を解くとき、「内項の積=外項の積」で 、。手順は覚えたけれど、なぜこれでいいのか分からない——中1で非常に多い状態です。
この規則は暗記事項ではありません。比を分数で書き直せば、その場で導けます。導けるようになると、比が3つ以上のときや連比でも迷わなくなります。
結論:比は分数、比例式は分数の方程式
比 は、 が の何倍かを表しています。つまり分数です。
だから は
というただの分数の方程式になります。ここで両辺に をかけて分母をはらうと
これが「内項の積=外項の積」の正体です。新しい規則ではなく、分母をはらっただけでした。
導出をていねいに追う
の4つの数を、書かれた順に並べます。
(外側) (内側) (内側) (外側)
- 外項 … いちばん外側の2つ、 と
- 内項 … 内側の2つ、 と
では分数に直します。
両辺に をかけます。これは前に学んだ「分母をはらう」操作そのものです。
左辺は が約分され、右辺は が約分されて
左辺が外項の積、右辺が内項の積。導出はこれで終わりです。
覚えるべきことは「比は分数」の1つだけ。あとはいつもの分母はらいです。
実際に使う
を解きます。分数にすると
両辺に20をかけて( でも構いませんが、20で足ります)
外項・内項で書けば 、つまり 、。同じ答えです。
【検算】比の値をそろえて確かめます。
一致しました。これが最も確実な検算です。
なぜ「比の値」で検算できるのか
比が等しいとは、比の値(÷した結果)が等しいということです。
| 比 | 比の値 |
|---|---|
すべて0.6。比の値が同じなら、それらの比は等しい。だから比の値を計算して比べれば、比例式が正しいか一発で分かります。
また、比の両方に同じ数をかけても割っても、比の値は変わりません。これが「比を簡単にする」の根拠です。
後ろに文字があるとき
のように内項に文字がある場合も、やることは変わりません。
内項の積=外項の積より 、、。
【検算】、。一致。
ここで注意が1つ。 が分母に来ているので、 はあり得ません。比の後ろの項が0の比は考えません。
かたまりが入るとき
のように、項がかたまりになっている場合。
外項の積=内項の積で 。かっこを忘れないこと。
【検算】。比の値は 。右辺 の比の値も 。一致しました。
分数で書けば、かっこの必要性は自動的に見えます。 と書けば、分子全体が だと目で分かるからです。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 比は小学校の内容として既習扱いになるから
比と比の値、比を簡単にする方法は小学校で学びます。中1ではこれを土台として、比例式を方程式の応用として扱う構成になっています。
そのため「比とは何か」に戻る時間が確保されにくい。ところが「内項の積=外項の積」を導くには、比が分数だという小学校の理解が必要です。土台の側があいまいなまま応用に進むと、規則が丸暗記になります。
2. 規則名が印象的すぎて、導出が影に隠れるから
「内項の積=外項の積」という言い回しは覚えやすく、たすきがけの図と一緒に示されることが多いものです。
覚えやすい規則があると、それを覚えた時点で理解が完了したように見えます。実際には分母をはらっただけなのですが、名前がついていることで独立した技術のように扱われやすい。用語の作りから来る構造的な問題です。
3. 比が本格的に効いてくるのは、もっと後の学年だから
比の考え方が決定的になるのは、中3の相似(相似比・面積比・体積比)や高校の三角比です。中1の比例式は、その入り口にあたります。
入り口の段階では1問で答えが出る単純な問題が中心なので、規則を覚えるだけで足ります。導出を知らないことの不利益が、まだ表に出てこないという順序になっています。
相似で「どの辺とどの辺が対応するか」を考えるとき、比を分数として扱えるかどうかで差が出ます。中1のうちに だけ握っておけば十分です。
【検算】比の値をそろえる
比例式の検算は両辺の比の値を計算して比べる——これ一択です。
| 比例式 | 解 | 左辺の比の値 | 右辺の比の値 |
|---|---|---|---|
| ○ | |||
| ○ | |||
| ○ |
もう1つ、約分して同じ比になるかを見る方法もあります。 を4で割ると 。元の比と一致すれば正解です。
よくあるミス
ミス1:内項どうし・外項どうしをかける相手を取り違える
で としてしまうミス。正しくは です。
分数に書き直せば絶対に間違えません。 から分母をはらう——この経路を通れば、規則を思い出す必要すらありません。
ミス2:かたまりのかっこを忘れる
で としてしまうミス。 です。
これも分数で書けば防げます。 と書けば、分子がかたまりだと見えます。
ミス3:比の順序を入れ替える
と は別物です。比の値が と で異なります。
文章題では「AとBの比」と書かれたらAが前。順序は情報の一部です。
ミス4:比の後ろの項に0を考える
という比は考えません。比の値が となり、0で割ることになるからです。
文字が比の後ろにある問題では、答えが0にならないことを確認してください。
練習問題
- を解きなさい。
- を解きなさい。
- を解きなさい。
- を解きなさい。
- を最も簡単な整数の比に直しなさい。
- を解き、比の値で検算しなさい。
解答
- 、、。検算: と ○
- 、。検算: ○
- 、、。検算: と ○
- 、、。検算: の比の値は 、右辺も ○
- 3で割って。検算: ○
- 、。検算:、 ○
まとめ
- 比 は分数 。これだけ覚えれば足りる
- 比例式 は分数の方程式。分母をはらうと
- 「内項の積=外項の積」は新しい規則ではなく、分母をはらった結果
- 比の値が等しい=比が等しい。だから比の値で検算できる
- かたまりにはかっこ。分数で書けば自然に見える
- 比の順序は情報。 は考えない
比を分数として扱う感覚は、中3の相似で対応する辺の比を立てるとき、そして高校の三角比で を「対辺と斜辺の比」として読むときにそのまま働きます。「内項の積=外項の積」を覚えるのではなく、いつでも導ける状態にしておく——中1で作っておく価値のある差はここです。
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