。ベクトルの内積の定義です。
計算はできる。でも「で、これは何を表しているの?」と聞かれると答えられない——数Cのベクトルでいちばん多い状態です。
内積が表しているのは「片方が、もう片方の方向にどれだけ効いているか」。これ一つです。
結論:内積は「影の長さ×長さ」
に光を真上から当てて、 の方向にできる影の長さを考えます。この影の長さが です。
内積は、その影の長さに をかけたもの。
つまり「 の方向に がどれだけ寄与しているか」を、 の長さで重みづけした量です。
だから次のことが一目で分かります。
| 2つのベクトルの関係 | 内積 | |
|---|---|---|
| 同じ向き() | 最大。 | |
| 鋭角() | 正 | 正 |
| 垂直() | 0 | |
| 鈍角() | 負 | 負 |
| 逆向き() | 最小。 |
「内積が0=垂直」は暗記事項ではありません。影が0になる(真横を向いている)から0なのです。
成分での式と定義がつながる理由
もう一つの式
が定義と同じものだと確かめます。使うのは余弦定理です。
、 として、この2つのベクトルが作る三角形に余弦定理を当てます。
左辺を成分で展開すると
、 を使ってまとめると
これを余弦定理の右辺と比べると
2つの式が同じものだと示せました。内積は余弦定理を書き直したものだったのです。
【検算】具体的なベクトルで両方の式を計算する
、 で確かめます。
成分の式:
定義の式:、。
なす角は より 。
一致しました。
垂直の例も確かめます。、。
成分の計算だけで0。実際に角度を測るとちょうど90°でした。
内積で何ができるか
1. なす角を求める
定義式を について解いただけです。成分から角度が出せるのは内積の最大の実用性です。
2. 垂直条件
。図形問題で垂直を示すとき、内積を計算して0を示すのが最短です。
3. 長さを内積で書く
自分自身との内積は なので 。この式のおかげで、長さの計算を内積の計算に持ち込めます。
たとえば は
と、普通の展開と同じ形で処理できます。
【検算】、 なら 、。
公式では 。一致します。
よくあるミス
ミス1:内積をベクトルだと思う
内積の結果は数(スカラー)です。ベクトルではありません。だから「内積」は別名「スカラー積」と呼ばれます。
であって、 ではありません。
ミス2: から または と結論する
数の掛け算なら または ですが、内積では成り立ちません。
上の と がその例です。どちらも零ベクトルでないのに内積は0。垂直だからです。
ミス3:割り算をしようとする
から は言えません。ベクトルに割り算は定義されていません。
【検算】、、 とすると、どちらの内積も2ですが です。
練習問題
- 、 の内積を求めなさい。
- 、 が垂直になる を求めなさい。
- 、、なす角が のとき内積を求めなさい。
- 問題3の条件で を求めなさい。
- 、 のなす角を求めなさい。
解答
- より
- 、よって
- 、よって
まとめ
- 内積は「片方の方向への影の長さ × もう片方の長さ」
- だから垂直なら影が0で内積0。暗記ではなく必然
- 成分の式 は、余弦定理を書き直したもの
- 内積の結果は数であってベクトルではない
- により、長さの計算を展開で処理できる
- 内積に割り算はない。約分できない
内積は数Cのベクトルだけの道具ではありません。空間図形の垂直判定、平面の方程式、さらに大学の線形代数、機械学習の類似度計算まで、同じ「方向の一致度」という意味で使われ続けます。「影の長さ」という一つのイメージを持っておけば、どの場面でも意味を復元できます。
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