確率の問題で「全部で何通りか」を数えるとき、樹形図と表のどちらを使うか迷う。しかも数え漏らしが怖くて、書き始められない——中2の確率で最初に詰まるところです。
使い分けの基準は1つだけです。「操作が2回か、それ以外か」。これで決まります。
結論:2回なら表、3回以上なら樹形図
| 状況 | 道具 | 理由 |
|---|---|---|
| 操作が2回(さいころ2個、コイン2枚) | 表 | 縦横2方向で全部並べられる |
| 操作が3回以上(コイン3枚、くじを3回) | 樹形図 | 表は2次元までしか書けない |
| 選ぶだけ(4人から2人選ぶ) | 樹形図 | 重複を消しやすい |
表は2次元の紙に収まる範囲でしか使えません。3回以上の操作は、原理的に表では書けない。だから樹形図になります。
表が向く場面:さいころ2個
大小2つのさいころを投げるとき、出た目の和が7になる確率を求めなさい。
大のさいころを縦、小を横にした6×6の表を作ります。マスは 個。これが全部の場合の数です。
和が7になるマスを数えます。
| 大 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 小 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
6通りです。したがって確率は
【検算】和ごとの通り数を全部数えて、合計が36になるか確かめます。
| 和 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 通り | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
合計は 。一致しました。
7が最も多いことも表から見えます。左右対称になっているのも確認できます。
「大小」がなくても区別する
ここが最大の落とし穴です。「2つのさいころ」と書かれていて大小の区別がなくても、区別して数えます。
理由は同じ確からしさを保つためです。区別しないと と が1通りになりますが、実際にはこの2つは別々に起こりうるので、他の場合の2倍起こりやすくなってしまいます。
【検算】区別しない数え方だと、全部で21通りになります。しかし のようなゾロ目は1通りぶんしか起こらないのに、 は2通りぶん起こる。1つ1つの起こりやすさが違うので、確率の計算に使えません。
迷ったら必ず区別する。これが確率の原則です。
樹形図が向く場面:コイン3枚
3枚のコインを投げるとき、表が2枚出る確率を求めなさい。
3回の操作なので樹形図です。1枚目で2本、2枚目でそれぞれ2本、3枚目でまた2本に分かれます。
全部で 通り。書き出すと
表表表・表表裏・表裏表・表裏裏・裏表表・裏表裏・裏裏表・裏裏裏
表が2枚なのは表表裏・表裏表・裏表表の3通り。
【検算】表の枚数ごとに数えます。
| 表の枚数 | 0 | 1 | 2 | 3 |
|---|---|---|---|---|
| 通り | 1 | 3 | 3 | 1 |
合計は ○。左右対称になっているのも自然です(表と裏を入れ替えても同じ構造だから)。
樹形図が向く場面:選ぶ問題
A、B、C、Dの4人から2人を選ぶとき、全部で何通りあるか。
「選ぶ」問題では順番が関係ありません。AとBを選ぶのと、BとAを選ぶのは同じことです。
樹形図で書き出すとき、アルファベット順に並べると重複を防げます。
- Aから … AB、AC、AD
- Bから … BC、BD(BAはABと同じなので書かない)
- Cから … CD
合計6通りです。
【検算】順番を区別して数えると 通り。2人の並べ方は2通りなので、。一致しました。
「順番あり」と「順番なし」で答えが変わる——これが確率で最も間違えやすい区別です。
順番が関係するかの見分け方
| 問題文 | 順番 | 例 |
|---|---|---|
| 「選ぶ」「組を作る」 | 関係なし | 4人から2人選ぶ |
| 「並べる」「順に取り出す」 | 関係あり | 4人を1列に並べる |
| 「委員長と副委員長」 | 関係あり | 役職が違うから |
| 「代表2人」 | 関係なし | 役職の区別がないから |
役割に違いがあるかどうかで判断してください。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 「同じ確からしさ」の意味が伝わりにくいから
