「点Pが辺上を動くとき、三角形の面積 を の式で表しなさい」。動点の問題は、一次関数の単元で最も差がつくところです。
難しく感じる理由は場合分け。しかし場合分けの境目は自分で決めるものではなく、図形が決めています。どこで分かれるかを見つける方法は、はっきりしています。
結論:場合分けの境目は「点Pが角を曲がるとき」
動点Pが図形の辺の上を進むとき、Pが頂点に到達した瞬間、面積の増え方が変わります。
だから境目は
点Pが頂点に来る時刻(=進んだ距離)
これだけです。頂点の数だけ場合が分かれると考えてください。
手順に落とすとこうなります。
- Pが通る道すじを確認する(どの辺をどの順に進むか)
- 各辺の長さを見て、頂点に到達する の値を全部書き出す
- 区間ごとに図を描いて、底辺と高さを で表す
- 区間ごとに式を作る
基本の型:長方形を1周する
縦4cm、横6cmの長方形ABCDがある。点Pは頂点Bを出発し、辺BC、CD上を毎秒1cmでDまで動く。Pが出発してから 秒後の三角形ABPの面積を cm²とするとき、 を の式で表しなさい。
ここでは 、、 とします。
ステップ1・2:境目を見つける
Pは毎秒1cm進むので、 秒後には cm進んでいます。
- Bを出発()
- Cに到達 … BC=6cmなので
- Dに到達 … さらにCD=4cm進むので
境目は 。だから場合分けは2つです。
(PはBC上) と (PはCD上)
ステップ3・4:区間ごとに式を作る
区間1:(PはBC上)
三角形ABPで、底辺をBP、高さをABと見ます。
- BP cm
- 高さ(AB) cm(変わらない)
区間2:(PはCD上)
今度は底辺をABと見ます。高さはPからABまでの距離です。
- 底辺(AB) cm
- 高さ … PはCD上にあり、ABからの距離はBC=6cm(変わらない)
一定です。Pが辺CD上を動いても、ABからの距離は変わらないので面積が変わりません。
まとめると
【検算】境目 で、2つの式が同じ値になるか確かめます。
- 区間1の式 …
- 区間2の式 …
一致しました。面積は途中で飛ばないので、境目で値が一致するのは必ず成り立つ条件です。
ここが最強の検算です。一致しなければ、どちらかの式が間違っています。
3つに分かれる型
1辺6cmの正方形ABCDで、点Pは頂点Aを出発し、辺AB、BC、CD上を毎秒2cmでDまで動く。三角形APDの面積を とする。
境目を先に出します。毎秒2cmなので、 秒後に cm進みます。
- Bに到達 … より
- Cに到達 … より
- Dに到達 … より
境目は と 。3つに分かれます。
区間1():PはAB上。底辺AP 、高さAD 。
区間2():PはBC上。底辺AD 、高さはPからADまでの距離で常に6(ABの長さ)。
区間3():PはCD上。底辺AD 、高さはPD。
Pが進んだ距離は 。AB+BC=12なので、CからPまでは 。PD 。
【検算】境目で確認します。
| 境目 | 左の式 | 右の式 | 一致 |
|---|---|---|---|
| ○ | |||
| ○ | |||
| — | ○(PがDに重なり面積0) |
3か所とも合いました。とくに終点で面積が0になるのは、PがDに到達して三角形がつぶれることを表しています。意味のある確認です。
「高さが変わらない」を見抜く
動点問題で計算を軽くする最大のコツがこれです。
底辺を固定して、高さが変わるかどうかを見る。
- Pが底辺と平行な辺を動いている → 高さは一定 → 面積も一定
- Pが底辺に垂直な辺を動いている → 高さが に比例して変化
先ほどの例で、区間2の面積が一定だったのはこの理由です。図を描けば一瞬で分かります。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 「場合分けをする」という発想が、ここで初めて要求されるから
中学数学で本格的に場合分けが必要になるのは、この動点問題がほぼ最初です。それまでは1つの式で答えが出る問題がほとんどでした。
「答えが1つの式ではない」という状況そのものが新しいため、手法の問題ではなく発想の切り替えが要求されます。ところが場合分けそのものを扱う単元は存在せず、動点問題の中で同時に学ぶ構成になっています。
