「マイナスとマイナスをかけるとプラスになる」——中1で必ず習うルールですが、なぜそうなるのかを説明された記憶がないという人がほとんどです。多くの教科書は「そう決まっている」で通り過ぎます。
ここでは、暗記に頼らずに納得するための説明を3つ用意しました。とくに3つ目が数学としての本当の理由です。
結論:かけ算のルールを壊さないために、そう決めるしかない
先に答えを言います。「マイナス×マイナス=プラス」は、後から人間が便利だから決めたルールではありません。これまで使ってきた計算の法則(分配法則)を、負の数まで広げても壊れないようにすると、その値以外にはあり得なくなるのです。
順を追って見ていきます。
説明1:数の並びから見つける
まず を、かける数を1ずつ減らしながら並べてみます。
| 式 | 答え | 前の答えとの差 |
|---|---|---|
| — | ||
かける数が1減るたびに、答えはちょうど2ずつ増えています。この増え方は上の3行で決まっているものなので、下に延長すれば負の数どうしのかけ算の答えは自動的に決まります。0を越えたところで急に規則が変わるとしたら、そちらのほうが不自然です。
これで「そうなりそうだ」という感覚はつかめます。ただしこれは規則が続くと仮定した話であって、証明ではありません。
説明2:向きが反対になる、と考える
は「数直線の上で反対側にうつす」操作だと考えられます。
- に をかけると 。0をはさんで反対側へ移った
- その にもう一度 をかけると、また反対側へ移って に戻る
反対の反対はもとに戻る。だから です。
身近な例で言えば、「借金が減る」のがこれにあたります。毎月2万円ずつ借金が増えていく(= 万円ずつ)状況で、3か月前(= か月)の残高を考えると、いまより 万円だけ多かったことになります。「減る」を「過去にさかのぼる」で打ち消すと、増える方向に転じるわけです。
説明3:分配法則から導く(これが本当の理由)
ここが本題です。小学校から使ってきた分配法則
を負の数まで使えるようにしたい。この一点だけを認めると、 の値はひとつに決まってしまいます。
まず、 であることを使います。
いっぽう、同じ式に分配法則を使うと
この2つは同じものを計算しているので、等しくなければいけません。
ここで はすでに分かっています(正の数×負の数)。代入すると
したがって は、 に足して0になる数、つまり 以外にありえません。
これが「マイナス×マイナス=プラス」の正体です。誰かが決めたのではなく、分配法則を守ろうとするとそれしか選べない。もし だと決めたら、上の計算が となって、分配法則が負の数では成り立たなくなってしまいます。
【検算】文字でも同じことを確かめる
具体的な数だけでなく、一般の正の数 でも同じ手順が通ることを確かめておきます。
より
分配法則を使って
だから
が何であっても成り立ちました。特定の数でたまたま合っただけではないことが確認できます。
よくあるミス
ミス1:たし算にも同じルールを持ち込む
を としてしまう間違いが非常に多いです。「マイナス×マイナス=プラス」はかけ算とわり算だけのルールで、たし算には関係ありません。
負の方向に2進んで、さらに3進めば、当然もっと負の方向へ行きます。
ミス2:かっこのつけ忘れ
と は別物です。
指数はすぐ左のものだけにかかります。 では だけが2乗され、マイナスは最後に残ります。
ミス3:3つ以上かけたときの符号を数え間違える
負の数を偶数個かければ正、奇数個かければ負になります。
2つずつペアにして消していけば確認できます。
練習問題
- を計算しなさい。
- と をそれぞれ計算しなさい。
- を計算しなさい。
- と をそれぞれ求めなさい。
解答
- (負の数が2つ=偶数個なので正)
- 、
- (負の数が3つ=奇数個なので負。、)
- 、(指数が偶数なら1、奇数なら )
まとめ
- 「マイナス×マイナス=プラス」は決まりごとではなく、分配法則を守るための必然
- を使って両側から計算すれば、答えが1つに決まることを自分で確かめられる
- このルールが効くのはかけ算・わり算だけ。たし算・ひき算には持ち込まない
- 負の数が偶数個なら正、奇数個なら負
中1のこの単元でつまずくと、中2の式の計算、中3の因数分解、高校の全範囲まで影響が残ります。逆にここを「なぜ」まで理解しておくと、後の単元で符号を落とすミスが目に見えて減ります。
この単元でつまずいたままなら
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