「2つのさいころを投げるとき、全部で36通り」。この36がどこから来たのか—— ではなく なのはなぜか。
そして「区別のない2つのさいころ」でも36で数えるのはなぜか。この2つの「なぜ」を押さえると、確率の分母で二度と迷わなくなります。
結論:足すのではなく、かける
2つのさいころはそれぞれ独立に目が出ます。大が1のとき、小は1〜6の6通り。大が2のときも、小は6通り。
大の目が6通りあって、そのそれぞれに対して小が6通り。だから
これが積の法則です。「そのそれぞれに対して」——ここがかけ算になる理由です。
足し算になるのはどんなとき
区別を明確にします。
| 状況 | 計算 | 例 |
|---|---|---|
| 両方起こる(続けて行う) | かける | 大も小も投げる → |
| どちらか一方(同時には起こらない) | 足す | 和が3または4 → |
「かつ」ならかける、「または」なら足す。日本語の接続詞がそのまま計算を教えてくれます。
【検算】和が3になるのは の2通り、和が4は の3通り。「和が3または4」は足して5通り。実際に数えても5通りです ○
区別がなくても36で数える理由
ここが最重要です。問題文に「大小」と書かれていなくても、36通りで数えます。
理由は「同様に確からしい」を保つためです。
区別しないとどうなるか
区別しない数え方だと、 と を同じものとみなします。すると全部で21通りになります。
しかしこの21通りは、1つ1つの起こりやすさが違います。
- (ゾロ目) … 起こり方は1通り
- … 起こり方は と の2通り
は の2倍起こりやすいのです。起こりやすさが違うものを同列に数えると、確率の計算が成り立ちません。
【検算】実際に確かめます。ゾロ目が出る確率を、両方の数え方で計算してみます。
| 数え方 | 全体 | ゾロ目 | 確率 |
|---|---|---|---|
| 区別する | 36 | 6 | |
| 区別しない | 21 | 6 |
答えが変わってしまいました。正しいのは です。
確かめ方があります。大のさいころの目が何であっても、小がそれと同じ目になる確率は 。これは明らかです。だから が正解で、 は誤りだと確定します。
21通りはどこから来たのか
参考までに確認しておきます。区別しない組は
- ゾロ目 … 6通り
- 異なる2つの目の組 … 通り
合計 。36通りの内訳としては、ゾロ目6通りと、異なる目 通り(15組×2)になっています。
【検算】 ○。異なる目のほうが2倍で数えられていることが確認できました。
3個以上でも同じ
さいころ3個なら
さいころ 個なら 。個数が1つ増えるごとに6倍になります。
| 個数 | 1 | 2 | 3 | 4 |
|---|---|---|---|---|
| 通り | 6 | 36 | 216 | 1296 |
コインなら1枚2通りなので 。3枚で8通り、10枚で1024通りです。
【検算】コイン10枚が1024通りであることは、 で確認できます。樹形図では書き切れない数ですが、積の法則なら一瞬です。
「同様に確からしい」とは何か
確率の定義は
確率 =(起こる場合の数)÷(すべての場合の数)
ですが、これが使えるのはすべての場合が同じ程度に起こりやすいときだけです。これを「同様に確からしい」といいます。
36通りは同様に確からしい——大小それぞれが独立に6通りずつなので、どの組み合わせも同じ確率 で起こります。
21通りは同様に確からしくない——先に見たとおりです。
だから分母には36を使う。これが理由のすべてです。
身近な誤解の例
「明日雨が降るか降らないかの2通りだから、確率は 」——これは同様に確からしくない例です。
2つの場合に分かれるからといって、それぞれが同じ確率とは限りません。「場合の数を数えれば確率が出る」わけではないのです。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 「同様に確からしい」が定義の中の一言だから
この言葉は確率の定義の中に条件として書かれています。しかし条件は、それが破れる例を見ないと重要性が分かりません。
