二次方程式なのに解が1つしかない。「重解」と呼ばれるこの状況を、多くの人が「たまたま2つが同じになった」くらいに受け止めています。
実際にはもっと明確な意味があります。解は2つある。ただし同じ値が2回数えられている——この見方に立つと、グラフとの対応も、判別式の意味も一気につながります。
結論: の形になっている
重解になるのは、因数分解したときに同じかっこが2つ並ぶときです。
因数分解すると
つまり 。「どちらかが0」で考えると、どちらも 。
だから解は の1つですが、「2つの解が両方とも3」と見るのが正確です。これを重解といいます。
【検算】 を代入すると ○。他に解がないことも確認します。 なら 、 なら ○
判別式が0になる
解の公式を見れば、なぜ1つになるのかが分かります。
があるから、普通は2つの解が出ます。ところが の中が0だと
が効かなくなり、1つの値になります。
この を判別式といい、 と書きます。
| 判別式 | 解の個数 | 状況 |
|---|---|---|
| 2個 | 異なる2つの解 | |
| 1個 | 重解 | |
| 0個 | 実数解なし |
【検算】 の判別式は 。確かに0で、重解になっています ○
グラフで見ると「接する」
ここが最も重要です。二次方程式 の解は、放物線 と 軸の交点の 座標です。
| 判別式 | 解 | グラフと 軸 |
|---|---|---|
| 2個 | 2点で交わる | |
| 1個 | 接する(1点で触れる) | |
| なし | 交わらない |
重解=グラフが 軸に接する。これが重解の図形的な意味です。
【検算】 の頂点は 。頂点がちょうど 軸上にあるので接しています ○
この対応が分かると、「接する」と言われたら判別式を0にすればよいと分かります。図形の問題が計算問題に変わります。
「接する」条件を求める問題
が重解をもつとき、 の値を求めなさい。
重解の条件は判別式 。
【検算】 を代入すると 。確かに重解 ○
判別式も確認します。 ○
放物線と直線が接する場合
放物線 と直線 が接するとき、 を求めなさい。
交点は連立して求めます。
接する=この方程式が重解をもつので
【検算】 なら 。重解 ○
接点は で 、つまり 。直線 に入れると ○。放物線上でも直線上でも同じ点です。
「解が2つある」と見る意味
重解を「解が1つ」ではなく「同じ解が2つ」と見ると、次のことが自然になります。
解と係数の関係が成り立つ
の重解は 。解を と の2つと数えると
- 和 … 。 ○
- 積 … 。 ○
2つと数えたときだけ、関係が成り立ちます。1つと数えると和が3になり、合いません。
「二次方程式は解を2つもつ」という原則が保たれる
高校で複素数まで広げると、二次方程式は必ずちょうど2つの解をもつという美しい原則が成り立ちます(重解は2つと数えます)。
重解を「2つ」と数える約束は、この原則を守るためのものです。例外を作らないための工夫だと理解してください。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 「重解」という用語が意味を説明していないから
「重解」は「重なった解」という意味ですが、何が重なっているのかは名前から分かりません。
実際には2つの解が同じ値に重なっているのですが、この説明がないと「解が1つしかない特殊なケース」としか受け取れません。
「同じ解が2回」と言い換えるだけで、和と積の関係もグラフとの対応も見えてきます。
2. 判別式が中学では公式として扱われにくいから
判別式 という名前と記号は、正式には高校(数I)で導入されます。中学では「解の公式の√の中」として扱われます。
名前がないと、独立した道具として使う発想が生まれにくい。「√の中が0だから解が1つ」という理解にとどまり、「 を条件式として立てる」という使い方に進みにくいのです。
3. グラフとの対応が別の単元にあるから
二次方程式は中3の「二次方程式」、放物線は中3の「関数 」で扱われます。同じ学年ですが別の単元です。
「方程式の解=グラフと 軸の交点」という対応は、2つの単元をつなぐ内容なので、どちらの単元でも中心にはなりにくい。
ところがこの対応こそが、高校の二次関数・二次不等式の土台です。接する=重解=判別式0——この3つが同じことだと押さえておいてください。
【検算】3つの方法
1. 因数分解して形を見る
の形になっていれば重解です。
| 方程式 | 因数分解 | 解 |
|---|---|---|
| (重解) | ||
| (重解) | ||
| (重解) |
2. 判別式を計算する
| 方程式 | 判定 | |
|---|---|---|
| 重解 ○ | ||
| 重解 ○ | ||
| 重解 ○ | ||
| 解2個 |
3. 和と積で確かめる
重解 を2つと数えて、和が 、積が になるか。
の重解は 。和は 、 ○。積は 、 ○
よくあるミス
ミス1:重解を「解なし」と混同する
重解は解があります。1つの値ですが、確かに方程式を満たします。解なしは のときです。
ミス2:和と積で重解を1つと数える
解と係数の関係を使うときは2つと数えます。 の重解なら和は6です。
ミス3:判別式の符号を間違える
。 の符号込みで代入します。 なら です。
ミス4:「接する」を「交わらない」と取り違える
- 接する … 1点で触れる。
- 交わらない … 触れもしない。
接するのも交点がある——ここを混同しないでください。
ミス5: の解を とする
から です。係数がついている場合は割ります。
練習問題
- を解きなさい。
- 1の判別式を計算しなさい。
- が重解をもつとき、 の値を求めなさい。
- 3のときの重解を求めなさい。
- を解きなさい。
- 放物線 と直線 が接するとき、 を求めなさい。
解答
- より(重解)。検算: ○
- 0。重解であることと一致 ○
- より
- より。検算: ○
- より 、。検算:判別式 ○
- より 。 から。検算: で重解 。接点は ○
まとめ
- 重解=因数分解すると の形になる
- 正確には「同じ解が2つ」。1つしかないのではない
- 条件は判別式 。解の公式の が効かなくなる
- グラフでは 軸に接する。頂点がちょうど 軸上にある
- 接する=重解=。3つは同じこと
- 解と係数の関係は2つと数えたときだけ成り立つ
- 検算は因数分解の形/判別式/和と積
「接する条件=判別式0」という対応は、高校の数Iで二次関数と二次不等式の中心的な道具になります。さらに数IIでは円と直線の接する条件、数IIIでは曲線の接線——「接する」を代数の等式に翻訳するという発想が繰り返し使われます。中3のここで、図形の状況と方程式の条件を結びつける感覚を作っておいてください。
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