確率の定義は「同様に確からしい場合の数」に基づいています。ところがこの「同様に確からしい」という言葉は抽象的で、具体的に何を意味するかが見えにくい。
実際に効いてくるのは「2つのさいころを区別するか」という場面ですが、そこで初めて意味が分かるという順序になっています。定義を習う時点では、なぜその条件が必要なのか実感できないという構造です。
2. 数え上げの道具が複数あり、選び方が示されにくいから
樹形図・表・計算(積の法則)——複数の方法がすべて正しいため、どれを選ぶかは自由です。
自由度があること自体は良いのですが、「正しい手順が1つあるはず」と思っている状態では、選択肢の多さが迷いになります。
対策は「2回なら表、それ以外は樹形図」と自分の中で1つに決めること。迷う余地をなくせば速くなります。
3. 数え漏らしが答案では検出できないから
「6通り」と書いたとき、それが正しいか間違いかは数え直さないと分かりません。計算問題と違い、途中式で検算する仕組みがないのです。
だから数え上げには別の検算法が必要です。この記事で示した「全部を分類して足すと総数になるか」という方法が、それにあたります。
和が2から12までの通り数を全部足して36になる——これが確認できれば、7が6通りであることの信頼度が上がります。
【検算】3つの確認法
1. 全部の場合を分類して足す
数えた結果をすべての場合について分類し、合計が総数になるかを見ます。
- さいころ2個 … 和2〜12の通り数の合計が36
- コイン3枚 … 表0〜3枚の通り数の合計が8
合計が合わなければ、どこかで数え漏らしています。
2. 確率の合計が1になるか
すべての場合の確率を足すと必ず1になります。
3. 余事象で確かめる
「〜でない確率」を計算して、足して1になるかを見ます。
コイン3枚で表が2枚の確率が なら、表が2枚でない確率は 。合計1 ○。
余事象のほうが数えやすい問題も多いので、この視点は計算の短縮にもなります。
よくあるミス
ミス1:2つのさいころを区別しない
必ず区別します。区別しないと1つ1つの起こりやすさが変わり、確率が計算できなくなります。
ミス2:3回以上の操作を表で書こうとする
表は2次元まで。3回以上は樹形図です。
ミス3:「選ぶ」問題で順番を区別する
4人から2人選ぶなら6通りで、12通りではありません。ABとBAは同じです。
ミス4:樹形図を途中で省略する
「あとは同じ」と省くと数え漏らしが起きます。最後まで書くか、省いた部分の数を明示してください。
ミス5:分母を間違える
確率の分母はすべての場合の数です。さいころ2個なら36で、6ではありません。
練習問題
- 大小2つのさいころを投げるとき、目の和が5になる確率を求めなさい。
- 1で、目の積が偶数になる確率を求めなさい。
- コインを3枚投げるとき、少なくとも1枚が表になる確率を求めなさい。
- A、B、C、D、Eの5人から2人を選ぶ方法は何通りか。
- 4で、選ばれた2人に委員長と副委員長の役をつける方法は何通りか。
- 大小2つのさいころで、目が同じになる確率を求めなさい。
解答
- 和が5なのは の4通り。
- 積が奇数になるのは両方とも奇数のときで 通り。偶数はその余事象で 通り。。余事象を使うのが速い
- 少なくとも1枚が表=全部裏でない。全部裏は1通りなので
- 順番を区別すると 。2人の並べ方2通りで割って 10通り
- 役職が違うので順番あり。20通り。4の2倍です
- 同じ目は から までの6通り。
まとめ
- 操作が2回なら表、3回以上なら樹形図。表は2次元までしか書けない
- 「選ぶ」問題は樹形図でアルファベット順に書くと重複を防げる
- 2つのさいころは必ず区別する。同じ確からしさを保つため
- 順番の有無は役割に違いがあるかで判断する
- 検算は分類して合計が総数になるか/確率の合計が1か/余事象と足して1か
- 「少なくとも〜」は余事象で計算すると速い
ここで身につける「もれなく・重複なく数える」という感覚は、高校の数A(順列・組合せ)でそのまま主題になります。中2で扱う数はまだ小さく、樹形図で書き切れる規模です。書き切れるうちに、正確に数える型を作っておく——これが数Aでの負担を決めます。
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