2. 図を描く時間が必要で、演習量を確保しにくいから
動点問題は区間ごとに図を描くのが基本です。3つに分かれるなら図も3枚。1問あたりの所要時間が長くなります。
この特性上、他の内容と同じ問題数をこなすのが難しい。触れるパターンが限られたまま単元が終わる、という順序になりやすいのです。
3. ミスの原因が「図を描かなかったこと」なのに、答案には出ないから
動点問題で間違える最大の原因は図を描かずに式を立てようとすることです。頭の中だけで底辺と高さを判断すると、ほぼ確実にずれます。
ところが答案には「式が違う」という結果しか残りません。「図を描いていれば防げた」という原因は記録に残らないため、次も同じミスを繰り返すことになります。
対策は1つだけです。区間ごとに、必ず図を描く。時間はかかりますが、これが最短経路です。
【検算】境目で値が一致するか
動点問題の検算は境目での一致——これに尽きます。
面積は連続して変化するので、境目で急にジャンプすることはありません。したがって
左側の式に境目の値を入れた結果 = 右側の式に入れた結果
これが必ず成り立ちます。一致しなければ、必ずどちらかが間違いです。
| 問題 | 境目 | 左 | 右 |
|---|---|---|---|
| 長方形の例 | ○ | ||
| 正方形の例 | ○ | ||
| 正方形の例 | ○ |
もう2つ、補助的な確認があります。
- 面積が負になっていないか。負なら式の符号が逆
- 最大値が図形全体の面積を超えていないか。超えたら計算ミス
よくあるミス
ミス1:図を描かずに式を立てる
最大の原因です。区間ごとに図を描けば、底辺と高さは目で見て決まります。
ミス2:境目を求め忘れる
「 の変域」を書き忘れると減点されます。各区間の範囲を必ず書くこと。
境目は辺の長さ÷速さで出ます。速さが毎秒2cmなら、6cmの辺は3秒です。
ミス3:高さが変わると思い込む
Pが底辺と平行な辺を動いているとき、高さは変わりません。面積は一定になります。
「動いているのに面積が変わらない」のは正しい答えです。不安になって式をひねらないこと。
ミス4:Pの位置を「進んだ距離」で混乱する
2つ目の辺に入ったら、その辺上での距離=(進んだ距離)−(1つ目の辺の長さ) です。
正方形の例なら、区間3でCPは 。この引き算を忘れると全部ずれます。
練習問題
- 縦3cm、横8cmの長方形ABCDで、点Pは頂点Bを出発し辺BC上を毎秒1cmで動く。三角形ABPの面積 を の式で表し、変域も答えなさい。
- 1辺10cmの正方形ABCDで、点Pは頂点Aを出発し辺AB上を毎秒2cmで動く。三角形APDの面積 を の式で表し、変域も答えなさい。
- 2で、点PがさらにBC上を進むとき()の を求めなさい。
- 3の答えについて、 で2の式と一致することを確かめなさい。
- 1辺6cmの正方形ABCDで、点Pが辺AB、BC、CD上を毎秒3cmでDまで動くとき、境目となる の値をすべて答えなさい。
解答
- BP 、高さAB 。、変域は(BC=8cmを毎秒1cm)
- AP 、高さAD 。、変域は(AB=10cmを毎秒2cm)
- PはBC上。底辺AD 、高さはABの長さで10で一定。50
- を2の式に入れると 。3の答えも50。一致しました ○
- 毎秒3cmなので 進む。Bに到達 より 、Cに到達 より 、Dに到達 より 。境目は と (終点は )
まとめ
- 場合分けの境目は点Pが頂点に来るとき。自分で決めるのではなく図形が決めている
- 境目の は辺の長さ÷速さで計算する
- 区間ごとに必ず図を描く。これが最短経路
- 底辺を固定して高さが変わるかを見る。平行な辺を動くなら面積は一定
- 2つ目以降の辺では(進んだ距離)−(前の辺の長さ) で位置を出す
- 検算は境目で左右の式の値が一致するか。これが最強
- 変域を必ず書く
動点問題は、「状況が変わったら式も変わる」という数学の基本構造を初めて体験する場所です。高校では絶対値を含む関数、定義域が動く最大最小、確率の場合分けと、場合分けが標準的な作業になります。中2のここで「境目を先に見つける」という順番を身につけておくと、以降の場合分けが手順の問題になります。
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