計算はできるのに、文章題になると手が止まる。式さえ立てば解けるのに、その式が作れない——中1で最も多い相談がこれです。
立式ができない原因は、国語力でも読解力でもありません。手順を持っていないだけです。ここでは、どんな文章題にも同じ順で使える4ステップを示します。
結論:立式は「等しいものを2通りで書く」こと
方程式とは何か。同じ1つの量を、2通りの言い方で書いて で結んだものです。
だから立式の作業は、次の2つに分かれます。
- 何が等しいのかを文章から見つける
- その量を2通りの式で書く
「等しいもの探し」が本体で、式を書くのはその結果です。いきなり式を書こうとするから止まるのです。
立式の4ステップ
順番を固定します。どんな問題でもこの順にやれば、考える場所が1か所ずつになります。
| 手順 | やること |
|---|---|
| 1 | 求めるものを と置き、単位まで書く |
| 2 | 文章に出てくる量を、すべて の式で表す |
| 3 | 等しくなる量を1つ見つける |
| 4 | その量を2通りに書いて で結ぶ |
止まりやすいのはステップ2です。ここを飛ばして3へ行こうとすると、必ず行き詰まります。
実例1:代金の問題
1本80円の鉛筆を何本かと、150円のノートを1冊買ったら、代金は710円だった。鉛筆は何本買ったか。
ステップ1:鉛筆の本数を 本とする。
ステップ2:文中の量を で書きます。
- 鉛筆の代金 … 円
- ノートの代金 … 円
- 合計の代金 … 円
ステップ3:等しい量は「合計の代金」。
ステップ4:合計の代金を2通りで書きます。
あとは解くだけです。、。
【検算】。問題文の710円と一致しました。
実例2:過不足の問題
何人かの子どもにあめを配る。1人4個ずつ配ると12個余り、1人6個ずつ配ると8個足りない。子どもは何人か。
この型は「等しいもの」が何なのか分かりにくいため、多くの人が止まります。
ステップ1:子どもの人数を 人とする。
ステップ2: で書けるものを探します。配り方は2通りありますが、あめの総数は1つしかない。
- 4個ずつ配ったとき … 配った分 個、余り12個。総数は 個
- 6個ずつ配ったとき … 配りたい分 個、8個足りない。総数は 個
ステップ3:等しい量は「あめの総数」。配り方を変えても、あめの個数そのものは変わりません。
ステップ4:
解くと 、。
【検算】総数を両方の式で計算します。
どちらも52個。10人に4個ずつなら40個配って12個余り、6個ずつなら60個必要で8個足りない。問題文と完全に合います。
「余る」「足りない」の符号
ここだけ間違えやすいので確認します。
- 余る … 配った分より総数が多い。足す()
- 足りない … 配りたい分より総数が少ない。引く()
迷ったら、小さい数で試すのが確実です。子どもが2人、あめが5個なら、1人2個ずつ配ると1個余る。総数5は 。余りは足すと確認できました。
実例3:速さの問題
家から駅まで、分速60mで歩くと、分速80mで歩くより5分多くかかる。家から駅までの道のりは何mか。
ステップ1:道のりを mとする。
ステップ2:時間を で書きます。時間=道のり÷速さ。
- 分速60mのときの時間 … 分
- 分速80mのときの時間 … 分
ステップ3:等しい量は「2つの時間の差が5分」。
ステップ4:遅いほうが5分多いので
両辺に240をかけて 、。
【検算】 分、 分。差は5分。合っています。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 教科書の構成が「解き方」に重心を置いているから
一次方程式の単元は、等式の性質 → 移項 → かっこや分数を含む式 → 文章題という順で進むのが通例です。分量として大きいのは前半の解法部分で、文章題は単元の終盤に置かれます。
この構成上、立式そのものを扱う時間は、解法の練習に比べて後ろに寄ることになります。しかも文章題は問題ごとに設定が違うため、個別の例題として扱われやすく、「どの問題にも共通する立式手順」という形にまとまりにくいのです。
2. 立式は答え合わせで検出されにくいから
文章題を間違えたとき、答案に現れるのは最終的な数値の誤りです。原因が「立式の誤り」なのか「計算ミス」なのかは、式を見ないと分かりません。
ところが自己採点では、多くの場合答えの数字だけを見て丸つけをします。この構造上、立式でつまずいているという事実そのものが検出されにくいのです。
3. 小学校では文字を使わずに解けてしまうから
