「立体の表面を通る最短距離」。曲がった面の上を通るのに、どうやって長さを測るのか。入試の空間図形で最も差がつく問題です。
答えは決まっています。展開して平面にすれば、最短距離は直線。そして切って開いても長さは変わらない——これが原理です。
結論:展開図の上で2点を直線で結ぶ
なぜ展開してよいのか。理由は単純です。
紙を切って開いても、紙の上に描いた線の長さは変わらない
立体の表面は曲げた紙だと思えます。だから展開しても、表面上の道の長さは同じ。
そして平面上で2点を結ぶ最短の道は直線。だから展開図で直線を引けば、それが最短経路です。
手順
- 展開図を描く
- 出発点と到着点を展開図上に置く
- 直線で結ぶ
- その長さを三平方の定理などで求める
型1:円柱の側面を巻く
底面の円周が6、高さが8の円柱がある。底面のある点から、側面を1周して真上の点まで行く最短距離を求めなさい。
円柱の側面を切って開くと長方形になります。
- 横 … 底面の円周で6
- 縦 … 高さで8
出発点は左下、到着点は右上。直線で結ぶと
【検算】3-4-5の2倍で6-8-10。三平方が成り立っています ○
立体の上ではらせん状の経路ですが、展開するとただの直線。これが展開の威力です。
横に2周する場合は、展開図を2つ横に並べます。横が になるので
【検算】。1周の10より長い ○。当然です。
型2:角柱の側面を巻く
底面が1辺2の正三角形、高さ8の三角柱がある。底面のある頂点から、側面を1周して真上の頂点まで行く最短距離を求めなさい。
側面を開くと長方形になります(3つの長方形が横に並ぶ)。
- 横 … 底面の周の長さで
- 縦 … 高さで8
円柱の場合とまったく同じです。底面が何であっても、周の長さと高さで決まります。
【検算】底面の周が6で高さ8なら、円柱でも角柱でも10。展開すると同じ長方形になるからです ○
型3:円錐の側面(最重要)
ここが本番です。円錐の側面を開くとおうぎ形になり、中心角を求める必要があります。
底面の半径2、母線6の円錐がある。母線上の点Aから側面を1周して、Aまで戻る最短距離を求めなさい。
ステップ1:中心角を求める
おうぎ形の弧の長さ=底面の円周なので
ステップ2:展開図で直線を引く
展開図は半径6、中心角 のおうぎ形。Aは片方の半径の端、1周して戻った点はもう片方の半径の端です。
求めるのは2辺が6、間の角が の三角形の残りの辺。
ステップ3:特別な直角三角形で計算する
この二等辺三角形の頂角から底辺に垂線を下ろすと、 の直角三角形が2つできます。
- 斜辺 … 6(母線)
- 頂角の半分 …
- 底辺の半分 … の向かいなので比の にあたる
比 で斜辺が6なので1つぶんは3。底辺の半分は 。
最短距離 =
【検算】。
大小を確認します。2つの母線を通って行く道(6+6=12)より短いはず ○。そして母線1本(6)より長い ○。妥当な値です。
座標でも確認します。おうぎ形の中心を原点、Aを 、もう一方を 方向の とすると
○。一致しました。
中心角が のとき
のとき中心角は 。直角二等辺三角形になります。
母線が8なら、最短距離は 。
【検算】 ○
中心角が のとき
のとき中心角は 。2辺が等しく間の角が なので正三角形。
最短距離=母線そのものです。
展開図が使える中心角の一覧
| 中心角 | 最短距離 | |
|---|---|---|
| (正三角形) | ||
| (一直線) |
入試で出るのは、この4つがほとんどです。特別な角になるように問題が作られています。
【検算】 の場合を確認します。中心角 なので展開図は半円。AとA’は直径の両端なので、距離は ○
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 「展開してよい」根拠が説明されにくいから
「展開図で直線」は結論として教えられます。ところがなぜ展開してよいのか——切って開いても長さが変わらないから——という根拠は、当たり前すぎて説明されないことがあります。
根拠が分からないと、「そういう解き方」として暗記することになり、初見の立体で応用できません。
2. 円錐の中心角を求める手間が1ステップ増えるから
円柱・角柱は展開図がすぐ長方形になりますが、円錐は中心角を計算しなければ展開図が描けません。
この1ステップが増えることで、難度が大きく上がります。しかも中心角の公式()は中1のおうぎ形の内容で、2年空いています。
3. 立体のままイメージしようとしてしまうから
「側面を通る道」を立体のまま思い浮かべようとすると、らせん状の曲線になり、長さの見当がつきません。
立体を捨てて、展開図だけを見る——この割り切りが必要です。展開図を描いた瞬間、平面図形の問題に変わります。
【検算】3つの方法
1. 大小関係を確認する
| 比べる相手 | 関係 |
|---|---|
| 母線2本を通る道 | 最短距離のほうが短い |
| 母線1本 | 最短距離のほうが長い |
| 立体の対角線(直方体) | 表面の最短距離のほうが長い |
この範囲を外れたら計算ミスです。
2. 座標で計算する
展開図を座標に置いて、2点間の距離を計算します。角度が特別な値なら座標も簡単に出ます。
3. 三平方が成り立つか
求めた長さで元の直角三角形が成り立つか確認します。
よくあるミス
ミス1:立体のまま計算しようとする
必ず展開図を描きます。これをしないと始まりません。
ミス2:円錐で中心角を求め忘れる
おうぎ形の中心角は 。これがないと展開図が描けません。
ミス3:中心角の分母と分子を逆にする
分子が底面の半径、分母が母線です。逆にすると を超えます。
ミス4:おうぎ形の半径を底面の半径にする
おうぎ形の半径は母線です。底面の半径ではありません。
ミス5:円柱で横の長さを直径にする
展開図の横は円周()です。直径ではありません。
練習問題
- 底面の円周が5、高さが12の円柱で、側面を1周する最短距離を求めなさい。
- 底面が1辺3の正方形、高さ8の四角柱で、側面を1周する最短距離を求めなさい。
- 底面の半径3、母線9の円錐の展開図の中心角を求めなさい。
- 3の円錐で、側面を1周して戻る最短距離を求めなさい。
- 底面の半径2、母線8の円錐の展開図の中心角を求めなさい。
- 5の円錐で、側面を1周して戻る最短距離を求めなさい。
解答
- 展開すると横5・縦12の長方形。13。5-12-13 ○
- 底面の周は 。。検算:、高さ8より長い ○
- 母線9、中心角 なので 。。検算:。母線2本の18より短く、母線1本の9より長い ○
- 直角二等辺三角形なので 。。検算: ○
まとめ
- 根拠は「切って開いても長さは変わらない」。だから展開してよい
- 平面では2点を結ぶ最短は直線。展開図で直線を引く
- 円柱・角柱は展開すると長方形。横=底面の周、縦=高さ
- 円錐は展開するとおうぎ形。中心角= を先に求める
- 中心角が なら特別な三角形で計算できる
- おうぎ形の半径は母線。底面の半径ではない
- 検算は大小関係(母線1本より長く、2本より短い)/座標/三平方
「曲がったものを平らに開いて考える」という発想は、高校の数III(曲線の長さ)や大学の微分幾何につながる、数学の中でも息の長い考え方です。立体の問題を、展開という一手で平面の問題に変える——中3のここで、その最初の道具を手に入れてください。
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