作図の問題で手が止まる原因は、ほぼ1つに絞れます。どちらの作図を使えばいいか分からない。
コンパスの操作自体はできる。でも「この問題は垂直二等分線か、角の二等分線か」で迷う。ここでは、迷わないための判断基準を示します。基準はたった1つ、「何から等しい距離か」です。
結論:2点からか、2直線からか
| 作図 | その線の上の点は | 問題文のことば |
|---|---|---|
| 垂直二等分線 | 2つの点から等距離 | 「2地点から等しい距離」「両端から同じ」 |
| 角の二等分線 | 2つの直線から等距離 | 「2つの道から等しい距離」「2辺から同じ」 |
点が2つなら垂直二等分線、直線が2本なら角の二等分線。これで作図問題の大半が決まります。
言い換えれば、作図とは「条件を満たす点の集まり」を線として描く作業です。この見方に立つと、作図が図形の問題ではなく条件の問題だと分かります。
垂直二等分線:2点から等距離
線分ABの垂直二等分線とは、AとBから等しい距離にある点をすべて集めた線です。
なぜ「垂直」で「二等分」なのか。これは結果であって、定義ではありません。
2点から等距離の点を集めていくと、たまたまABの真ん中を通り、ABに垂直な直線になる——それだけです。
なぜそうなるのか
ABの中点をMとします。M自身はAからもBからも等距離なので、この線の上にあります。
次に、Mから真上に離れた点Pを考えます。三角形PAMと三角形PBMは
- (Mは中点)
- は共通
2辺とその間の角が等しいので合同。よって です。
逆に なら、三角形PABは二等辺三角形。二等辺三角形の頂角の二等分線は底辺を垂直に二等分するので、Pはこの線の上にあります。
だから「2点から等距離の点全体」=「垂直二等分線」です。
【検算】座標で確かめます。、 の垂直二等分線は 。この線上の から
一致しました。
作図の手順とその理由
- Aを中心に、適当な半径で円をかく
- 同じ半径でBを中心に円をかく
- 2つの円の交点2つを結ぶ
「同じ半径」が核心です。交点はAからもBからもその半径だけ離れているので、定義そのものによって2点から等距離。だからその点は垂直二等分線上にあります。
2点が決まれば直線が1本決まるので、交点を2つ取って結べば完成です。
角の二等分線:2直線から等距離
角の二等分線とは、その角をつくる2つの辺(直線)から等しい距離にある点を集めた線です。
ここでいう「直線からの距離」は垂線の長さ——最短距離のことです。
なぜそうなるのか
角の頂点をO、二等分線上の点をPとします。Pから2辺に下ろした垂線の足をH、Kとすると、三角形OPHと三角形OPKは
- は共通
- (二等分線だから)
直角三角形で斜辺と1つの鋭角が等しいので合同。よって です。
【検算】 軸と 軸のなす角の二等分線は直線 。この上の点 から
- 軸までの距離 …
- 軸までの距離 …
等しい。一方 上にない では、距離は1と5で等しくありません。
作図の手順とその理由
- 頂点Oを中心に円をかき、2辺との交点をP、Qとする
- PとQを中心に同じ半径で円をかき、交点をRとする
- OとRを結ぶ
手順2で作っているのは、実はPQの垂直二等分線上の点です。角の二等分線の作図は、内部で垂直二等分線を使っています。
なので三角形OPQは二等辺三角形。二等辺三角形では、頂角の二等分線とPQの垂直二等分線が一致する——だからこの手順で角が二等分されます。
問題文からの判定表
実際の問題では、次の言葉が手がかりになります。
| 問題文の表現 | 使う作図 |
|---|---|
| 2つの地点から等しい距離 | 垂直二等分線 |
| 線分の両端から等しい距離 | 垂直二等分線 |
| 円の中心を求める | 垂直二等分線(弦2本ぶん) |
| 2つの道路から等しい距離 | 角の二等分線 |
| 2辺から等しい距離 | 角の二等分線 |
| 三角形に内接する円の中心 | 角の二等分線 |
「点」なのか「線」なのか。問題文の対象を丸で囲むだけで判定できます。
2つを組み合わせる問題
条件が2つある問題では、2本の線を引いてその交点を取ります。
例:「2地点A、Bから等距離で、かつ2つの道路から等距離の地点」
- ABの垂直二等分線を引く
- 2直線の角の二等分線を引く
- 交点が答え
条件1つにつき線1本、交点が答え。これは方程式で「条件1つにつき式1本、連立の解が答え」というのとまったく同じ構造です。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 授業の重心が「手順の実行」に置かれやすいから
作図はコンパスと定規を実際に動かす作業を伴います。手順を示し、その場で描かせるという進み方が自然で、時間の多くが操作の練習に使われます。
