方べきの定理は3パターンで教わります。交点が円の内側、外側、接線のとき。図が違うので、別々の定理に見える。
ところが中身は1つです。「1つの点Pから円まで測った2つの長さの積は、どの直線を引いても同じ値になる」。それだけです。
結論:積はいつも
円の中心をO、半径を 、点をPとすると、Pを通るどの直線でも
(2つの交点までの長さの積)
直線の向きによらず一定。これが方べきの定理の正体です。3パターンは、この1つの事実の見え方の違いにすぎません。
| Pの位置 | 式 | 値 |
|---|---|---|
| 円の内部 | ||
| 円の外部 | ||
| 接線 |
接線は「2つの交点が重なった場合」です。だから 。別の定理ではありません。
やってみる:円の内部
半径5の円で、中心Oから3の距離にある点Pを考えます。
中心を通る直線を引く
Pを通り中心Oを通る直線は直径になります。Pから両端までは
それに垂直な直線を引く
Pを通り、いま引いた直径に垂直な弦を考えます。Pはこの弦の中点になり、その半分の長さは三平方の定理から
両側とも4なので
同じ16になりました。
【検算】公式でも確かめます。
一致 ○ どの向きに引いても16です。
やってみる:円の外部と接線
同じ半径5の円で、中心Oから13の距離にある点Pを考えます。
接線の長さ
接点をTとするとOT PT(接線は接点で半径と垂直)。三平方の定理から
中心を通る直線を引く
Pから円までの2つの距離は
と一致 ○
【検算】公式でも。
一致 ○ 接線でも割線でも、値は同じ144です。
なぜ成り立つのか:相似で説明できる
3パターンとも相似な三角形から出ます。使う根拠だけが違います。
内部のとき
弦ABと弦CDが点Pで交わるとします。△PACと△PDBについて
- (対頂角)
- (同じ弧CBに対する円周角)
2組の角が等しいので相似。対応する辺の比から
外部のとき
同じく△PACと△PDBで
- は共通
- (円に内接する四角形の外角は、内対角に等しい)
やはり相似で、同じ式が出ます。
接線のとき
△PTAと△PBTで
- は共通
- (接弦定理)
3つとも「相似 → 比の等式 → たすきにかける」という同じ流れです。
逆も使える
積が等しければ、4点は同じ円周上にあります。
⇒ A、B、C、Dは同一円周上
これは共円条件の示し方の1つです。相似から角の等しさが出て、円周角の定理の逆が使えるからです。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 3つの図が別々に提示され、共通の意味がまとめられにくいから
教科書では内部・外部・接線を順に扱う構成になります。それぞれ図と証明がつくため、1つずつが独立した内容に見えます。
本当は「Pから円までの積は一定」という1つの事実ですが、この統一的な見方()は発展的な内容として扱われることが多く、標準の流れでは前面に出にくい位置にあります。
2. 証明で使う根拠が3つとも違い、そのうち1つが別項目だから
内部は対頂角と円周角、外部は内接四角形の外角、接線は接弦定理。
特に接弦定理は方べきの定理とは別の項目として扱われます。順序や既習状況によっては接線のパターンだけ根拠が理解しきれないまま進むことが起こります。
3. 中3の円の性質から間があいているから
円周角の定理は中3、方べきの定理は数Aです。間に学年をまたぐ空白があります。
方べきの証明は円周角の定理を前提にしていますが、そこを復習する場面は数Aの構成には含まれにくい。円周角があいまいなまま入ると、証明が追えず3つの式を丸暗記することになります。
【検算】3つの方法
1. と一致するか
中心からの距離と半径が分かっていれば、これが最も速い検算です。
| 設定 | 計算 | 積 |
|---|---|---|
| (内部) | 16 ○ | |
| (外部) | 144 ○ |
2. 中心を通る直線で確かめる
Pを通り中心Oを通る直線なら、2つの長さは と です。
【検算】外部: ○ 内部: ○
これは という因数分解そのものです。
3. 接線の長さで確かめる
【検算】 ○
また接線の長さは、Pから円までの最短距離より長いはずです。最短は 、接線は12。 ○
よくあるミス
ミス1:外部で「近い方どうし」「遠い方どうし」をかける
1本の直線につき、近い交点と遠い交点をかけます。2本を混ぜません。
ミス2:接線のとき を1回しか使わない
です。2つの交点が重なっていると考えます。
ミス3:内部と外部で式が違うと思い込む
同じ式です。値が か かが変わるだけ。
ミス4:接線の長さを とする
三平方の定理で求めます。 であって ではありません。
ミス5:Pが円周上のときを忘れる
なら値は0。Pが交点の1つになるからです。
練習問題
半径5の円で、中心Oからの距離が13の点Pをとる(1〜3)。
- Pから引いた接線の長さを求めなさい。
- Pを通る直線が円と2点C、Dで交わり のとき、 を求めなさい。
- Pを通り中心Oを通る直線での2つの長さを求め、積を確かめなさい。
- 半径5の円の内部で、中心からの距離が3の点Pを通る弦について、 のとき を求めなさい。
- 円の外部の点Pから引いた割線で 、 のとき、接線の長さを求めなさい。
- 半径3の円で中心からの距離が5の点Pについて、方べきの値と接線の長さを求めなさい。
- 円の内部の点Pで2本の弦が交わり 、、 のとき を求めなさい。
解答
- 12
- より 16。検算: ○
- 、、144 ○
- より 8。検算:中心を通る弦の2つの長さが と で一致 ○
- より 6。検算: ○
- 方べきの値 16、接線の長さ 4。検算:、、 ○
- なので 、6。検算: ○
まとめ
- 方べきの定理は「Pから円までの2つの長さの積は一定」という1つの事実
- その値は。内部・外部・接線で共通
- 接線は2つの交点が重なった場合だから
- 証明は3つとも相似 → 比の等式 → たすきにかける
- 使う根拠だけが違う(対頂角+円周角/内接四角形の外角/接弦定理)
- 逆も成り立つ:積が等しければ4点は同一円周上
- 検算は/中心を通る直線/接線の長さ
「点Pから円までの積」は、数IIの円の方程式で に点の座標を代入した値としてそのまま現れます。3つの図を別々に覚える必要はありません。中心からの距離と半径さえ分かれば、値は一発で出る——この見方に切り替えるだけで、方べきの問題はほぼ計算問題になります。
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