箱ひげ図が読めない原因は、ほぼ1つです。箱の長さをデータの「個数」だと思っている。
正しくはこうです。箱ひげ図の4つの区間には、それぞれ全体の約25%が入っています。個数はどこも同じ。長さが表しているのは散らばりの広さだけです。
結論:4区間はすべて25%
箱ひげ図は5つの数だけで描かれます。
| 記号 | 名前 | 位置 |
|---|---|---|
| 最小値 | — | 左のひげの先 |
| 第1四分位数 | 箱の左端 | |
| 中央値 | 箱の中の線 | |
| 第3四分位数 | 箱の右端 | |
| 最大値 | — | 右のひげの先 |
この5つで区切られる4区間に、データが4等分されて入ります。
左ひげ 25%|箱の左半分 25%|箱の右半分 25%|右ひげ 25%
だから長い区間ほど、同じ人数がより広く散らばっているということです。
四分位数の求め方
- データを小さい順に並べる
- 全体の中央値を求める(これが )
- 中央値で下半分と上半分に分ける
- 下半分の中央値が 、上半分の中央値が
データの個数が奇数のときは、真ん中の1個を下半分にも上半分にも入れません。
具体例:12人の記録
Aグループ(小さい順):2, 3, 4, 6, 7, 8, 10, 12, 15, 21, 26, 36
中央値
12個なので、6番目と7番目の平均です。
と
下半分は 2, 3, 4, 6, 7, 8(6個)。その中央値は3番目と4番目の平均。
上半分は 10, 12, 15, 21, 26, 36(6個)。
5数要約
| 最小値 | 最大値 | |||
|---|---|---|---|---|
| 2 | 5 | 9 | 18 | 36 |
四分位範囲(箱の長さ)は 、範囲は です。
【検算】4区間に本当に3人ずつ入るか、数えます。
| 区間 | 入るデータ | 人数 | 幅 |
|---|---|---|---|
| 最小 〜 | 2, 3, 4 | 3人 | 3 |
| 〜 | 6, 7, 8 | 3人 | 4 |
| 〜 | 10, 12, 15 | 3人 | 9 |
| 〜 最大 | 21, 26, 36 | 3人 | 18 |
人数はすべて3人(25%)。幅は3倍以上ちがう。これが箱ひげ図の読み方の核心です。
箱の中の線が真ん中に来ないとき
Aグループの箱は から 。その中心は
ところが中央値は9。箱の中心より左にあります。
これは箱の右半分のほうが広い=上位側に大きく散らばっているという意味です。
- 箱の左半分の幅:
- 箱の右半分の幅:
ひげも同じで、左が 、右が 。右に長く裾を引いた分布です。
【検算】右に裾が長いとき、平均値は中央値より大きくなります。実際に平均を計算すると
平均12.5 > 中央値9 ○。図の見た目と一致しました。
ただし平均値は箱ひげ図には描かれていません。読み取れるのは5数だけです。
中央値が同じでも中身は違う
Bグループ:7, 7, 8, 8, 8, 9, 9, 10, 10, 10, 11, 20
- 中央値:(Aと同じ)
- 、
- 最小7、最大20
| 最小 | 中央値 | 最大 | 四分位範囲 | |||
|---|---|---|---|---|---|---|
| A | 2 | 5 | 9 | 18 | 36 | 13 |
| B | 7 | 8 | 9 | 10 | 20 | 2 |
中央値は同じ9。しかし箱の長さは13と2で、Bは真ん中に強く固まっています。
【検算】Bも4区間を数えます。7,7,8/8,8,9/9,10,10/10,11,20。すべて3人 ○
外れ値の判定
データが次の範囲の外にあるとき、外れ値として扱う基準があります。
より小さい、または より大きい
Bグループで確かめる
四分位範囲は なので 。
最大値20は13を超えているので、この基準では外れ値です。
Aグループで確かめる
四分位範囲13なので 。
最大値36は37.5以下なので外れ値ではありません。
【検算】Aの最大36とBの最大20を比べると、値が小さいBのほうが外れ値になる。おかしく見えますが正しい。外れ値かどうかは、その集団の散らばりの大きさとの比較で決まるからです。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 「かき方」に時間が使われ、「読み方」が残らないから
