因数定理は「 なら で割り切れる」。定理そのものは簡単です。
問題は をどう見つけるか。当てずっぽうで代入していては時間が足りません。実は探す範囲は最初から決まっています。
結論:候補は「定数項の約数 ÷ 最高次係数の約数」
整数係数の多項式 が有理数の解 をもつとき(既約分数とする)
は定数項 の約数、 は最高次係数 の約数
最高次係数が1なら、定数項の約数だけを試せば済みます。しかも符号は両方。
試す順番
- (係数の和が0か)
- (交代に足し引きして0か)
- 絶対値の小さい約数から順に
が最優先です。計算がほぼ暗算で済むからです。
剰余の定理と因数定理はセット
を1次式 で割ったときの商を 、余りを とすると
1次式で割った余りは定数です。ここに を代入すると
余り (剰余の定理)
とくに なら余りが0、つまり割り切れる。これが因数定理です。
2つは別の定理ではありません。同じ式から出ています。
と は暗算できる
で試します。
係数を全部足す
0になりました。したがって を因数にもちます。
符号を交互にして足す
0ではないので は因数ではありません。
【検算】実際に代入します。 ○
やってみる1:
候補を書き出す
最高次係数は1、定数項は 。候補は6の約数に をつけたもの。
試す
なので が因数。組立除法で割ります。
| 1 | 11 | |||
|---|---|---|---|---|
| 1) | 1 | 6 | ||
| 1 | 6 | 0 |
商は 、余りは0。さらに因数分解して
【検算】展開して戻します。
一致 ○
【検算2】定数項を見ます。。もとの定数項と一致 ○
やってみる2:最高次係数が1でないとき
を因数分解せよ。
候補を書き出す
定数項2の約数は 。最高次係数2の約数は 。したがって候補は
分数も候補に入るのがポイントです。
試す
が因数です。組立除法で を使って割ると
| 2 | 2 | |||
|---|---|---|---|---|
| 5 | ||||
| 2 | 2 | 0 |
商は 。これをたすきがけで
したがって
【検算】展開します。
一致 ○
【検算2】 より 。これは候補に入っていた分数です ○ もし しか試さなければ見落としていました。
剰余の定理の応用:2次式で割った余り
を で割った余りを求めよ。
2次式で割った余りは1次以下なので と置けます。
と を代入すると、 の部分が消えます。
引くと 、よって 。余りは 。
【検算】実際に割り算します。 で割ると商は 。
一致 ○
【検算2】 を代入:余りの式は 、もとの ○ :、 ○
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 「候補は定数項の約数」の根拠が発展扱いになりやすいから
この事実(有理数解の候補が限られること)を証明するには整数の性質、とくに互いに素の議論が必要です。
そのため証明は発展的な内容として扱われることが多く、標準の流れでは「 などを代入してみる」という例示で進みます。範囲が確定していることが伝わらないと、当てずっぽうの作業になります。
2. 最高次係数が1でない場合の分数の候補が抜けやすいから
教科書の例題は最高次係数が1のものが中心です。そこでは整数だけ試せば足ります。
ところが最高次係数が2や3になると のような分数も候補になる。この拡張は例題の中で自然に出てくるとは限らないため、整数だけ試して「解けない」と判断することが起こります。
3. 組立除法が計算技法として扱われ、意味が説明されにくいから
組立除法は手順を覚えれば速い反面、なぜあの並べ方で商が出るのかは説明を要します。
限られた時間では手順の習得が優先されやすく、係数だけを取り出した割り算だという理解が後回しになる。手順を忘れると立て直せなくなります。
【検算】3つの方法
1. 展開して戻す
最も確実です。因数分解の答えは、必ず展開して確認できます。
【検算】 ○
2. 定数項と最高次の係数を照合する
因数の定数項どうしの積がもとの定数項、最高次の係数どうしの積がもとの最高次係数になります。
【検算】:定数項は ○、最高次は ○
3. 求めた解を代入して0か
【検算】: ○
よくあるミス
ミス1:候補に分数を入れ忘れる
最高次係数が1でなければ分数も候補です。
ミス2:符号の両方を試さない
の両方です。 を忘れがち。
ミス3: なのに で割る
で割ります。 なら 。
ミス4:組立除法で符号を間違える
で割るときは を使います。 なら 。
ミス5:商をさらに因数分解しない
2次以下になったら、たすきがけや解の公式で最後まで分解します。
ミス6:余りの次数を間違える
2次式で割った余りは1次以下()。定数だけと決めつけない。
練習問題
- の有理数解の候補をすべて書きなさい。
- 1の式を因数分解しなさい。
- の有理数解の候補をすべて書きなさい。
- 3の式を因数分解しなさい。
- について と を係数の和・交代和で求めなさい。
- を で割った余りを求めなさい。
- を因数分解しなさい。
解答
- 定数項 の約数に 。
- より が因数。。検算:定数項 ○
- 定数項2の約数 最高次2の約数。
- より が因数。。検算:展開して一致 ○
- 、0
- と置き 。。検算: で ○
- より が因数。。検算:展開すると ○
まとめ
- 剰余の定理と因数定理は から出る同じもの
- 有理数解の候補は定数項の約数 ÷ 最高次係数の約数( 両方)
- を最初に試す(係数の和・交代和で暗算できる)
- 最高次係数が1でなければ分数も候補
- 割った商は2次以下になったら最後まで分解
- 2次式で割った余りは1次以下と置いて代入する
- 検算は展開して戻す/定数項と最高次の照合/解を代入して0
因数定理は「割り算の余りを、代入1回で知る」という道具です。実際に割らずに答えが分かるから速い。この「計算せずに情報を得る」発想は、解と係数の関係とも、数IIIの極限とも同じ方向を向いています。候補が有限個に絞られていると知っているかどうか——差がつくのはそこだけです。
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