過不足算も速さの問題も、小学校では線分図や逆算で解く方法を学びます。中1で同じ問題が方程式として再登場しますが、すでに別の解き方を知っているため、わざわざ立式する動機が生まれにくい。
しかし図で解く方法は、条件が増えると急に破綻します。方程式の強みは、複雑になっても手順が変わらないことです。この差がはっきりするのは中2の連立方程式に入ってからなので、中1の時点では利点が見えにくいという構成になっています。
だからこそ、解けた問題でもあえて方程式で解き直す——この練習が中1では効きます。
【検算】立式が正しいかを確かめる2つの方法
方法1:出た答えを問題文に戻す
方程式ではなく、問題文の日本語に戻すのが重要です。方程式に代入しても、その方程式自体が間違っていたら意味がありません。
実例1なら「鉛筆7本とノート1冊で710円か?」と問題文の言葉で確かめます。。合っています。
方法2:単位をそろえて確認する
立式の誤りは、単位を書くと高い確率で見つかります。
左辺は「m ÷ (m/分)」で分、右辺も分。そろっています。
もし のように書いてしまうと、左辺の単位は「m×(m/分)」で意味をなさない。単位が合わない式は、必ず間違いです。
| 式 | 左辺の単位 | 右辺の単位 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 円 | 円 | ○ | |
| 個 | 個 | ○ | |
| 分 | 分 | ○ |
よくあるミス
ミス1:求めるものではないほうを と置く
置くこと自体は間違いではありません。ただし最後に求めるものへ戻すのを忘れると失点します。
「 は何か」を必ず紙に書く。これだけで防げます。
ミス2:単位をそろえずに式を作る
時間が「分」と「時間」で混ざる、道のりが「m」と「km」で混ざる。立式の前に単位をそろえます。
速さの問題では、問題文の速さの単位に合わせるのが原則です。分速なら時間は分で統一します。
ミス3:「〜より5分多い」の向きを逆にする
遅いほうが時間は長い。大きいほうから小さいほうを引くと符号を間違えません。
迷ったら両方書いて、答えが正になるほうを採用してください。時間や個数が負になったら、その式は逆向きです。
ミス4:等しいものを探さずに、いきなり式を書く
これが根本原因です。ステップ2で量をすべて の式にするまで、 は書かないと決めてください。
書き出しさえすれば、等しいものはたいてい自然に見えてきます。
練習問題
- 1個120円のりんごを何個かと、200円のかごを1つ買って1160円だった。りんごは何個か。
- ある数を4倍して7を引くと、その数に11を足した数に等しい。ある数を求めなさい。
- 子どもにあめを配る。1人3個ずつで7個余り、1人5個ずつで5個足りない。子どもは何人か。
- 家から学校まで分速50mで歩くと、分速75mで歩くより4分多くかかる。道のりを求めなさい。
- 連続する3つの整数の和が48である。3つの整数を求めなさい。
解答
- りんごを 個として 。、 より8個。検算: ○
- ある数を として 。、。検算:、 ○
- 。、 より6人。検算:総数は 、。どちらも25個 ○
- 。両辺に150をかけて 、 より600m。検算: 分、 分、差は4分 ○
- 真ん中を として 。、 より15、16、17。検算: ○
まとめ
- 方程式とは同じ量を2通りに書いて で結んだもの
- 立式の本体は「等しいもの探し」。式を書くのはその結果
- 手順は① を置く ②量をすべて の式にする ③等しい量を見つける ④2通りで書く
- 止まる原因はほぼステップ2を飛ばしたこと
- 検算は問題文の日本語に戻す。方程式に代入するだけでは不十分
- 単位が合わない式は必ず間違い。単位は最強のチェック機能
この4ステップは、中2の連立方程式でも中3の二次方程式でもそのまま使えます。変わるのは置く文字が2つになることや、出てくる式が二次になることだけで、「等しいものを2通りで書く」という骨組みは一度も変わりません。中1でこの手順を身体に入れておくことが、そのまま先の学年の負担を減らします。
この単元でつまずいたままなら
「なぜそうなるのか」が抜けたまま先へ進むと、後の単元で必ず戻ってくることになります。オンライン数学専門塾「数強塾」は、公式の暗記ではなく理由から説明する完全1対1の個別指導です。プロ講師のみ(学生アルバイトはいません)、中高一貫校の進度にも対応しています。
ご相談は無料です。入会の強制はありません。

