中3の乗法公式は4つ。並べて覚えようとすると、どの式にどれを当てるのか分からなくなる——因数分解の前段階でつまずく典型です。
4つを別々に覚える必要はありません。すべて分配法則から出てくるので、忘れてもその場で作り直せます。
結論:4つの公式と、選ぶ基準
| 公式 | 形 | 見分けるところ |
|---|---|---|
| ① | 先頭が同じ 、後ろが違う数 | |
| ② | 同じものの2乗(+) | |
| ③ | 同じものの2乗(−) | |
| ④ | 符号だけが違う組 |
見るのはかっこの中の後ろの数( と )だけです。
- 同じ数で符号も同じ → ②か③(2乗の形)
- 同じ数で符号だけ違う → ④
- 違う数 → ①
②③④は、実は①の特別な場合です。次で確かめます。
すべて①から出てくる
まず①を分配法則で作ります。
やっているのは「1つずつ全部かける」だけです。
②は の場合
③は …ではなく、 を にした場合
最後の項は です。 がプラスになるので、ここは符号が変わりません。
④は の場合
真ん中の項が消えるのがポイントです。 だからです。
これで4つが1つの式の変形だと分かりました。①だけ覚えておけば、残りは代入で作れます。
【検算】具体的な数で4つとも確かめる
、、 を入れて、展開前と展開後が一致するか見ます。
| 公式 | 展開前 | 展開後 | 一致 |
|---|---|---|---|
| ① | ○ | ||
| ② | ○ | ||
| ③ | ○ | ||
| ④ | ○ |
すべて一致しました。公式が不安なときは、数を入れて確かめるのがいちばん確実です。5秒で済みます。
係数が1でないとき
のような形も、 をひとかたまりと見れば④がそのまま使えます。
【検算】 を入れると、展開前は 、展開後は 。一致します。
ここで であることに注意してください。 ではありません。
2乗のときも同じ
【検算】 で展開前 、展開後 。一致します。
3項以上のとき
のように項が増えても、分配法則に戻れば必ず処理できます。
2つをひとかたまりにする方法が速いです。 をAとおくと
【検算】 を入れると、展開前は 。
展開後は 。一致しました。
公式を使う本当の理由
「分配法則で全部かければいいのに、なぜ公式を覚えるのか」——理由は2つあります。
1. 計算が速い
を1つずつかけると4回の掛け算が必要ですが、公式なら「たして10、かけて21」で終わります。
2. 因数分解で逆向きに使う
こちらが本命です。 を見て に戻すには、公式の形を知っていないと不可能です。
展開は分配法則でできますが、因数分解は「形を知っている」ことが前提になります。だから公式を覚えるのです。
よくあるミス
ミス1: としてしまう
いちばん多いミスです。真ん中の が抜けています。
確認法: を入れる。 ですが、。合いません。この5秒の確認で防げます。
ミス2:③の最後の項を にする
最後はプラスです。 だからです。
確認法: で 。公式では ○。もし なら で合いません。
ミス3:④で真ん中が残ると思う
は真ん中が消えます。 だからです。
逆に、真ん中が残る形( など)を見て④を使おうとしないこと。
練習問題
- を展開しなさい。
- を展開しなさい。
- を展開しなさい。
- を展開しなさい。
- を展開しなさい。
解答
- (たして7、かけて10)
- (最後はプラス)
- (真ん中は消える)
- 。検算: で 、 ○
- をひとかたまりと見て 。検算: で 、 ○
まとめ
- 4つの公式はすべて①の特別な場合。分配法則から作れる
- 選ぶ基準はかっこの中の後ろの数だけ(同じか/符号違いか/別の数か)
- の最後はプラス。 は真ん中が消える
- 係数が1でないときはひとかたまりと見る()
- 不安なら具体的な数を入れて5秒で確認する
- 公式を覚える本当の理由は因数分解で逆向きに使うため
乗法公式は中3で終わりません。高校の因数分解、二次関数の平方完成、数IIの式と証明、微分の計算まで、式変形のたびに使い続けます。「①から作れる」と分かっていれば、複雑な形が出ても分配法則に戻って処理できます。
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