期待値は「平均」と訳されますが、ふつうの平均とは違います。違いは1点、確率で重みをつけて足すことです。
ここを外すと、賞金1000円・500円・0円のくじで「平均500円」と答えてしまう。実際は本数が違うので、まったく別の値になります。
結論:値 × 確率 をすべて足す
期待値 をすべて足したもの
確率が重みです。起こりやすい値ほど強く効く。
意味は「同じことを何度も繰り返したときの、1回あたりの平均」。1回だけでは、この値が出ないことのほうが普通です。
やってみる:さいころの目
1から6が、どれも の確率で出ます。
3.5です。さいころに3.5の目はありませんが、それでよい。何度も投げたときの1回あたりの平均を表しているからです。
【検算】確率の合計が1になっているか確かめます。
○ また最小1と最大6の間に入っているか。 ○
確率がそろっていないとき
10本のくじがある。1等(1000円)が1本、2等(500円)が2本、はずれ(0円)が7本。1本引くときの賞金の期待値は。
| 賞金 | 本数 | 確率 | 値×確率 |
|---|---|---|---|
| 1000円 | 1 | 100 | |
| 500円 | 2 | 100 | |
| 0円 | 7 | 0 |
200円です。
【検算】賞金の総額から計算し直します。
一致 ○ 「全部の賞金を、全部の本数で割る」と同じことをしています。
単純平均との違い
賞金の種類だけを平均すると
まったく違う値です。はずれが7本もあるという情報が消えているから。本数(確率)で重みをつけなければ意味がありません。
使いどころ:参加すべきかの判断
期待値が最も役に立つのは「やる価値があるか」を決める場面です。
| 参加料 | 期待値との差 | 判断 |
|---|---|---|
| 100円 | 有利 | |
| 200円 | 公平 | |
| 300円 | 不利 |
1回あたりの平均的な収支が、この差です。何度も繰り返すほど、この値に近づいていきます。
さいころ2個の和
さいころを2個投げたときの、出た目の和の期待値。
和は2から12まで。それぞれの確率は36通りのうち何通りかで決まります。
| 和 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 通り | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
値×通り数をすべて足すと
【検算1】通り数の合計が36になるか。
○
【検算2】和の期待値は、それぞれの期待値の和になります。
一致 ○ この性質は非常に強力で、分布を作らずに答えが出せます。
もう1つの見方:対称性
和の分布は7を中心に左右対称です(2と12が1通りずつ、3と11が2通りずつ…)。対称な分布の期待値は中心の値。だから7。
2乗の期待値は、期待値の2乗ではない
さいころ1個で、出た目の2乗の期待値を求めます。
一方、期待値の2乗は
別の値です。混同しないでください。
【検算】この2つの差が分散になります。
0以上になりました ○ 分散は必ず0以上なので、2乗の期待値のほうが必ず大きいのです。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 「平均」という同じ言葉で、中身が違うから
中1で習う平均は全部足して個数で割る。データの分析の平均も同じです。
ところが期待値は確率で重みをつけて足す。言葉が同じで中身が違うのに、両者を並べて比べる場面は別の科目・別の単元にまたがるため設けにくい。結果として単純平均で計算するミスが繰り返されます。
2. 確率の単元の最後に置かれ、時間が残りにくいから
場合の数から始まり、確率の基本、独立試行、条件付き確率と続いた終盤に位置します。
計算そのものはかけて足すだけで軽いため、公式1つ示して例題で終わりやすい。「なぜ確率で重みをつけるのか」「1回では出ない値になるのはなぜか」といった意味の部分に時間が配分されにくい構成です。
3. 「使いどころ」が数学の問題として出にくいから
期待値の本当の価値は意思決定——参加料と比べて有利か不利かの判断です。
しかし試験問題では値を求めるところまでで完結することが多く、判断に使う練習は演習の外に置かれやすい。そのため「求め方は分かるが何のための値か分からない」という状態になりがちです。
【検算】3つの方法
1. 確率の合計が1か
重みの合計は必ず1です。合わなければ、場合の数え落としがあります。
【検算】くじ: ○
2. 最小値と最大値の間にあるか
(最小の値)(最大の値)
重み付き平均なので、必ずこの範囲に入ります。
【検算】さいころ: ○ くじ: ○ 和: ○
3. 別の道筋で計算し直す
「総額 ÷ 総数」で計算する、分けて足す、対称性を使う——2通りで一致すれば安心です。
【検算】和の期待値:分布から 、分けて ○
よくあるミス
ミス1:確率の重みを忘れて単純平均する
くじの例で約333円としてしまう典型です。本数を無視しています。
ミス2:確率の合計が1になっていない
場合を数え落としているサインです。はずれを忘れやすい。
ミス3:「1回では出ない値」に納得できず計算をやり直す
3.5は正しい答えです。1回の結果ではなく平均を表しています。
ミス4:2乗の期待値と期待値の2乗を混同する
別物です。差が分散になります。
ミス5:参加料を引き忘れる
「収支の期待値」なら賞金の期待値 参加料です。
ミス6:期待値が同じなら同じゲームだと思う
散らばりが違います。期待値0でも、 と では別物です。
練習問題
- さいころを1個投げるとき、出た目の期待値を求めなさい。
- さいころを2個投げるとき、出た目の和の期待値を求めなさい。
- 10本のくじ(1000円1本、500円2本、0円7本)の賞金の期待値を求めなさい。
- 3のくじの参加料が300円のとき、収支の期待値を求めなさい。
- コインを2枚投げるとき、表の枚数の期待値を求めなさい。
- さいころを1個投げるとき、出た目の2乗の期待値を求めなさい。
- 6と1の答えから、さいころの目の分散を求めなさい。
解答
- (3.5)。検算: ○
- 7。検算: ○
- 200円
- 円(1回あたり平均100円の損)
- 表の枚数は0,1,2で確率は 。1。検算:1枚あたり を2枚分で ○
- (約15.17)
- (約2.92)。検算:0以上 ○
まとめ
- 期待値は値 × 確率 の総和。確率が重み
- 意味は繰り返したときの1回あたりの平均。1回では出ない値でよい
- 単純平均とは違う。本数・確率を必ず反映させる
- 使いどころは参加料と比べた有利・不利の判断
- 和の期待値は、期待値の和(分布を作らずに求められる)
- 2乗の期待値 期待値の2乗。差が分散
- 検算は確率の合計が1/最小と最大の間/別ルートで一致
期待値は数Bの確率変数と確率分布で主役になります。そこでは や といった性質が公式として整理されますが、やっていることはここと同じです。「値 × 確率 を足す」——この一言を持っておけば、記号が増えても迷いません。
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