。分数が出てきた瞬間に「何倍すればいいんだっけ」と止まる。小数なら「10倍?100倍?」と迷う。中1でとても多いつまずきです。
迷う原因ははっきりしています。何をかければいいかを、その場で考えているから。実は決め方の規則があり、覚えることは1つだけです。
結論:分母の最小公倍数、小数は10の累乗
- 分数があれば … すべての分母の最小公倍数をかける
- 小数があれば … 小数点以下の桁数が最も多いものに合わせて、10、100、1000…をかける
- 両方あれば … 小数を先に分数に直してから、分母の最小公倍数をかける
なぜこれでいいのか。等式の両辺に同じ数をかけても、解は変わらないからです。かけて分母を消し、整数だけの式に作り替えているのです。
この操作を「分母をはらう」と呼びます。
なぜ最小公倍数なのか
を考えます。分母は3と4。
3の倍数をかければ最初の項の分母は消えます。4の倍数をかければ2つ目が消えます。両方消すには、3の倍数でも4の倍数でもある数——つまり公倍数が必要です。
公倍数は12、24、36…と無限にありますが、いちばん小さい12を選ぶのがいちばん楽。これが最小公倍数を使う理由です。
24をかけても正解にはたどり着きます。ただ数が大きくなって計算が面倒になるだけです。「間違い」ではなく「損」だと理解してください。
実際にやってみる
両辺に12をかけます。右辺の2にもかけるのを忘れないこと。
ここが最大の関門です。 は分子全体が なので、12をかけると となり、かっこが必要です。
【検算】元の式に戻します。
右辺の2と一致しました。
小数の場合
を解きます。
小数点以下は最大1桁なので10倍。
【検算】。
。一致しました。
桁数がそろっていないとき
では、小数点以下が最大2桁(0.25)なので100倍します。
10倍では足りません。 となり小数が残ります。いちばん桁数の多いものに合わせるのが規則です。
【検算】 ○
分数と小数が混ざったとき
のような形です。小数を分数に直してから統一します。
、 なので
分母は2、5、10。最小公倍数は10。両辺に10をかけて
【検算】 ○
混ざったまま処理しようとすると事故が起きます。必ずどちらかにそろえてください。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 「分母をはらう」根拠が等式の性質にあるのに、扱う場面が離れているから
両辺に同じ数をかけてよい理由は等式の性質です。これは方程式の単元のいちばん最初に扱われます。
ところが分数・小数を含む方程式が出てくるのは同じ単元の後半で、そのころには等式の性質の話は終わっています。根拠と応用が単元内で離れているため、「なぜかけてよいのか」ではなく「かけるものだ」として受け取られやすい構成です。
2. 最小公倍数は小学校の内容として既習扱いになるから
分母の最小公倍数を求める作業自体は小学校の内容です。中学ではこれを既習として、方程式の解法の一部分として通過します。
したがって「なぜ最小公倍数なのか」を改めて説明する時間が、カリキュラム上確保されにくい。実際には「公倍数なら何でもよい。最小が最も楽なだけ」という理解があるかどうかで、迷いの量が大きく変わります。
3. ミスの原因が2種類あるのに、答案では区別できないから
この型で間違えるとき、原因はほぼ次の2つです。
- かけ忘れ(右辺や、分数でない項にかけ忘れる)
- かっこの付け忘れ( に12をかけて としてしまう)
どちらも答案には「答えの数値が違う」という同じ形でしか現れません。この構造上、自分がどちらでつまずいているかを特定しないまま練習を重ねることになりやすいのです。
対策は、かけた直後の式を必ず1行書くこと。 を省略せずに書けば、かけ忘れもかっこ忘れもその場で見えます。
【検算】必ず元の式に戻す
分母をはらった後の式ではなく、元の分数・小数の式に代入します。はらう段階で間違えていた場合、はらった後の式に代入しても気づけないからです。
| 元の式 | 解 | 検算 |
|---|---|---|
| ○ | ||
| ○ | ||
| ○ | ||
| ○ |
もう1つ、項の数を数えるという簡単なチェックもあります。かける前と後で項の数は変わりません。減っていたら、かけ忘れた項があります。
よくあるミス
ミス1:分数でない項にかけ忘れる
の右辺の2。ここを忘れて としてしまうのが最多のミスです。
両辺のすべての項にかける。1つでも漏らせば別の方程式になります。
ミス2:分子のかっこを忘れる
に12をかけると 。 ではありません。
分数の横線はかっこの働きをしています。線を消すなら、代わりにかっこを書く。これを機械的な習慣にしてください。
特に分数の前がマイナスのときは危険です。 は 。符号が両方変わります。
ミス3:小数の桁数を見誤る
があるのに10倍してしまうミス。最も桁数の多い小数に合わせます。
不安ならすべて分数に直すのが安全です。 と書けば、あとは分母の最小公倍数を取るだけになります。
ミス4:はらった後の式で検算する
に を入れても、はらう作業が正しかったかは確かめられません。
必ず元の式に戻す。これが検算の鉄則です。
練習問題
- を解きなさい。
- を解きなさい。
- を解きなさい。
- を解きなさい。
- を解きなさい。
- を解きなさい。
解答
- 分母2と3の最小公倍数は6。、、。検算: ○
- 分母3と5の最小公倍数は15。、、、。検算:、 ○
- 10倍して 、、。検算: ○
- 100倍して 、、。検算: ○
- 分母4と6の最小公倍数は12。、、、。検算: ○
- なので 。5倍して 、。検算: ○
まとめ
- 分数は分母の最小公倍数をかける。公倍数なら何でも解けるが、最小が最も楽
- 小数は最も桁数の多いものに合わせて10、100…をかける
- 混在したら小数を分数に直してから統一する
- 両辺のすべての項にかける。右辺の定数を忘れやすい
- 分数の横線はかっこの働き。消すならかっこを書く
- 検算は必ず元の式に戻す。はらった後の式では意味がない
「両辺に同じ数をかけて形を整える」という操作は、中2の連立方程式(係数をそろえる)、中3の平方根を含む式、高校の分数方程式まで、まったく同じ発想で使い続けます。中1のここで、かける直前の1行を省略しない習慣をつけておくことが、そのまま先の学年でのミスの少なさにつながります。
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