箱ひげ図は中学2年で導入され、数Iのデータの分析で再び登場します。
最初に習うときは四分位数を求めて図をかく作業に時間がかかります。手順が5工程あるため、「4区間がそれぞれ25%」という意味の説明にたどり着く前に時間が尽きやすい構成です。
2. ヒストグラムとの対応が別の場面で扱われるから
箱ひげ図は個々のデータが見えない表現です。「山が2つある分布」と「1つの分布」が同じ箱ひげ図になることもあります。
これを理解するにはヒストグラムと並べて見る必要がありますが、両者は別の項目として順番に扱われるため、対応づけが読者任せになりやすい。
3. 平均値が図に描かれていないから
箱ひげ図に平均値は含まれません。ところが日常では「平均」で語る場面が多いため、読み取れないものを読み取ろうとして混乱します。
「箱ひげ図から平均値は分からない」——この一文が明示されるかどうかで、理解が大きく変わります。
【検算】3つの方法
1. 5数が小さい順に並んでいるか
最小値 最大値
この順序は必ず成り立ちます。崩れていたら四分位数の計算ミスです。
【検算】A: ○ B: ○
2. 各区間の個数が全体の約4分の1か
データ数が4の倍数ならちょうど4等分されます。
【検算】A、Bとも12個で3人ずつ4区間、合計 ○
3. 四分位範囲が範囲を超えていないか
四分位範囲 範囲
箱はひげを含めた全体の内側にあるので、必ずこうなります。
【検算】A: ○ B: ○
よくあるミス
ミス1:箱が長い=データが多いと読む
個数はどの区間も同じです。長さは散らばりの広さを表します。
ミス2:中央値が箱の真ん中にあると思い込む
ずれます。ずれ方が分布の偏りを教えてくれます。
ミス3:箱ひげ図から平均値を読もうとする
描かれていません。読めるのは5数だけです。
ミス4:四分位数を「全体の個数÷4番目」で求める
下半分・上半分に分けてから、それぞれの中央値です。順位を4で割るのではありません。
ミス5:奇数個のとき、中央値を下半分にも入れてしまう
真ん中の1個は、どちらにも入れません。
ミス6:外れ値を「大きい値」だと思う
集団の散らばりとの比較です。Aの36は外れ値でなく、Bの20は外れ値でした。
練習問題
データ 1, 2, 4, 5, 7, 9, 10, 12(8個)について答えなさい。
- 中央値を求めなさい。
- と を求めなさい。
- 四分位範囲と範囲を求めなさい。
- 4区間に何個ずつ入るか確かめなさい。
- 中央値は箱の中心より左右どちらにあるか答えなさい。
- 外れ値があるか、四分位範囲の基準で判定しなさい。
- 平均値を求め、中央値と比べなさい。
解答
- 8個なので4番目と5番目の平均。6
- 下半分 1, 2, 4, 5 の中央値 3。上半分 7, 9, 10, 12 の中央値 9.5
- 四分位範囲 6.5、範囲 11。検算: ○
- 1,2/4,5/7,9/10,12 の2個ずつ。合計 ○
- 箱の中心は 。中央値6はそれより左(わずかに右に裾が長い)
- 。、。最小1も最大12もこの間なので外れ値なし
- 6.25。平均6.25 > 中央値6で、5の結果と整合 ○
まとめ
- 箱ひげ図は5数要約だけで描かれる
- 4区間にはそれぞれ約25%。長さは個数ではなく散らばりの広さ
- は下半分・上半分の中央値(奇数個なら真ん中は除く)
- 中央値が箱の中心からずれる向きが、分布の偏りを教える
- 平均値は読めない。外れ値も基本の図には描かれない
- 外れ値は四分位範囲 と 四分位範囲 の外側
- 検算は5数の順序/各区間の個数/四分位範囲 範囲
箱ひげ図は複数の集団を横に並べて比べるためにある道具です。1つだけ見ても情報は少ない。逆に、中央値・箱の長さ・ひげの向きの3点で比べると、平均だけを見るよりはるかに多くのことが分かります。「どの区間も25%」——ここさえ押さえれば、読み取り問題は落とせません。
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