流水算は覚えることが2つだけです。
下りの速さ =(静水時の速さ)+(流れの速さ)
上りの速さ =(静水時の速さ)-(流れの速さ)
あとは和差算——習ったことのある形に戻ります。
結論:和と差から2つを求める
下りと上りが分かれば、和と差が作れます。
静水時の速さ =(下り + 上り)÷ 2
流れの速さ =(下り - 上り)÷ 2
下りは流れのぶん速く、上りは流れのぶん遅くなる。だから足して2で割れば真ん中——それが静水時の速さです。
やってみる1:時間から速さを求める
42kmの川を、船が下るのに3時間、上るのに7時間かかりました。静水時の船の速さと、川の流れの速さを求めなさい。
まず下りと上りの速さ
下りは時速14km、上りは時速6kmです。
和と差で2つに分ける
静水時は時速10km、流れは時速4kmです。
【検算1】2つを足し引きして戻します。
下りと上りに一致 ○
【検算2】時間に戻します。
問題の条件どおり ○
【検算3】大小関係を確認します。
上り6 < 静水10 < 下り14
静水時の速さは必ず上りと下りの間にあります ○
なぜ「足して2で割る」でよいのか
下りと上りを並べます。
| 速さ | |
|---|---|
| 下り | 静水 + 流れ |
| 上り | 静水 - 流れ |
足すと流れが消えます。
下り + 上り = 静水 × 2
引くと静水が消えます。
下り - 上り = 流れ × 2
だからどちらも2で割ればよい。これは和差算そのものです。
【検算】 ○、 ○
やってみる2:往復の平均の速さ
静水時に時速10kmの船が、流れが時速4kmの川で42kmを往復します。往復の平均の速さは時速何kmですか。
時速10kmと答えてはいけません。
時間を出してから割る
合計時間は 時間。道のりの合計は
時速8.4kmです。
【検算1】 ○
【検算2】静水時の10より遅い——なぜでしょうか。
遅い上りに、長い時間がかかるからです。7時間は上り、3時間だけが下り。遅いほうの時間が長いので、平均は下に引っ張られます ○
【検算3】単純平均 とは一致しません。時間が違うので、速さをそのまま平均してはいけません ○
やってみる3:流れが速くなると往復はどうなるか
同じ船・同じ42kmで、流れが時速6kmになりました。往復の時間はどう変わりますか。
流れが時速4kmのときは10時間でした。13.125時間に増えています。
【検算1】平均の速さは 。8.4より遅い ○
【検算2】下りは 時間と0.375時間しか縮まないのに、上りは 時間と3.5時間も延びます ○
流れが速いほど、往復にかかる時間は長くなる
下りで得する時間より、上りで損する時間のほうが大きいからです。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 和差算と別の単元として並ぶから
和差算は「2つの数の和と差から、それぞれを求める」問題として先に習います。流水算はそのあと、速さの応用として出てきます。
ところが計算はまったく同じ。単元が分かれている構成上、この対応が示されにくいため、新しい公式として覚え直すことになりがちです。
2. 「静水時の速さ」が目に見えない量だから
下りと上りの速さは実際に測れます。静水時の速さはその川では測れません。
実際には観測できない量を、計算の中だけで扱う——これは文字式の考え方に近い操作です。小学校では文字を使わないため、言葉で説明しきるのが難しい部分になります。
3. 往復の平均が「割合」の話になるから
往復の平均が単純平均でない理由は、速さが「時間あたりの量」だからです。これは割合の考え方に属します。
速さの単元でここまで踏み込むと割合の話に入ってしまうため、配当時間の中では扱いにくい。結果として「往復は平均すればよい」という誤解が残りやすくなります。
【検算】3つの方法
1. 足し引きして下り・上りに戻す
最も確実です。
【検算】 ○、 ○
2. 時間に戻す
道のり ÷ 速さで、問題の時間になるか確かめます。
【検算】 ○、 ○
3. 大小関係を確認する
上り < 静水時 < 下り
この順が崩れていたら計算ミスです。流れの速さが静水時を超えることもありません(超えると上れなくなります)。
【検算】 ○、 ○
よくあるミス
ミス1:上りと下りを取り違える
下りが速いほうです。
ミス2:2で割り忘れる
和も差も2で割ります。
ミス3:往復の平均を単純平均で出す
合計の道のり ÷ 合計の時間です。
ミス4:時間と速さを混同する
先に速さを出してから和差算に入ります。
ミス5:流れの速さを船に足し忘れる
下りは足し、上りは引く——図で確認します。
ミス6:単位をそろえない
時速と時間、分速と分を合わせます。
練習問題
- 42kmを下るのに3時間、上るのに7時間かかる船の、下りと上りの速さを求めなさい。
- 1から静水時の速さと流れの速さを求めなさい。
- 2の答えを足し引きして検算しなさい。
- 静水時10km、流れ4kmで42kmを往復するときの平均の速さを求めなさい。
- 4が時速10kmにならない理由を答えなさい。
- 流れが時速6kmになったときの往復の時間を求めなさい。
- 静水時の速さが上りと下りの間にある理由を答えなさい。
解答
- 時速14km、時速6km
- 時速10km、時速4km
- ○、 ○
- 時速8.4km
- 遅い上りに長い時間がかかるから。時間の重みが違う
- 13.125時間
- 下りは流れのぶん速く、上りは流れのぶん遅いので、静水時はちょうど真ん中になる
まとめ
- 下り=静水+流れ、上り=静水-流れ
- 静水=(下り+上り)÷2、流れ=(下り-上り)÷2
- 正体は和差算
- 往復の平均は合計の道のり÷合計の時間(単純平均ではない)
- 流れが速いほど往復は遅くなる
- 検算は足し引きで戻す/時間に戻す/上り<静水<下り
流水算のおもしろさは、目に見えない「静水時の速さ」を計算で取り出せるところにあります。測れない量を、測れる2つの量の和と差から復元する——この発想は、理科や統計でも同じ形で出てきます。公式を覚えるより、「足すと片方が消える」という仕組みのほうを持ち帰ってください。
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