因数分解の問題を前にして、「どの公式を使えばいいのか分からず手が止まる」——これは中3でも高1でも、いちばん多いつまずきです。
公式を1つずつ覚えても解けるようになりません。必要なのは試す順番です。順番さえ決まっていれば、初見の式でも上から順に当てはめるだけで処理できます。
結論:この4ステップを上から順に試す
- 共通因数でくくれないか(いちばん最初。ここを飛ばす人が非常に多い)
- 公式の形になっていないか(項の数で見分ける)
- たすきがけができないか( の係数が1でないとき)
- 置き換え・次数の低い文字で整理できないか(複雑な式のとき)
この順に固定します。以下、それぞれで何を見るかを具体的にします。
ステップ1:まず共通因数を探す(最優先)
すべての項に共通してかかっている数・文字がないかを最初に確認します。ここを飛ばすと、後の作業が何倍も面倒になります。
係数の と の最大公約数 、そして両方にある をくくり出しました。
共通因数を見落とすと、たとえば次の式で詰まります。
を先にくくれば、残りは有名な公式そのものです。くくらずに のまま公式を探しても、どの公式にも当てはまりません。
【検算】展開して戻します。。もとの式と一致しました。
ステップ2:項の数で公式を見分ける
公式は「いくつ覚えるか」ではなく「何項の式か」で引き当てると迷いません。
2項のとき → 平方の差を疑う
「2乗ひく2乗」の形かどうかだけを見ます。
注意: は因数分解できません。符号がプラスのときは、この公式は使えません。
3項のとき → まず平方の形、次に和と積
3項なら、はじめに完全平方式かどうかを見ます。
見分け方は「両端が2乗になっていて、真ん中がその2つの積の2倍」です。
真ん中の が になっているので当てはまります。
完全平方でなければ、和と積で探します。
なら、かけて12、たして7になる2数を探します。 と です。
符号の決め方は次のとおりです。
| 定数項の符号 | 2数の符号 | 見るところ |
|---|---|---|
| 同符号 | の係数の符号と同じ | |
| 異符号 | 絶対値が大きいほうが の係数の符号 |
例: は定数項が負なので異符号。かけて 、たして の組は と 。
ステップ3:たすきがけ( の係数が1でないとき)
のように の係数が1でない場合は、和と積では処理できません。たすきがけを使います。
やることは「かけて になる組」と「かけて になる組」を並べ、たすきにかけた和が になる組み合わせを探すだけです。
| 左( の係数) | 右(定数) | たすきの積の和 | 判定 |
|---|---|---|---|
| ✕ | |||
| ○ |
【検算】展開すると 。一致しました。
探す順のコツ:定数項の候補が少ないほうから試します。 は素数なので組は と の2通りしかなく、すぐ終わります。
ステップ4:置き換え・次数の低い文字で整理
同じかたまりが繰り返されているとき
とおくと 。 を戻して
【検算】もとの式に を入れると 。答えの式は 。一致します。
文字が2種類以上あるとき
いちばん次数の低い文字について整理するのが鉄則です。
について整理すると( は1次)
【検算】 を代入。もとの式は 、答えの式は 。一致しました。
【検算】4ステップで実際に解けるか通しで確認
初見の式 に順番どおり当てはめます。
- 共通因数: がある →
- 公式: は2項で平方の差 →
ステップ2で終了しました。展開して確認:。もとの式に戻ります。
もし共通因数を飛ばして のまま平方の差を使おうとすると、 が「何かの2乗」にならないため手が止まります。ステップ1を飛ばさない理由がここにあります。
よくあるミス
ミス1:共通因数をくくり忘れる
いちばん多いミスです。 を と答えてしまう例をよく見ます。間違いではありませんが因数分解が途中で止まっています。正しくは
答えたあとに「まだくくれる部分はないか」を必ず見直してください。
ミス2: を無理に分解しようとする
はこれ以上分解できません(中学・高校の実数の範囲では)。符号がプラスの2項は、共通因数がなければそこで終わりです。
ミス3:たすきがけで符号を取り違える
定数項が負のときは必ず異符号の組になります。 なら 。
【検算】展開して 。一致します。
練習問題
- を因数分解しなさい。
- を因数分解しなさい。
- を因数分解しなさい。
- を因数分解しなさい。
- を因数分解しなさい。
解答
- 共通因数 →
- 3項で完全平方()→
- かけて 、たして → と →
- たすきがけ。。検算:
まとめ
- 因数分解は公式の暗記量ではなく試す順番で決まる
- 共通因数 → 公式(項の数で判別)→ たすきがけ → 置き換えの4ステップを固定する
- 2項なら平方の差、3項ならまず完全平方、次に和と積
- 答えを出したら展開して戻し、さらにまだくくれないかを確認する
因数分解は中3で終わる単元ではありません。高校の二次関数、方程式、微分積分まで、式を扱うすべての場面で使い続けます。手順として身につけておくと、その後の負担がはっきり変わります。
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