「咲いたコスモス、コスモス咲いた」——加法定理の語呂合わせです。覚えてはいても、符号がどちらだったか本番で不安になるのが定番のつまずきです。
加法定理は導けます。しかも使う道具は中学で習った三平方の定理と、余弦定理だけ。一度自分の手で出しておけば、符号を忘れてもその場で作り直せます。
結論:4つの式と、覚え方より確実な確認法
符号のポイントはひとつ。cosだけ符号が逆になります。sinは足すときに+、cosは足すときに−。
そして不安なときの確認法があります。具体的な角を入れて、既知の値と合うか見るだけです。
たとえば を入れると 。確かに です。符号を逆に覚えていたら となって区別がつかないので、この確認では足りません。
(45°)で試します。
公式に入れると 。一致します。
もし符号を+で覚えていたら となり、その場で誤りに気づけます。この確認を5秒でやる習慣を付けるのが、語呂合わせより確実です。
導出:余弦定理から を出す
まず を導きます。他の3つはここから機械的に出ます。
準備:単位円上に2点をとる
原点を中心とする半径1の円(単位円)の上に、次の2点をとります。
この2点の距離 を、2通りの方法で計算します。
方法1:座標から(三平方の定理)
展開します。
ここで を2回使うと
方法2:余弦定理から
三角形 で、、その間の角は です。余弦定理より
2つを比べる
同じ なので等しいはずです。
両辺から2を引いて で割ると
出ました。使ったのは「2点間の距離」「」「余弦定理」だけです。
残り3つを機械的に出す
いま出した式の を に置き換えます。、 を使うと
符号が反転する理由がここにあります。 が奇関数だから、というだけのことです。
を使います。
ここに の公式を当てはめると
同じく で
【検算】具体的な角で4つすべてを確かめる
(60°)、(30°)で確認します。既知の値は 、、、。
| 式 | 公式で計算 | 直接の値 |
|---|---|---|
4つとも一致しました。符号を間違えていれば必ずどこかが合わなくなります。
加法定理から何が出てくるか
加法定理は「覚えて終わり」の公式ではなく、三角関数の他の公式すべての親です。
2倍角の公式
と置くだけです。
【検算】 のとき 。一致します。
半角の公式
を について解けば出ます。
三角関数の合成
を1つの にまとめる操作も、加法定理を逆向きに使っているだけです。
【検算】 なら で 。
を入れると左辺 、右辺 。一致します。
よくあるミス
ミス1:cosの符号を反転させ忘れる
いちばん多いミスです。cosは「足すときにマイナス」。sinと逆だと覚えます。
迷ったら を入れてください。 になるほうが正解です。
ミス2: としてしまう
三角関数は分配できません。 で確かめると、左辺 、右辺 。まったく違います。
ミス3:tanの加法定理の分母を忘れる
これは を で割って作れます。分母の を落とすと大きく外れます。
【検算】 なら なので 。確かに です。
練習問題
- を として求めなさい。
- を として求めなさい。
- 、(どちらも第1象限)のとき を求めなさい。
- の公式を、 から導きなさい。
解答
- 。 と同じ値( なので当然)
- 、。よって
- を に置き換え、、 を代入する
まとめ
- 加法定理は単位円上の2点間の距離を2通りで計算するだけで導ける
- 使う道具は三平方の定理・・余弦定理の3つのみ
- cosだけ符号が逆。理由は (奇関数)だから
- 不安なら を代入して になるか確認する
- 2倍角・半角・合成はすべて加法定理から出る。個別に覚える必要はない
加法定理を「導ける公式」にしておくと、三角関数の単元全体が1本の幹から枝分かれした構造に見えてきます。数IIIの微分( の証明)でも加法定理が土台になります。語呂合わせで暗記するより、導出を1回追うほうが結局は速く、確実です。
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