三次方程式の実数解の個数は、解かずに数えられます。方法は2つ。
| 方法 | 使う場面 |
|---|---|
| 極値の積の符号 | 係数がすべて数のとき |
| 定数分離( との交点) | 定数項に文字があるとき |
どちらも根っこは同じ。「グラフが 軸と何回交わるか」を数えているだけです。
結論:極大値と極小値の積を見る
(極大値)(極小値)の符号で決まる
| 積の符号 | 異なる実数解の個数 | グラフ |
|---|---|---|
| 負 | 3個 | 山が上、谷が下 |
| 0 | 2個 | 山か谷が 軸上 |
| 正 | 1個 | 山も谷も同じ側 |
| 極値がない | 1個 | 単調に増加(減少) |
なぜ積の符号なのか
3次関数のグラフは左下から右上へ( の係数が正のとき)伸びていきます。
- 極大値が正で極小値が負なら、グラフは 軸を3回横切ります(上がって・下がって・また上がる途中で各1回)
- 両方とも正なら、山も谷も 軸より上。左側で1回だけ横切る
- 両方とも負なら、右側で1回だけ
「異符号なら3回、同符号なら1回」——これを式にしたものが「積の符号」です。
やってみる1:3個の場合
の異なる実数解の個数を求めよ。
極大は 、極小は 。
3個です。
【検算】実際に解きます。
3個 ○
【検算2】符号の変化を見ます。
| 0 | 1 | 2 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 2 | 0 | 2 |
負→正→負→正と3回変わっています ○
やってみる2:2個の場合
の異なる実数解の個数を求めよ。
導関数は同じなので極値の位置も同じ。
2個です。
【検算】因数分解します。 なので が因数。
解は (重解)と 。異なる実数解は2個 ○
【検算2】 ○ 確かに解です。
極小値が0——グラフの谷が 軸に接しています。だから重解。
やってみる3:1個の場合
の異なる実数解の個数を求めよ。
1個です。
【検算】解を探します。 なので が解。
残りの2次式の判別式は
実数解なし。だから全体で1個 ○
【検算2】、。2と4の間で1回だけ符号が変わる ○
文字定数があるときは定数分離
が異なる3個の実数解をもつような の範囲を求めよ。
「積の符号」でやると の入った式を扱うことになり大変です。そこで発想を変えます。
曲線 と直線 の交点の個数
直線 は水平線なので、上下に動かして交点の個数を見るだけ。
極大値2、極小値 なので
| の範囲 | 交点 |
|---|---|
| 1個 | |
| 2個 | |
| 3個 | |
| 2個 | |
| 1個 |
答えは 。
【検算1】 のとき。 は先ほど3個でした ○
【検算2】 のとき。 を因数分解すると
解は (重解)と 。2個 ○
【検算3】 のとき。、 なので2と3の間に1個。極大値2より が大きいので左側では交わりません。1個 ○
使い分けの基準
| 状況 | 方法 |
|---|---|
| 係数がすべて数 | 極値の積 |
| 定数項だけに文字 | 定数分離( と比べる) |
| 複数箇所に文字 | 極値の積(場合分けが必要) |
定数分離は、文字を右辺に集められるときだけ使えます。その代わり圧倒的に速い。
極値がない場合
の実数解の個数を求めよ。
常に増加なので、 軸と交わるのは1回だけ。
【検算】 なので が解。
2次式の判別式は で実数解なし。全体で1個 ○
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 「積の符号」が公式として提示されやすいから
この判定法は結論だけ覚えれば使えます。だから公式として扱われやすい。
ところが本質は「グラフが 軸を何回横切るか」。山が上・谷が下なら3回という図のイメージを持たずに公式だけ覚えると、グラフが上下逆( の係数が負)のときに混乱します。
2. 定数分離との使い分けが示されにくいから
2つの方法はどちらも正しいので、教科書は両方を扱います。
ところが文字がどこにあるかで有利不利が大きく変わる。この判断は解法の知識であって定理ではないため、独立した項目になりにくい。結果として、毎回同じ方法で押し通して計算量が膨らみます。
3. 「異なる実数解」という言い方が曖昧に見えるから
重解を1個と数えるか2個と数えるかは、問題文の言い方で決まります。
「異なる実数解の個数」なら重解は1個。「実数解の個数(重解も重複して数える)」なら2個。この区別は数学の内容ではなく問題文の読み取りなので、明示されにくい部分です。
【検算】3つの方法
1. 因数分解できるか試す
定数項の約数を代入してみます。1つ見つかれば残りは2次式。
【検算】: ○ 残りは で判別式 ○
2. いくつかの で符号の変化を見る
符号が変わった回数が交点の個数です。
【検算】: と3回変化 ○
3. 極値の位置と 軸の関係を図で確認する
山が 軸より上、谷が下なら3個。図を描けば一目です。
【検算】極大2(上)、極小 (下)→ 3個 ○
よくあるミス
ミス1:極値を求めずに判別式を使う
判別式は2次方程式の道具です。3次には使えません。
ミス2:積が0のとき3個と答える
2個です(重解が1つ)。
ミス3:極値がないのに「解なし」とする
必ず1個はあります。3次関数は に発散するからです。
ミス4: の係数が負のときに向きを逆にしない
グラフが上下逆になります。極大・極小の位置も入れ替わります。
ミス5:定数分離できないのに無理に使う
文字を右辺に集められるかを先に確かめます。
ミス6:重解の数え方を確認しない
「異なる」があるかどうかを問題文で確認します。
練習問題
- の異なる実数解の個数を求めなさい。
- の異なる実数解の個数を求めなさい。
- の実数解の個数を求めなさい。
- が異なる3個の実数解をもつ の範囲を求めなさい。
- 4で のときの個数を求めなさい。
- の実数解の個数を求めなさい。
- 2の方程式を因数分解しなさい。
解答
- 極大2、極小 、積 より3個。検算: ○
- 極大4、極小0、積 より2個。検算: ○
- 極大 、極小 、積 より1個。検算: のみ ○
- 極小 から極大2の間なので
- は極大値と一致。2個。検算: ○
- で常に増加。1個。検算: のみ ○
- 。検算:展開すると ○
まとめ
- 実数解の個数はグラフと 軸の交点の個数
- (極大値)×(極小値)が負なら3個、0なら2個、正なら1個
- 極値がなければ必ず1個
- 定数項に文字があるなら定数分離( との交点)が速い
- の係数が負ならグラフが上下逆
- 「異なる実数解」かどうかを問題文で確認
- 検算は因数分解/符号の変化/図で確認
「方程式を解かずに解の個数を知る」——これはグラフという道具を手に入れたからできることです。式を変形する代わりに、形を見る。代数の問題を幾何の問題に翻訳するこの発想は、微分を学ぶ最大の見返りの1つです。
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