数学的帰納法は型が決まっています。だから書き方だけなら真似できる。
ところが「仮定を使っていない答案」が非常に多い。それでは帰納法になっていません。仮定をどこで使うか——ここが本体です。
結論:3ステップの型
- (i) のとき成り立つことを示す
- (ii) のとき成り立つと仮定する
- (iii) そのとき でも成り立つことを示す
この3つですべての自然数について成り立つと結論できます。
なぜこれで全部言えるのか
ドミノ倒しを思い浮かべてください。
- (i) は1枚目が倒れること
- (iii) はどのドミノも、次のドミノを倒すこと
この2つがそろえばすべて倒れます。1枚目が2枚目を、2枚目が3枚目を——無限に続く。
(iii) だけでは足りません。倒す仕組みがあっても、最初の1枚が倒れなければ何も起きない。(i) を省けない理由がこれです。
最重要: の式に、仮定を登場させる
(iii) でやることは決まっています。
の左辺を、 の左辺が現れる形に変形する
そこに仮定を代入する。これが帰納法の心臓部です。
やってみる1:
(i) のとき
左辺は1、右辺は 。成り立つ ○
(ii) を仮定
(iii) を示す
左辺は
最初の 項は、仮定の左辺そのものです。だから置き換えられます。
ここが「仮定を使った」箇所です。あとは整理するだけ。
これは右辺に を代入した形です。
一致 ○ よって でも成り立ちます。
【検算1】 で確かめます。左辺 、右辺 ○
【検算2】 から への流れ。、 ○
やってみる2:
(i)
左辺1、右辺 ○
(ii) を仮定
(iii)
でくくります。
ここで を因数分解します。
一方、右辺に を代入すると
一致 ○
【検算1】因数分解を確かめます。
○
【検算2】:左辺 、右辺 ○
やってみる3:不等式の帰納法
のとき を示せ。
(i) 出発点は
○ 出発点は1とは限りません。示したい範囲の最小値から始めます。
(ii) ()を仮定
(iii)
ここで仮定を使いました。あとは を示せば完成です。
なので 。したがって
よって となり
【検算1】 で確かめます。、。 ○
【検算2】実際の値を並べます。
| 4 | 5 | 6 | 7 | |
|---|---|---|---|---|
| 16 | 32 | 64 | 128 | |
| 16 | 25 | 36 | 49 |
では等しく、 で成り立つ ○ だから出発点が5なのです。
「仮定を使っていない」答案とは
(iii) でいきなり公式を使って計算してしまうのがそれです。
たとえば を、証明したい公式を使って と書いてしまう。
それは「示したいこと」を使っているので、証明になっていません。
使ってよいのは、(ii) で仮定した の式だけ
【確認】自分の答案を見て、「仮定より」と書いた箇所があるか——なければ帰納法になっていません。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 型が明確なので、書き方の練習で終わりやすいから
(i)(ii)(iii) の3ステップは形式が決まっています。だから答案の形はすぐ真似できる。
ところが中身——仮定をどこで使うかは、問題ごとに考える必要があります。形が整った答案と論理が通った答案は別物ですが、形のほうが目に見えるため、そちらに意識が向きやすい。
2. 「なぜ全部言えるのか」の説明が短くなりやすいから
ドミノの比喩は直感的で分かりやすい反面、厳密には自然数の性質(数学的帰納法の原理)に基づいています。
厳密な議論は高校の範囲を超えるため、「そういうものだ」として受け入れる形になりやすい。比喩だけでも押さえておくと、(i) を省けない理由が納得できます。
3. 出発点が1でない例が少ないから
教科書の例題は から始まるものが中心です。
ところが不等式の証明では からのように途中から始まることがある。(i) で何を示すかが変わりますが、この型は応用として後に置かれやすいため、初見で戸惑います。
【検算】3つの方法
1. 小さい で実際に確かめる
で両辺を計算します。証明の前に必ずやるべきです。
【検算】:、 ○
2. 変形の結果が「 を代入した形」か
右辺の を に置き換えた式と見比べます。
【検算】 と は同じ ○
3. 仮定を使った箇所があるか
「仮定より」と書ける行があるかを確認します。
【検算】 の第1項が仮定 ○
よくあるミス
ミス1:(i) を書かない
1枚目が倒れなければ何も起きません。必須です。
ミス2:仮定を使わずに証明する
帰納法になっていません。「仮定より」の行を作ります。
ミス3:示したいことを使ってしまう
の式は、まだ証明されていません。使えるのは だけ。
ミス4:出発点を間違える
なら (i) は で示します。
ミス5: の範囲を書き忘れる
など、仮定の範囲も明記します。
ミス6:結論を書かない
「よってすべての自然数 で成り立つ」で締めます。
練習問題
- を帰納法で証明しなさい。
- 1の (iii) で仮定を使った箇所を指摘しなさい。
- を帰納法で証明しなさい。
- 3で使う因数分解 を確かめなさい。
- のとき を証明しなさい。
- 5で のときはどうなるか調べなさい。
- (i) を省いてはいけない理由を説明しなさい。
解答
- (i) で両辺1。(ii) を仮定。(iii) 。成立
- を に置き換えたところ
- (iii) で 。成立
- ○
- (i) 。(iii) かつ 。成立
- 、 で等しい。だから が条件
- (iii) は「次に伝える」だけで、出発点がなければ何も始まらないから
まとめ
- 型は(i) / (ii) を仮定 / (iii) を示す
- 根拠はドミノ倒し(最初の1枚+次を倒す仕組み)
- (iii) では の式が現れる形に変形して、仮定を代入する
- 「仮定より」の行がなければ帰納法になっていない
- 示したいこと( の式)は使えない
- 出発点は示したい範囲の最小値
- 検算は小さい で確認/ 代入形と比較/仮定を使ったか
数学的帰納法は「無限個の主張を、有限の議論で証明する」方法です。1つずつ確かめることはできないけれど、連鎖の仕組みを1回示せば全部が言える。この発想は、漸化式でも、プログラムの再帰でも、同じ形で現れます。仮定を使う——それが連鎖を作る唯一の方法です。
この単元でつまずいたままなら
「なぜそうなるのか」が抜けたまま先へ進むと、後の単元で必ず戻ってくることになります。オンライン数学専門塾「数強塾」は、公式の暗記ではなく理由から説明する完全1対1の個別指導です。プロ講師のみ(学生アルバイトはいません)、中高一貫校の進度にも対応しています。
ご相談は無料です。入会の強制はありません。

