問題文の「 は一次独立とする」——これをただの前提だと思って読み飛ばしていませんか。
この一文があるから係数比較ができるのです。ベクトルの問題が解ける理由そのものが、ここにあります。
結論:一次独立だから係数比較できる
が一次独立 ⇔ どちらも でなく、平行でない
このとき、次が成り立ちます。
これが「係数比較」です。ベクトルの問題で連立方程式が立てられるのは、この性質のおかげです。
定義の形
2つは同じことです。上の式で移項すれば となり、係数が0、つまり 、。
なぜ平行だとダメなのか
反例を見るのが一番速いです。
、 とします。 なので平行——一次独立ではありません。
このとき を表してみます。
表し方が2通り出てきました。係数が でも でも同じベクトルになる。
これでは係数比較ができません。「係数が等しい」と言えないからです。
【検算】他の表し方もあります。
○ 無数にあることが分かります。
一次独立なら一通りに決まる
、 は平行ではありません。 を表すと
解くと 。これ以外にありません。
【検算】上の式を2倍して下の式から引くと 、つまり 。一意に決まりました ○
判定は成分で
、 が一次独立 ⇔
【検算1】 と :
一次独立 ○
【検算2】 と :
一次独立でない(平行)○
この判定式は平行かどうかの判定式と同じです。「平行でない=一次独立」だから当然です。
使いどころ:交点の位置ベクトル
△OAB で、辺OAを に内分する点をC、辺OBの中点をDとする。線分ADと線分BCの交点をPとするとき、 を 、 で表せ。
2通りに表す
Pは線分AD上なので、 の形で
( だから)
Pは線分BC上でもあるので
( だから)
係数比較する
ここで一次独立を使います。 が一次独立なので
2つ目から 。1つ目に代入して
したがって 。
【検算1】もう一方の式にも代入します。 なので
一致 ○
【検算2】座標で確かめます。、、 とすると
公式から 。
直線ADの上にあるか:Aから 進むと
○
直線BCの上にあるか:Bから 進むと
○ 2直線の交点として一致しました。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 「一次独立とする」が問題文の前提として流れるから
問題には最初から「一次独立とする」と書いてあります。だから読者は与えられた条件として受け取る。
ところがこの条件は解法そのものを支えています。係数比較の根拠だと知らないまま解いていると、答案で「一次独立だから」と書くべき場面を落とします。
2. 一次従属の反例が示されにくいから
教科書の問題はすべて一次独立です。だからそうでない場合に何が起きるかを見る機会がない。
平行だと表し方が無数にある——この事実を1回計算すれば、条件の意味が実感できます。反例は理解の近道ですが、問題としては出しにくい形です。
3. 定義と実用の対応が結ばれにくいから
定義は。実用は「平行でない」。
この2つは同じことの言い換えですが、見た目がまったく違います。定義は抽象的で、判定は具体的。両者を結ぶ一言(平行なら一方を他方で表せてしまう)があると、すっきりします。
【検算】3つの方法
1. 成分で判定式を計算する
なら一次独立です。
【検算】: ○
2. 求めた係数を両方の式に代入する
2通りの表し方が一致するはずです。
【検算】 と でどちらも ○
3. 座標に直して交点を直接求める
具体的な座標を入れれば、直線の交点として確かめられます。
【検算】 で ○
よくあるミス
ミス1:一次独立に触れずに係数比較する
根拠を書きます。「 は一次独立だから」の一言。
ミス2:平行なベクトルで係数比較する
表し方が一通りでありません。成り立ちません。
ミス3:零ベクトルを含めてしまう
どちらも でないことが条件に含まれます。
ミス4:内分点の係数を逆にする
なら 。たすきがけです。
ミス5:媒介変数を2つの直線で同じ文字にする
別の文字( と )を使います。
ミス6:判定式を内積と混同する
内積が0は垂直。一次独立の判定は です。
練習問題
- と が一次独立か判定しなさい。
- と が一次独立か判定しなさい。
- 2のベクトルで を2通りに表しなさい。
- △OAB でOAを に内分する点C、OBの中点Dとし、ADとBCの交点Pについて を求めなさい。
- 4を で検算しなさい。
- 一次独立の定義を書きなさい。
- 一次独立でないと係数比較ができない理由を説明しなさい。
解答
- より一次独立
- より一次独立でない()
- と 。どちらも (他にも無数)
- 係数比較から 。
- 。AD上でもBC上でも一致 ○
- ならば (どちらも でなく平行でない)
- 表し方が一通りに決まらないから。平行なら同じベクトルを違う係数で表せてしまう
まとめ
- 一次独立 ⇔ どちらも でなく、平行でない
- 定義は
- 一次独立だから係数比較できる(表し方が一通り)
- 平行だと表し方が無数にあるので比較できない
- 判定は
- 交点の問題は2通りに表して係数比較
- 検算は判定式/両方の式に代入/座標で交点を計算
一次独立は「座標軸として使える」ということです。 が一次独立なら、平面上のどんな点も の形でただ一通りに表せる——それは を新しい座標軸にしたのと同じ。斜めの座標系を自分で作れる——これがベクトルの本当の力です。
この単元でつまずいたままなら
「なぜそうなるのか」が抜けたまま先へ進むと、後の単元で必ず戻ってくることになります。オンライン数学専門塾「数強塾」は、公式の暗記ではなく理由から説明する完全1対1の個別指導です。プロ講師のみ(学生アルバイトはいません)、中高一貫校の進度にも対応しています。
ご相談は無料です。入会の強制はありません。

