合成関数の微分は「外側 × 内側」と習います。ところが実際にやると外側に何を代入するのかで止まる。
答えは1つです。外側を微分するとき、内側はそのまま残す。
結論:4ステップ
- 内側(かたまり)を とおく
- 外側を で微分する( はそのまま)
- 内側を で微分する
- かける
ステップ3を忘れるのが最頻出のミスです。
なぜ掛け算なのか
変化率の連鎖として考えます。
が少し動く → が動く → が動く
- が 動くと、 は約 動く
- が 動くと、 は約 動く
組み合わせると、 は約 動く。 で割れば変化率は積になります。
「分数のように約分できる」形で覚えられます(実際は約分ではありませんが、形は同じです)。
やってみる1:
ステップ1・2
内側は 、外側は 。外側を微分すると 。
を戻すと ——ここで内側はそのままです。
ステップ3・4
内側の微分は 。かけて
【検算1】 で数値微分と比べます。
数値微分()は
一致 ○
【検算2】もし内側の微分を忘れて とすると 。数値微分の半分で明らかに違います ○
やってみる2:
外側は で微分すると 。内側 の微分は3。
【検算】 では 。数値微分は
一致 ○
【検算2】 の3を忘れると1になり、3分の1になります ○
やってみる3:
外側は で微分しても 。内側 の微分は 。
【検算】 では 。数値微分は
一致 ○
【検算2】 では 。実際 は で最小なので接線が水平 ○
やってみる4:3重の合成
を微分せよ。
外側から順に剥がします。
| 層 | 形 | 微分 |
|---|---|---|
| いちばん外 | ||
| まん中 | ||
| いちばん内 |
すべてかけると
2倍角の公式 を使うと
【検算1】 で計算します。 なので
一方 。一致 ○
【検算2】層が3つなら掛ける因子も3つ。数え忘れがないか確認できます ○
「外側はそのまま」を具体的に
これが最大のつまずきなので、もう一度。
| 関数 | 外側の微分 | 正しい | 誤り |
|---|---|---|---|
内側のかたまりを、そのまま入れたまま外側だけ微分する。形は変えません。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 「外側を微分」の意味が言語化されにくいから
という記号は正確ですが、操作としては読み取りにくい。
「内側をかたまりのまま置いて、外側だけ微分する」という日本語の手順があると、迷いが減ります。ところがこれは記号の説明ではないので、教科書に書きにくい部分です。
2. 掛け算になる理由が省かれやすいから
は変化率の連鎖です。
ところが厳密な証明には極限の議論が必要で、高校では結果を認めて使う形になりやすい。「変化が2段階で伝わる」という直感だけでも持っておくと、忘れにくくなります。
3. 「内側の微分を忘れる」ミスの検出法が示されにくいから
この誤りは形がそれらしいので、自分では気づきにくい。
数値微分と比べるという検算があれば一発で分かりますが、数値で確かめる習慣は答案の作法とは別なので、扱われにくい部分です。
【検算】3つの方法
1. 数値微分と比べる
( など)
【検算】 の :数値でも公式でも810 ○
2. 簡単な場合に展開して確かめる
なら展開できます。 の微分は 。
公式では 。一致 ○
3. 内側の微分を掛けたか確認する
層の数と、掛けた因子の数が合っているかを数えます。
【検算】 は3層 → 因子3つ(、、)○
よくあるミス
ミス1:内側の微分を掛け忘れる
最頻出です。 なら が必要。
ミス2:外側の微分で内側を にしてしまう
内側はそのまま。 であって ではありません。
ミス3:多重の合成で層を数え落とす
層の数だけ因子があります。
ミス4:積の微分と混同する
合成は「入れ子」、積は「並び」。 は積の微分です。
ミス5:内側が そのものでも掛け忘れる
なので影響はありませんが、手順としては掛けています。
ミス6: を戻し忘れる
最後は の式で答えます。
練習問題
- を微分しなさい。
- を微分しなさい。
- を微分しなさい。
- を微分しなさい。
- 1を で数値微分と比べなさい。
- を展開して微分し、公式と一致することを確かめなさい。
- 内側の微分を忘れると、1の答えはどうなるか答えなさい。
解答
- 。検算: で3、数値微分も約3 ○
- 。検算: で0(最小点)○
- 公式で810、数値微分でも約810.0。一致 ○
- 展開 の微分は 。公式でも ○
- となり、正しい答えの半分( が抜ける)
まとめ
- 手順は①内側を ②外側を微分(内側はそのまま) ③内側を微分 ④かける
- 掛け算になるのは変化率が2段階で伝わるから
- 外側を微分するとき、内側の形は変えない
- 多重の合成は層の数だけ因子
- 内側の微分を忘れるのが最頻出のミス
- 検算は数値微分/展開して確認/因子の数
連鎖律は「変化が伝わる仕組み」を式にしたものです。歯車がかみ合って回転が伝わるように、 の変化が を通って に届く。その伝わり方の倍率が、掛け算になる。この見方を持てば、置換積分(積分での連鎖律)も同じ話だと分かります。
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