二次方程式の文章題で、解が2つ出た。両方とも答えていいのか、片方だけなのか。
ここで迷って点を落とす人が非常に多い。しかも答案に「不適」と書かないだけで減点されることもあります。この処理を解の吟味といい、手順は完全に決まっています。
結論:現実の条件に合うかを1つずつ確認する
二次方程式は数学的には2つの解を持ちます。しかし文章題では、現実の条件を満たさない解が混ざることがあります。
手順はこうです。
- 方程式を解いてすべての解を出す
- 解ごとに問題の条件を満たすか確認する
- 満たさないものは「問題に適さない」と明記して捨てる
- 残ったものを答える
ステップ3を書かないと減点されます。捨てたことを答案に残すのが作法です。
捨てる理由は3種類しかない
チェックすべき条件は、実はほぼ3つに絞れます。
| 条件 | 捨てる場合 | 例 |
|---|---|---|
| 正でなければならない | 0以下の解 | 長さ・人数・個数・値段 |
| 整数でなければならない | 分数・小数の解 | 人数・個数・回数 |
| 範囲がある | 範囲外の解 | 「もとの長さより短い」など |
問題文が何を求めているかを見れば、どの条件かが決まります。「長さ」なら正、「人数」なら正の整数。
型1:長さは正でなければならない
縦が横より3cm長い長方形がある。面積が40cm²のとき、横の長さを求めなさい。
横を cmとすると縦は cm。面積の式は
解は。
吟味します。 は長さなので正でなければなりません。
- … 長さが負になるので問題に適さない
- … 適する
答えは横が5cmです。
【検算】横5cm、縦8cm。面積は ○。差は ○。両方の条件を満たしています。
答案の書き方:「 より は問題に適さない。よって 」——この一文を必ず書きます。
型2:整数でなければならない
ある正の整数と、それより3大きい整数の積が54である。もとの整数を求めなさい。
解は 。
「正の整数」という条件があるので、 は不適。答えは6です。
【検算】 ○
整数でない解が出る場合
解が分数になったときも、問題が整数を求めているなら不適です。
ただしこの場合、立式を疑うほうが先です。整数を求める問題で分数解しか出ないなら、式が間違っている可能性が高い。
「両方とも不適になったら、立式を見直す」——これは重要な判断です。
型3:範囲の条件がある
縦12cm、横16cmの長方形の紙がある。四すみから1辺 cmの正方形を切り取って、ふたのない箱を作る。底面積が cm²になるときの を求めなさい。
底面は縦 、横 の長方形です。
展開して整理します。
4で割って
解は 。
吟味します。切り取る正方形の1辺には範囲があります。
- (長さだから)
- つまり (縦が残らないといけない)
したがって。
- … 範囲内。適する
- … 範囲外( を超える)。不適
答えは です。
【検算】 なら底面は cmと cm。面積は ○
だと: cm。長さが負になり、そもそも図が描けません ○(不適だと確認できました)
この型では、範囲を先に書き出しておくのが確実です。立式のときに一緒に書いておけば、吟味を忘れません。
両方が答えになる場合もある
すべての解が不適とは限りません。両方が条件を満たすこともあります。
連続する2つの正の整数の積が72である。2つの整数を求めなさい。
。正の整数という条件から 。答えは8と9です。
ここでは片方だけですが、問題によっては両方残ります。
ある数を2乗すると、その数の4倍より5大きくなる。ある数を求めなさい。
。「ある数」に正という条件はありません。
【検算】 で ○。 で ○。両方とも正しいので、答えは5と 。
「1つだけが答え」と思い込まないでください。条件がなければ両方が答えです。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 吟味が「計算の後の作業」に見えるから
方程式を解いた時点で数学的な作業は終わったように感じます。吟味はおまけのように見える。
ところが吟味は数学の一部です。「方程式の解」と「問題の答え」は別のもので、翻訳し直す作業が必要です。
この違いが伝わらないと、吟味を書かずに答えだけ書くことになります。
