因数分解で最も多い減点が、これです。共通因数のくくり忘れ。
を で止めてしまう。あるいは と、かっこの中にまだ因数が残ったまま答える。途中までは合っているのに×になる——非常にもったいないミスです。
防ぎ方は決まっています。「最初に共通因数、最後に確認」の2ステップです。
結論:共通因数は必ず最初にくくる
因数分解の手順は、順番が固定されています。
- 共通因数をくくり出す(最優先)
- 公式が使えるか見る(、 など)
- たすきがけ・和と積で考える
- かっこの中にまだ共通因数がないか確認(最後)
1と4が同じ作業なのがポイントです。最初に見て、最後にもう一度見る。
なぜ2回見るのか。途中の変形で新しい共通因数が現れることがあるからです。
なぜ最初にくくると楽なのか
を因数分解しなさい。
共通因数2を先にくくる場合:
中身が というきれいな形になり、公式がすぐ使えます。
くくらずに進めようとすると: のままでは、平方の差の形になっていません( は何かの2乗ではない)。公式が使えず、手が止まります。
共通因数を外すと、中身が扱いやすい形になる。これが最初にくくる理由です。
【検算】展開して戻します。
元の式に戻りました ○。因数分解の検算は展開する——これが唯一かつ確実な方法です。
「完全に」因数分解する
因数分解の答えはこれ以上分解できない形でなければなりません。途中で止めると減点されます。
| 式 | 途中で止めた答え | 正しい答え |
|---|---|---|
| × | ||
| × | ||
| × | ||
| × |
4行目に注目してください。 はまだ中に という共通因数が残っています。数だけでなく文字も共通因数です。
【検算】 ○。
3行目の が要注意
なので、まず
ここで止めてはいけません。 はまだ平方の差です。
はこれ以上分解できません(実数の範囲では)。和のほうは分解できない——これも覚えておくべき事実です。
【検算】展開します。、 ○。
共通因数の見つけ方
「共通因数がある」ことに気づくのが第一関門です。各項を分解して並べるのが確実な方法です。
の共通因数を求めなさい。
両方に共通するものを拾います。
- 数 … 3(2は片方だけ、3は両方にある)
- … 両方に2個ずつ以上あるので
- … 両方に1個以上あるので
共通因数は。くくり出すと
【検算】展開します。、 ○。
係数は最大公約数、文字は少ないほうの個数
規則としてまとめると
- 数の部分 … 各項の係数の最大公約数
- 文字の部分 … 各項に含まれる個数の少ないほう(指数の小さいほう)
と の最大公約数は3。 と なら少ないほうの 。これで機械的に出せます。
かっこが共通因数になることもある
気づきにくいのがこの形です。
がひとかたまりの共通因数です。
もっと実戦的な例
でくくると一気に因数分解できます。かたまりを1文字だと思うのがコツです。
【検算】展開します。。元の式も ○。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 「くくり忘れ」がミスとして軽く扱われやすいから
と書いた答案はほぼ正解に見えます。方針も計算も合っていて、最後の一手だけ足りない。
だから「うっかり」として処理されやすい。ところが実際には、「完全に因数分解する」という要求そのものを理解していないことが原因である場合が多いのです。
原因が違えば対策も違います。うっかりなら注意で減りますが、要求の理解不足は何度でも同じ形で再発します。
2. 「これ以上分解できない」の判定基準が示されにくいから
どこまで分解すれば終わりなのか。基準は「各因数にこれ以上共通因数がなく、公式も使えない状態」ですが、これを毎回確認する手順として明示される場面は少ない。
とくに は分解できないが は分解できるという非対称性は、意識しないと見落とします。
「マイナスなら分解できる、プラスならできない」——平方の差についてはこの一言で足ります。
3. 手順の順番が結果に出ないから
共通因数を先にくくっても、後でくくっても、正しく最後までやれば答えは同じです。
だから「最初にくくる」という手順の価値が、答案の上では見えません。実際には、先にくくったほうが途中で詰まる確率が大幅に下がるのですが、その差は結果には現れない。
手順の価値は時間とミス率に現れます。最初にくくると決めておくだけで、両方が改善します。
【検算】展開して戻す
因数分解の検算は展開する——これ一択です。逆の操作なので、必ず元に戻ります。
| 因数分解した式 | 展開すると | 元の式と |
|---|---|---|
| 一致 ○ | ||
| 一致 ○ | ||
| 一致 ○ | ||
| 一致 ○ |
もう1つ、完全性のチェックを必ずしてください。
- 各かっこの中に共通因数が残っていないか
- 各かっこが平方の差になっていないか( の形)
この2つを通れば完成です。
数値代入も有効です。 を入れて、因数分解の前後で値が一致するか見ます。 は使えません(多くの式で0や特別な値になり、間違いを検出できないことがあります)。
よくあるミス
ミス1:共通因数をくくって満足する
で止めるミス。中身が公式で分解できないか必ず見ます。
ミス2:文字の共通因数を見落とす
の共通因数は であって、2だけではありません。数と文字の両方を見ます。
ミス3:共通因数の指数を大きいほうにする
と の共通因数は(少ないほう)です。 では の項から割り切れません。
ミス4: を分解しようとする
和の形は実数の範囲で分解できません。 だけが分解できます。
ミス5:かっこのかたまりに気づかない
は でくくれます。同じかっこが2回出てきたら、共通因数を疑ってください。
練習問題
- を因数分解しなさい。
- を因数分解しなさい。
- を因数分解しなさい。
- を因数分解しなさい。
- を因数分解しなさい。
- を因数分解しなさい。
解答
- 共通因数3をくくって 。検算:展開すると ○
- 共通因数5をくくって 。検算: ○
- 共通因数 をくくって 。 です
- 係数の最大公約数4、文字は と が1個ずつ。。検算:、 ○
- が共通因数。
- 。さらに が分解できるので。 は分解できません
まとめ
- 因数分解は共通因数から始めて、共通因数の確認で終わる
- 共通因数を外すと中身が公式の使える形になる
- 共通因数は係数の最大公約数と文字の少ないほうの個数
- かっこのかたまりも共通因数になる。同じかっこが2回出たら疑う
- 平方の差は分解できるが、平方の和はできない
- 検算は展開して元に戻すこと。加えて完全性の2点チェック
因数分解は、中3の二次方程式( の形にして因数分解で解く)、高校の分数式の約分、極限計算での不定形の解消まで、ずっと使い続ける基本操作です。とくに約分の場面では、完全に因数分解できていないと約分すべき因数が見えません。「最初と最後に共通因数」——この習慣は、そのまま先の学年での正確さになります。
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