はいくつか。 にしたくなりますが、これは誤りです。
なぜ誤りなのか。そして正しい答えは何なのか。この2つをはっきりさせると、√だけでなく指数・分数・三角関数まで共通する原理が見えてきます。
結論:2乗すると余計な項が出る
いちばん確実な確かめ方は2乗することです。
一方
の差があります。だから 。
この はどこから来たのか。 の の項です。
2乗すると必ず現れるこの項が、和を壊しています。
【検算】数値で確かめます。
| 式 | おおよその値 |
|---|---|
| 1.41421 | |
| 1.73205 | |
| 3.14626 | |
| 2.23607 |
3.15と2.24。まったく違います。1回この計算をすれば、二度と間違えません。
正しい答えは何か
では を1つの√で書けるでしょうか。書けます。
2乗が なのだから
【検算】 なので 。その平方根は約 。一致しました ○
ただしこの形は元より複雑です。だから通常は のまま置いておきます。
「これ以上簡単にならない」も答えの一つです。同類項をまとめられないときと同じ考え方です。
足せるのはどんなときか
√どうしが足せるのは中身が同じときだけです。
これは でくくり出しているだけ——同類項をまとめるのとまったく同じ操作です。
を だと思えば 。特別なことは何もしていません。
| 式 | まとめられるか | 結果 |
|---|---|---|
| ○ | ||
| × | そのまま | |
| ○(簡単にすれば) | ||
| ○(簡単にすれば) |
3・4行目が重要です。見た目は中身が違いますが、簡単にすると同じ になります。まず簡単にしてから判断してください。
【検算】4行目を数値で確認します。、。和は約 。 ○
これは√だけの話ではない
ここが本記事のいちばん大事な部分です。「かっこの中を分けて計算できるか」は、記号ごとに違います。
| 操作 | 分けられるか | 確認 |
|---|---|---|
| ○ | ||
| × | ||
| × | ||
| × |
分けられるのは、かけ算(分配法則)だけです。2乗も、√も、逆数も、分けられません。
理由は共通しています。これらの操作は「もとの大きさに比例していない」から。
- 2倍の数を2乗すると4倍になる(2倍ではない)
- 4倍の数の√は2倍になる(4倍ではない)
【検算】、。中身が4倍で、答えは2倍 ○。比例していません。
比例している操作だけが、足し算を保ちます。これは高校の数学(線形性)や物理でも繰り返し出てくる、非常に重要な区別です。
数直線で見る
もう1つ、視覚的な理解の仕方があります。
は「2乗すると2になる長さ」——1辺1の正方形の対角線の長さです。 も同じように決まる、別の長さ。
2つの長さを足すのは、単に線分をつなげることです。約1.414と約1.732をつなげれば約3.146。
一方 は「2乗すると5になる長さ」で約2.236。そもそも別の長さです。
長さを足しても、2乗した値は足されない。これが誤解の正体です。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 「なぜダメか」を扱うには誤った式を提示する必要があるから
は間違った式です。授業は正しい変形を積み上げる形で進むので、誤った式を主題にする場面は構成上作りにくい。
結果として「√は足し算では分けられない」という禁止事項として伝わり、理由は伝わらないことになります。
理由が分からない禁止事項は、忘れると復元できません。だから数値で1回確かめておく価値があります。
2. 分配法則が「当たり前」になりすぎているから
は、小学校から使ってきた計算です。あまりに当たり前なので、これが特別な性質だと意識しません。
すると他の操作でも同じことができると無意識に期待してしまう。 を にしたくなるのは、この期待から来ています。
分配できるのはかけ算だけ——この限定を明示的に意識しておくことが対策になります。
3. 「これ以上簡単にできない」が答えだと納得しにくいから
多くの問題では、計算すると1つの数や短い式になります。ところが はそのままが答え。
「まだ何かできるはず」という感覚が、誤った変形を誘発します。
同類項がまとめられないときと同じだと理解してください。 がそのままなのと、まったく同じ状況です。
【検算】3つの方法
1. 数値で比べる
最も速く、最も確実です。覚えておくべき近似値は3つだけ。
。。違う ○
2. 2乗して比べる
| 式 | 2乗すると |
|---|---|
2乗した値が違えば、元の値も違います。(どちらも正の数なので)
3. 極端な例で試す
もし が正しいなら、どんな数でも成り立つはずです。
で試すと、左辺は 、右辺は 。合いません ○
簡単な数で1回試す——これが公式の真偽を判定する最速の方法です。
よくあるミス
ミス1: とする
成り立ちません。成り立つのは か のときだけです。
ミス2:簡単にする前に「足せない」と判断する
は、 と直せば足せます。まず簡単にしてから判断してください。
ミス3:かけ算でも分けられないと思う
逆方向のミスです。かけ算とわり算は分けられます。
これは正しい変形です。【検算】、 ○
ミス4: で を忘れる
の真ん中の項です。。
練習問題
- と を、それぞれ小数第2位まで求めて比べなさい。
- を展開しなさい。
- を計算しなさい。
- を計算しなさい。
- と を比べなさい。
- を計算しなさい。
解答
- 3.14、2.24。等しくありません
- 。 を忘れないこと
- なので 。検算:、 ○
- 6。かけ算は分けられます
- 左は 、右は 。等しくありません。最も簡単な反例です
- 平方の差の公式で 3。√が消えました
まとめ
- 。2乗すると の差が出る
- 正しくは 。ただし元のままが簡単
- 足せるのは中身が同じときだけ。同類項をまとめるのと同じ
- まず簡単にしてから足せるか判断する
- 分けられるのはかけ算・わり算だけ。2乗も√も逆数も分けられない
- 理由はこれらの操作が比例していないから
- 検算は数値で比べる/2乗して比べる/簡単な数で試す
「どの操作が分配できて、どれができないか」という区別は、高校で線形性という名前で正面から扱われます。微分は分配できる()、積分もできる、しかし2乗も対数も三角関数もできない——この区別ができるかどうかで、式変形の正確さが決まります。中3の は、その最初の練習です。
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