「は・じ・き」の図を使っている人は多いと思います。丸を3つに区切って、隠した場所が答え——便利な道具です。
ただし、この図には限界があります。
図は「どう計算するか」は教えてくれるが、「何を代入するか」は教えてくれない
つまずくのは、たいてい後者です。
覚える式は1本でいい
(道のり)=(速さ)×(時間)
なぜかけ算なのか。速さとは「1時間あたりに進む道のり」だからです。
1時間で40km進むなら、3時間では40kmが3つ分。
120kmです。
残りの2つは、この式をわり算で戻しただけです。
| 求めるもの | 式 |
|---|---|
| 道のり | |
| 速さ | |
| 時間 |
3つとも同じ3つの数です。公式を3本覚える必要はありません。
【検算】 ○ どの式からでも他の2つが作れます。
「はじき」で解けない問題1:単位がずれている
分速80mで15分歩きました。何km進みましたか。
1200mなので
1.2kmです。
ここで「はじき」は何も教えてくれません。mで出るのかkmで出るのかは、代入した数の単位で決まります。
単位をそろえて確かめる
分速80mを時速に直すと
時速4800m、つまり時速4.8km。15分は 時間なので
同じ1.2km ○
単位をそろえてから代入する——図には書かれていないルール
単位換算の基本
秒速20mを直してみます。
秒速20m = 分速1200m = 時速72km です。
【検算】時速72kmで1秒間に進む距離は m ○
「はじき」で解けない問題2:平均の速さ
片道120kmの道を、行きは時速40km、帰りは時速60kmで往復しました。往復の平均の速さは時速何kmですか。
時速50kmではありません。
時間を出してから割る
合計5時間で、道のりは km。
時速48kmです。
【検算1】 ○
【検算2】なぜ50kmより遅いのか——遅い行きに3時間、速い帰りは2時間だけ。遅いほうの時間が長いので、平均は下に引っ張られます ○
【検算3】40と60の間にあるか。 ○
「はじき」は1つの区間の関係を表す図です。区間が2つ以上になると使えません。
平均の速さ =(道のりの合計)÷(時間の合計)
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 図があると意味を考えずに済んでしまうから
「はじき」は正しく使えば正しい答えが出ます。だから図を教えれば授業は進みます。
ところが単位がずれている問題や区間が2つある問題では、図の外側の判断が必要です。図で解ける問題ばかり練習すると、その判断を鍛える機会がありません。
2. 「単位量あたりの大きさ」と速さが別々に置かれるから
速さは単位量あたりの大きさの代表例です。人口密度や単価とまったく同じ構造をしています。
ところが単元としては別に並びます。同じ考え方だと確認する場面が作られにくいため、速さだけ特別な公式に見えてしまいます。
3. 平均の速さは配当の外にあるから
往復の平均が単純平均にならない理由は、時間の重みが違うからです。これは加重平均の考え方にあたります。
速さの導入時にここまで扱うのは難しく、入試や中学の問題で初めて出会うことになりがちです。
【検算】3つの方法
1. 単位を書いたまま計算する
km/時 × 時 = km——単位が消えて答えの単位が残ります。
【検算】分速80m × 15分 = 1200m ○ kmではありません
2. けたと大小の見当をつける
時速40kmで3時間なら100km台のはずです。
【検算】120kmは妥当 ○ 12kmや1200kmなら計算ミスです
3. 逆算して戻す
求めた答えで、もとの数が出るか確かめます。
【検算】 ○ 時間が一致します
よくあるミス
ミス1:単位をそろえずに代入する
時速と分を混ぜないこと。
ミス2:分を小数の時間に直し間違える
15分は0.15時間ではなく0.25時間です。
ミス3:平均の速さを単純平均で出す
合計 ÷ 合計です。
ミス4:割り算の向きを逆にする
道のり ÷ 時間 = 速さです。
ミス5:答えの単位を書き忘れる
時速か分速かを明示します。
ミス6:図に頼って式の意味を考えない
1時間あたりいくつ——ここに戻れば迷いません。
練習問題
- 時速40kmで3時間走ったときの道のりを求めなさい。
- 120kmを3時間で走ったときの速さを求めなさい。
- 120kmを時速40kmで走るときの時間を求めなさい。
- 分速80mで15分歩いたときの道のりを、kmで求めなさい。
- 秒速20mを時速に直しなさい。
- 片道120kmを行き時速40km、帰り時速60kmで往復したときの平均の速さを求めなさい。
- 6が時速50kmにならない理由を答えなさい。
解答
- 120km
- 時速40km
- 3時間
- mなので1.2km
- mなので時速72km
- 時速48km
- 遅い行きに長い時間がかかるから。時間の重みが違う
まとめ
- 覚えるのは(道のり)=(速さ)×(時間)の1本
- 残り2つはわり算で戻すだけ
- 速さは1時間あたりに進む道のり
- 図は単位のずれを教えてくれない
- 平均の速さは合計 ÷ 合計(区間が2つ以上なら図は使えない)
- 検算は単位つきで計算/けたの見当/逆算
「はじき」を使うなとは言いません。計算の形を思い出す道具としては優秀です。ただしその図が答えてくれない問い——単位はそろっているか、区間はいくつか——を自分で確かめる必要があります。速さとは1時間あたりの道のりである、この一文に戻れるかどうかが分かれ目です。
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