然数のうち、最小のものを求めよ。
3で割って2余る数は 。このうち5で割って3余るものを探すと8。
【検算】 ○、 ○
3と5は互いに素なので、条件を満たす数は15おきに並びます。
【検算】23: ○、 ○
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 記号を使わなくても解けてしまうから
「 と表せる」という書き方でも、多くの問題は解けます。合同式はあくまで表記を簡単にする道具です。
そのため発展的な内容として扱われることが多く、標準の流れでは余りによる分類()で進む構成になりやすい。記号の便利さを実感する場面が確保されにくい位置にあります。
2. 「割り算ができない」という制限が見落とされやすいから
合同式は見た目が等式そのものです。足す・引く・かけるが自由にできるので、割り算もできると錯覚します。
ところが割り算だけは条件つき。この制限は説明されても短い注意書きにとどまりやすく、演習の中で失敗して初めて気づくことが多い部分です。
3. 整数の性質が数Aの最後に置かれているから
約数と倍数、互除法、不定方程式と続いたさらに後に来ます。
学年末に近づくほど時間の余裕がなくなるという構成上、入試での有用性に対して扱いが小さくなりやすい。実際には「余りを見て矛盾を出す」問題は繰り返し出題されます。
【検算】3つの方法
1. 小さい数で実際に割ってみる
周期を見つけたら1周分を書き出して確かめます。
【検算】: で1周 ○
2. 余りが範囲に入っているか
負の数や 以上が出たら直します。。
3. 別の法(mod)でも確かめる
解の存在を否定するときは複数の法で試すと確実です。
【検算】: で矛盾。実際に を0から45まで動かして が平方数になるものを探しても1つもありません ○
よくあるミス
ミス1:両辺を割ってしまう
法と互いに素なときだけ割れます。
ミス2:法を書き忘れる
が抜けると意味が決まりません。必ず書きます。
ミス3:周期を数え間違える
1に戻る指数を探します。 なら周期4。
ミス4:指数を法で割ってしまう
指数は周期で割ります、法で割るのではありません。 は を見ます。
ミス5:負の余りをそのままにする
は便利ですが、最終的な答えは0以上 未満に直します。
ミス6:「余りが同じ」と「等しい」を混同する
は ではありません。
練習問題
- を5で割った余りを求めなさい。
- の一の位を求めなさい。
- を7で割った余りを求めなさい。
- 1234567を9で割った余りを求めなさい。
- に整数解がないことを示しなさい。
- 3で割ると2余り、5で割ると3余る自然数のうち最小のものを求めなさい。
- だが であることを確かめなさい。
解答
- 、、 より1。検算: の余りが1 ○
- 、 より1
- 、 より1。検算: ○
- 各位の和 、さらに 、 より1。検算: ○
- または なので 。一方 。よって解なし
- のうち5で割って3余るのは8。検算:、 ○
- 、 なので左は成立。しかし3を6で割った余りは3で0ではない。2と6が互いに素でないため割れない
まとめ
- 合同式は「余りが等しい」を等式のように書く記号
- 足す・引く・かける・累乗するは自由にできる
- 割り算だけは、法と互いに素なときのみ
- 大きい累乗は1に戻る周期を探す
- 倍数判定法は 、 から出る
- 解が存在しないことを示すのに最も強い
- 検算は小さい数で実際に割る/余りの範囲/別の法でも試す
合同式の本質は「必要な情報だけを残して、残りを捨てる」という考え方です。 の正確な値は不要で、5で割った余りだけが必要なら、最初から余りだけ持ち歩けばよい。この割り切りができるようになると、整数問題は一気に軽くなります。
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