2. 中1・中2の文章題では吟味が不要だったから
一次方程式の文章題では、解が1つしか出ません。だから吟味の必要が構造上ありませんでした。
二次方程式で初めて「解が複数出て、選ぶ必要がある」という状況になります。それまでの2年間で身についた習慣(解いたら答え)が、ここで通用しなくなる——習慣の切り替えが必要な場面です。
3. 「不適」と書く必要性が結果に現れないから
答えの数値は、書いても書かなくても同じです。「不適」の一文は、答案の記述としてのみ意味を持ちます。
したがって自己採点では減点に気づけません。数値が合っていれば丸をつけてしまう。実際の採点では減点されるのに、その事実が本人に伝わらない構造になっています。
対策は「不適」を書くと決めてしまうことです。捨てた解があるなら必ず1行書く——習慣にすれば忘れません。
【検算】3つの確認
1. すべての解を問題文に戻す
方程式ではなく、問題文の日本語に戻します。
| 問題 | 解 | 吟味 |
|---|---|---|
| 長方形の横(面積40) | は長さが負で不適 | |
| 箱の切り取り(底面60) | は で不適 | |
| ある数() | 両方とも適する |
2. 範囲を先に書いておく
立式の段階で のように書いておけば、吟味が機械的に済みます。
とくに「切り取る」「削る」タイプの問題は、必ず上限があります。
3. 両方不適なら立式を疑う
すべての解が不適になったら、答えが存在しないことになります。文章題でそれは通常ありえません。
立式か計算のどこかが間違っていると判断して、最初から見直してください。
よくあるミス
ミス1:吟味せずに両方答える
長さに負の解を含めてしまうミス。必ず1つずつ確認します。
ミス2:「不適」と書かずに捨てる
捨てたことを答案に書きます。「 より は問題に適さない」の一文が必要です。
ミス3:上限の条件を見落とす
「切り取る」問題では のような上限があります。正であることだけ見ていると見落とします。
ミス4:条件がないのに片方を捨てる
「ある数」のように制限がない場合は両方が答えです。反射的に負の解を捨てないでください。
ミス5:答えるものを間違える
は横の長さでも、聞かれているのが縦なら を答えます。「何を と置いたか」を確認してから答えてください。
練習問題
- ある正の数と、それより5大きい数の積が36である。ある数を求めなさい。
- 縦が横より4cm短い長方形の面積が96cm²である。横の長さを求めなさい。
- ある数を2乗すると、その数の3倍より10大きい。ある数をすべて求めなさい。
- 縦10cm、横14cmの紙の四すみから1辺 cmの正方形を切り取る。 のとりうる範囲を答えなさい。
- 4で、底面積が48cm²になるときの を求めなさい。
- 連続する2つの正の整数の積が110である。2つの整数を求めなさい。
解答
- より 、。正の数という条件から は不適。答えは4。検算: ○
- 横を として 。、、。 は不適。横は12cm。検算: ○
- より 、 の両方。検算: ○、 ○。条件がないので両方が答え
- かつ より。短いほうの辺で決まります
- 。、、。判別式は で平方数でないので公式を使い 。 なので または 。範囲 から 。検算:、、積は約48 ○
- より 、。正の整数なので 。答えは10と11。検算: ○
まとめ
- 方程式の解と問題の答えは別物。吟味という翻訳作業が必要
- 捨てる理由は正であること・整数であること・範囲の3つ
- 「不適」と答案に書く。書かないと減点される
- 「切り取る」型は上限がある。立式時に範囲を書いておく
- 条件がなければ両方が答え。反射的に負を捨てない
- すべて不適なら立式を疑う
- 検算は問題文の日本語に戻す
「数学的な解のうち、現実の条件を満たすものだけを取る」という作業は、高校では定義域・値域の確認として標準になります。三角方程式で角の範囲を確認する、対数方程式で真数条件を確認する、微分で増減表の範囲を切る——どれも同じ吟味です。中3のここで「解いたら終わりではない」という習慣を作っておくことが、その先すべてに効きます。
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