しかし試験で問われるのはどの作図を選ぶかです。操作ができることと、選べることは別の能力ですが、授業の時間配分としては操作側に寄りやすいという構造があります。
2. 「等距離の点の集まり」という定義に立ち返る場面が少ないから
垂直二等分線・角の二等分線は、名前が操作の結果を表しています。「垂直に二等分する線」「角を二等分する線」——どちらも作り方の説明であって、性質の説明ではありません。
ところが問題を解くときに必要なのは性質のほう(2点から等距離/2直線から等距離)です。名前が性質を隠しているという、用語の構成上の問題です。
この性質が正面から扱われるのは中2の合同の証明や中3の三角形の五心に入ってからで、中1の作図の時点では性質より作り方が前面に出ます。
3. 作図の答えが「線」であることが伝わりにくいから
多くの単元では、答えは数値です。ところが作図の答えは点や線で、しかも条件を満たす点が無数にあるという考え方が必要になります。
「条件を満たす点の集まりを線として描く」という発想は、高校の軌跡の考え方そのものです。中1の段階でこの見方を持つのは自然ではなく、構造上、手順の暗記に流れやすいのです。
だからこそ、「この線の上の点は、何から等しい距離か」と一言で言えるかを確認してください。それが言えれば、作図の選択で迷うことはなくなります。
【検算】実際に測る/座標で計算する
作図が正しいかは、定規で測るのが最も直接的です。
- 垂直二等分線 … 線上の点を1つ取り、A、Bまでの長さを測る。等しければ正解
- 角の二等分線 … 線上の点を1つ取り、2辺への垂線の長さを測る。等しければ正解
座標で確かめることもできます。
| 条件 | 線 | 線上の点 | 距離の確認 |
|---|---|---|---|
| 、 から等距離 | と ○ | ||
| 、 から等距離 | と ○ | ||
| 軸と 軸から等距離 | と ○ |
作図の途中でコンパスの幅を変えていないかも必ず確認してください。「同じ半径」が崩れると、その作図は根拠を失います。
よくあるミス
ミス1:コンパスの幅を途中で変える
垂直二等分線でAとBの円の半径が違うと、交点は2点から等距離になりません。作図の根拠そのものが消えます。
2つ目の円をかくまで、コンパスを開いたまま動かさない。
ミス2:作図の線を消してしまう
作図問題では補助線(円弧)を残すことが求められます。答えの線だけ引いても、どうやって求めたかが伝わりません。
円弧は消さない。これは採点の対象です。
ミス3:「2辺から等距離」を「2頂点から等距離」と読む
問題文をよく読むこと。頂点(点)なら垂直二等分線、辺(線)なら角の二等分線です。
三角形の内接円の中心は角の二等分線の交点、外接円の中心は垂直二等分線の交点。ここは正確に区別してください。
ミス4:条件が2つあるのに線を1本しか引かない
条件が2つなら線も2本。その交点が答えです。条件の数=線の数と覚えてください。
練習問題
- 2つの家A、Bから等しい距離にある地点を求めたい。どちらの作図を使うか。
- 交差する2本の道路から等しい距離にある地点を求めたい。どちらの作図を使うか。
- 三角形の3つの頂点を通る円の中心を作図したい。どちらの作図を使うか。
- 三角形の3つの辺に接する円の中心を作図したい。どちらの作図を使うか。
- 、 から等距離にある点の集まりを式で表しなさい。
- 点 は 軸と 軸から等距離か。確かめなさい。
解答
- 垂直二等分線(2つの点から等距離)。線分ABの垂直二等分線上の点すべてが条件を満たします
- 角の二等分線(2つの直線から等距離)
- 垂直二等分線。3頂点は点なので、2辺の垂直二等分線の交点が中心(外心)
- 角の二等分線。3辺は直線なので、2つの角の二等分線の交点が中心(内心)
- 中点は で、ABは 軸に平行。よって。検算: からAまでは 、Bまでは ○
- 軸までの距離は4、 軸までの距離も4。等距離です( 上の点だから)
まとめ
- 作図とは条件を満たす点の集まりを線として描くこと
- 2つの点から等距離 → 垂直二等分線
- 2つの直線から等距離 → 角の二等分線
- 判定は問題文の対象が点か線かを見るだけ
- 条件の数=引く線の数。交点が答え
- 外接円の中心は垂直二等分線の交点、内接円の中心は角の二等分線の交点
- コンパスの幅を変えない。円弧は消さない
「条件を満たす点の集まり」という見方は、中3の円周角の定理(一定の角で見える点の集まり)、高校の軌跡・領域へそのまま続きます。作図をコンパスの操作としてではなく、条件の表現として捉え直す——中1でこの視点に立てると、図形の問題全体が読みやすくなります。
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