「二次方程式 が2つとも正の解をもつような の範囲を求めよ」——条件を何本立てればいいのか分からない。数Iの二次関数で最も条件の立て方に迷う問題です。
実はチェックすべき項目は3つだけ。しかもグラフを描けば、どれが必要かが目で分かります。
結論:判別式・軸・端点の値の3つ
解の配置問題では、放物線が 軸とどこで交わるかを条件に翻訳します。チェック項目は次の3つです。
| 項目 | 意味 | 条件の形 |
|---|---|---|
| ① 判別式 | そもそも実数解があるか | など |
| ② 軸の位置 | 2解の「真ん中」がどこか | の範囲 |
| ③ 端点の値 | 境界での の符号 | の符号 |
この3つを図を見ながら選ぶ——それだけです。全部必要とは限りません。
やってみる:2つとも正の解
が異なる2つの正の解をもつような の範囲を求めなさい。
とおき、グラフが 軸の正の部分で2点交わる状況を考えます。
① 判別式:異なる2つの実数解なので 。
したがって または 。
② 軸:2解がともに正なら、その真ん中も正。軸は なので
③ 端点の値: より右で交わるので、。
3つを同時に満たす範囲を求めます。
- ①: または
- ②:
- ③:
②から なので①の は消え、。③は自動的に満たされます。
答えは 。
【検算】具体的な値で確かめます。
| 方程式 | 解 | 2つとも正か | |
|---|---|---|---|
| 3 | ○ | ||
| 7 | 約 | ○ | |
| 2 | (重解) | ×(異なる2つでない) | |
| ×(正でない) |
のときだけ条件を満たしています ○
を確認します。 で解は 。どちらも正 ○
は境界で重解になるので除外 ○(「異なる2つ」なので等号を含めません)
3つの条件の役割
なぜこの3つで足りるのかを確認します。
- 判別式だけでは、解が正か負か分からない
- 軸だけでは、解が実数かどうか分からない
- 端点の値だけでは、両方が同じ側にあるか分からない
3つそろって初めて「正の側に2つ」が確定します。
【検算】1つ欠けるとどうなるか確かめます。
軸の条件を落とすと: も候補に残ります。 で試すと 、解は と 。正の解ではありません ○(軸の条件が必要だと分かります)
判別式を落とすと: で試すと 。判別式は で実数解なし ○
型2:解が異符号(正と負が1つずつ)
この型は条件が1本で済みます。
が正の解と負の解を1つずつもつ条件を求めなさい。
下に凸の放物線が をまたいで2点で交わるなら、 だけで足ります。
判別式も軸も不要です。 なら自動的に になるからです( 軸上で負なら、必ず左右で正に戻る)。
【検算】 で試します。。
解は 。 なので約 と 。正と負が1つずつ ○
判別式も確認します。 ○。確かに自動的に満たされています。
のとき、判別式が必ず正になる——これは重要な省力化です。
型別まとめ
| 求める配置 | 必要な条件 |
|---|---|
| 異符号(正1・負1) | のみ |
| 2つとも正 | 、軸 、 |
| 2つとも負 | 、軸 、 |
| 2つとも より大 | 、軸 、 |
「同じ側に2つ」なら3条件、「両側に1つずつ」なら1条件——この対比を覚えておくと速いです。
なぜ異符号は1条件で済むのか
下に凸の放物線で なら、 の点がグラフの底の側にあるということです。
放物線は左右とも上に伸びるので、 を十分小さく・大きくすれば必ず正になります。負の値を通っている以上、左右それぞれで必ず 軸を横切ります。
【検算】 のとき 。、。両側で正 ○。だから途中で必ず交わります。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 「条件を何本立てるか」が問題ごとに変わるから
異符号なら1本、同じ側なら3本。問題ごとに必要な条件が変わります。
ところが「解の配置は3条件」と一律に覚えると、異符号の問題で余計な条件を書いて時間を失います。逆に3条件を知らないと同じ側の問題が解けません。
グラフを描いて必要な条件を選ぶ——この判断が本質です。
2. グラフを描く手順が答案に現れないから
解答例には3つの不等式が並びます。「どうやってその3本を選んだか」は書かれません。
実際にはグラフを描いて、必要な条件を目で確認しているのですが、その過程は答案に残りません。
結果として「3本立てるものだ」という暗記になり、応用が効かなくなります。
3. 判別式・軸・端点が別々の場所で習うから
- 判別式 … 二次方程式の単元
- 軸 … 平方完成・グラフの単元
- 端点の値 … 関数の値の計算
3つを組み合わせて使うのが解の配置ですが、それぞれは別の場面で導入されます。統合する作業は自分でやることになります。
【検算】3つの方法
1. 境界の値で試す
求めた範囲の境界の少し内側と外側で、実際に方程式を解きます。
| 範囲 | 解 | 条件を満たすか | |
|---|---|---|---|
| 3 | 内側 | ○ | |
| 2 | 境界 | (重解) | × |
| 1 | 外側 | 実数解なし | × |
境界で切り替わっていれば正解です。
2. 解と係数の関係で確認する
2解を とすると
- 2つとも正 ⇔ かつ (かつ )
- 異符号 ⇔
【検算】 では 、。
2つとも正なら ()かつ ()。軸と の条件と一致 ○
異符号なら で 。 と一致 ○
2つの独立した方法で同じ条件が出ました。
3. グラフを描いて目で確認する
放物線と 軸の位置関係を実際に描きます。条件の見落としはこれで防げます。
よくあるミス
ミス1:判別式だけで済ませる
実数解があることしか言えません。正か負かは別の条件が必要です。
ミス2:異符号なのに3条件書く
だけで足ります。余計な条件は時間の無駄です(間違いではありませんが)。
ミス3:軸の位置を求め忘れる
「同じ側に2つ」では軸の条件が必須です。これがないと反対側の解も混ざります。
ミス4:等号の有無を間違える
「異なる2つ」なら 、「2つ(重解含む)」なら 。問題文を正確に読みます。
ミス5:共通範囲を取り違える
3つの条件はすべて同時に成り立つ必要があります。数直線に3本並べて共通部分を取ってください。
練習問題
- の判別式(4分の1)を計算しなさい。
- 1を因数分解し、 となる の範囲を求めなさい。
- を の式で表しなさい。
- この方程式が異符号の解をもつ条件を求めなさい。
- のときの解を求め、2つとも正か確かめなさい。
- のときの解を求め、異符号か確かめなさい。
解答
- より または
- より。判別式は不要
- より。どちらも正 ○
- より 。 なので約 と 。異符号 ○
まとめ
- チェック項目は①判別式 ②軸 ③端点の値の3つ
- 全部必要とは限らない。グラフを描いて必要なものを選ぶ
- 「同じ側に2つ」→ 3条件/「両側に1つずつ」→ のみ
- 異符号が1条件で済むのは、負を通れば必ず左右で交わるから
- 3条件の共通範囲を数直線で取る
- 検算は境界の内外で実際に解く/解と係数の関係で確認
- 「異なる2つ」なら 。等号の有無を問題文で確認
解の配置は、図形的な状況を不等式に翻訳するという数学の基本作業の縮図です。この発想は数IIの領域、数IIIの微分での増減、さらには最適化問題まで一貫して使われます。「グラフを描いてから条件を書く」——順序を守るだけで、条件の見落としがなくなります。
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