軌跡の問題で答えは合っているのに減点される——原因はほぼ1つです。「逆に」の確認を書いていない。
そして多くの場合、それは形式的な1行で済みます。ところが本当に効く問題もある。その見分けができるかどうかが分かれ目です。
結論:答案の型は5ステップ
- 動く点を と置く
- 条件を の式にする(媒介変数があれば消去)
- 整理して図形の式を得る
- 逆に、その図形上の点がすべて条件を満たすか確認する
- 除外点・範囲の制限があれば書く
ステップ4と5が答案の後半です。ここを落とすと点が来ません。
なぜ「逆に」が必要なのか
ステップ2〜3でやったのは
条件を満たす点なら、この式を満たす
という向きだけです。逆向き——式を満たす点が本当に条件を満たすか——は別の話。
とくに媒介変数を消したときに問題が起きます。媒介変数には動ける範囲があるのに、消してしまうとその情報が式から消えるからです。
「必要条件で絞ってから、十分性を確認する」——恒等式や整数問題と同じ論証の型です。
やってみる1:逆が自明なケース
2点 、 から等距離にある点の軌跡を求めよ。
と置きます。 より、2乗して
逆の確認
逆に、直線 上の点 について
等しいので、すべての点が条件を満たします ○
したがって軌跡は直線 (線分ABの垂直二等分線)。
【検算】 で確かめます。、 ○
この例では逆も明らかです。それでも書く——それが答案の作法です。
やってみる2:アポロニウスの円
、 から距離の比が である点の軌跡を求めよ。
より 。2乗して
平方完成して
中心 、半径4の円です。
逆の確認
逆に、この円上の点 は を満たすので
一致するので ○ すべての点が条件を満たします。
【検算】2点で確かめます。
| 点 | 円上か | AP | BP | 比 |
|---|---|---|---|---|
| ○ | 2 | 4 | ○ | |
| ○ | 6 | 12 | ○ |
やってみる3:媒介変数を消すケース
点 Q が円 上を動くとき、 と Q を結ぶ線分の中点 P の軌跡を求めよ。
Q の座標を と置きます。これが媒介変数です。
中点 は
について解きます。
これを に代入して
中心 、半径 の円です。
逆の確認
逆に、この円上の点 に対して と定めると
Q は確かにもとの円上にあります ○ しかも はAQの中点になっている。除外点はありません。
【検算】 のとき 。円上か:
○ なら 。 ○
やってみる4:範囲の制限が出るケース
ここが本題です。
直線 が円 と2点で交わるとき、その2交点の中点 M の軌跡を求めよ。
交点の 座標は
2解の和は なので、中点の 座標は
そして 。したがって
ここで止めると間違い
「2点で交わる」という条件が残っています。判別式から
なので 、つまり
軌跡は直線 のうち、 の部分です。
逆の確認
逆に、この範囲の点 に対して とすると なので確かに2点で交わり、その中点はこの点になります ○
【検算1】 のとき。
交点は 。座標は と 。中点は
上で、 ○
【検算2】 のとき(境界)。
重解——接しているので2点では交わりません。だから は軌跡から除かれます ○
この確認をしないと、端の点まで答えに含めてしまいます。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 標準の例題では、逆が自明で省いても答えが合うから
垂直二等分線やアポロニウスの円では、逆も明らかに成り立ちます。確認を省いても最終的な図形は変わりません。
そのため「逆に」の1行は形式的な作法に見えます。本当に効く問題——媒介変数に範囲がある問題——は応用として後ろに置かれやすいため、必要性を実感する前に単元が終わりがちです。
2. 媒介変数の範囲を追う作業が、式変形の外にあるから
「 を消す」という操作は純粋な式変形です。ところが がどこまで動けるかは、式変形とは別に管理しなければなりません。
この二重管理は計算手順として書き下しにくいため、例題ごとに個別に扱われやすい。共通の作法として定着しにくい部分です。
3. 同じ論証の型が、単元ごとにばらばらに現れるから
「必要条件で絞る → 十分性を確認する」という型は、恒等式の数値代入、整数問題の絞り込み、微分での極値の判定にも共通します。
ところがそれぞれ別の単元にあるため、同じ型だと気づきにくい。1つの型として意識できると、どの単元でも答案の穴が埋まります。
【検算】3つの方法
1. 求めた図形上の点を条件に入れてみる
逆の確認そのものを、具体的な数値でやります。
【検算】アポロニウスの円上の :、 で ○
2. 条件を満たす点を作って、図形上にあるか見る
逆向きの検算です。媒介変数に具体的な値を入れて点を作ります。
【検算】 のときの中点 は 上 ○
3. 媒介変数の範囲から、端が入るか外れるかを調べる
境界の値を実際に入れて、条件が成り立つか確かめます。
【検算】 では接して交点が1つ。除外 ○
よくあるミス
ミス1:「逆に」を書かない
必要条件しか示していません。1行でよいので書きます。
ミス2:媒介変数の範囲を無視する
消した瞬間に情報が消えます。消す前に範囲を控えておきます。
ミス3:除外点を書き忘れる
「ただし を除く」まで書いて答案が完成します。
ミス4:等号の有無を間違える
「2点で交わる」なら接する場合は除く(不等号に等号を入れない)。
ミス5: と媒介変数の文字を混同する
動く点は 、動かす量は などと分けます。
ミス6:2乗して同値性が崩れることに気づかない
距離は0以上なので2乗しても同値です。ここは問題ありませんが、一般には注意が要ります。
練習問題
- 、 から等距離にある点の軌跡を求めなさい。
- 、 からの距離の比が の点の軌跡を求めなさい。
- 2の答えが正しいことを、円上の点 と で確かめなさい。
- Q が円 上を動くとき、 とQの中点の軌跡を求めなさい。
- 直線 が円 と2点で交わるときの、2交点の中点の軌跡を求めなさい。
- 5で のときの中点を実際に求めなさい。
- 5で が除かれる理由を説明しなさい。
解答
- より直線 。逆の確認: はどちらからも ○
- より(中心 、半径4)
- : で円上、 ○ :円上、 ○
- を代入して。除外点なし
- 中点は 、判別式から 。 の の部分
- より交点 。中点は。検算: 上 ○
- は に対応し、そのとき重解になって接する。2点で交わらないので除く
まとめ
- 型は①点を置く ②式にする ③整理 ④逆の確認 ⑤除外点
- ③までは必要条件。④で十分性を示して完成
- 媒介変数を消すと範囲の情報が消える——消す前に控える
- 「2点で交わる」なら判別式の条件が範囲になる
- 境界は実際に代入して入るか外れるか判定する
- 検算は図形上の点を条件に入れる/条件から点を作る/境界を調べる
軌跡は「条件を式に翻訳し、翻訳が双方向であることを確かめる」作業です。行きだけ示して帰りを示さないと論証にならない——この感覚は、数学のあらゆる場面で効きます。「逆に」の1行は、答案の飾りではなく半分です。
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