教科書の問題ではほぼすべて同様に確からしい設定が使われます。条件が満たされている状況ばかりなので、条件があることを意識する必要が構造上生じないのです。
破れる例に出会うのは、「2つのさいころを区別しない」という誤りをしたとき。つまり間違えて初めて意味が分かる、という順序になっています。
2. 積の法則が「当たり前」として通過するから
は、樹形図を描けば納得できます。だから説明されればすぐ分かる。
しかし「なぜ足し算ではないのか」を意識する場面は少ない。実際、和の法則(足す場合)と混同するミスは中2で頻発しますが、2つを対比して整理する場面は構成上作られにくいのです。
「かつ」ならかける、「または」なら足す——この対比を一度作っておけば、混同しなくなります。
3. 「区別する」が直感に反するから
同じ形の2つのさいころを見て「区別する」というのは、現実の見た目に反します。
実際には物理的に別のさいころなので、目の出方は独立に決まっています。見分けがつかないことと、独立に起こることは別の話です。
この区別は直感ではなく理屈で理解するしかないため、一度きちんと確認しておく必要があります。
【検算】3つの確認法
1. すべての場合の確率を足して1になるか
36通りがそれぞれ なら、合計は ○。
21通りで数えると、それぞれの確率が違うので単純に足せません。ここでも21が不適切だと分かります。
2. 別の方法で同じ確率が出るか
| 出来事 | 36通りで計算 | 別の考え方 |
|---|---|---|
| ゾロ目 | 小が大と同じ目 → ○ | |
| 両方偶数 | ○ | |
| 和が7 | 大が何でも、小が1通りに決まる → ○ |
2つの独立した方法で一致すれば、まず間違いありません。
3. 分母を先に確定させる
問題を読んだら、まず全体の場合の数を書く。さいころ2個なら36、3個なら216、コイン3枚なら8。
分母が違えば答えは必ず違います。ここを最初に固定してください。
よくあるミス
ミス1: とする
両方起こるのでかけます。足すのは「どちらか一方」のときです。
ミス2:区別なしの21通りで計算する
同様に確からしくないので使えません。必ず36で数えます。
ミス3:分母を6にする
さいころ2個なら分母は36です。1個ぶんの6ではありません。
ミス4:「かつ」と「または」を取り違える
- 「大が偶数かつ小が偶数」 → 通り
- 「和が3または和が4」 → 通り
接続詞を丸で囲むのが確実です。
ミス5:場合の数が2つだから確率が だと思う
同様に確からしくなければ、場合の数から確率は出ません。
練習問題
- さいころ2個を投げるとき、全部で何通りか。
- さいころ3個ではどうか。
- コイン5枚を投げるとき、全部で何通りか。
- 大小2つのさいころで、両方とも偶数になる確率を求めなさい。
- 4を、別の考え方(それぞれが偶数になる確率のかけ算)でも確かめなさい。
- 「2つのさいころを区別しない21通り」で確率を計算してはいけない理由を述べなさい。
解答
- 36通り
- 216通り
- 32通り
- 偶数は2・4・6の3通りずつなので 。
- それぞれが偶数になる確率は 。かけて 。一致しました ○
- 1つ1つの起こりやすさが違うから。ゾロ目は1通りぶん、異なる目の組は2通りぶん起こるので、同様に確からしくありません
まとめ
- になるのは、大のそれぞれに対して小が6通りあるから(積の法則)
- 「かつ」ならかける、「または」なら足す
- 区別がなくても36通りで数える。同様に確からしさを保つため
- 21通りは1つ1つの起こりやすさが違うので使えない
- さいころ 個なら 、コイン 枚なら
- 検算は別の方法で同じ確率が出るか/分母を先に確定させる
- 場合の数が2つでも、確率が とは限らない
「同様に確からしい」という条件は、高校の数Aで確率を厳密に扱うときの土台になります。さらに大学以降では、この条件を外した一般の確率(起こりやすさが場合ごとに違う)を扱うようになります。中2のここで「数え方が確率を決める」ことを理解しておくと、その先の議論がすべて自然に見えてきます。
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