三角比は直角三角形で定義されました。ところが直角三角形の角は 未満しかありません。それなのに や が出てくる。
鈍角の三角形は作れないのに、なぜ値が決まるのか。ここに納得できないまま公式だけ覚えている人が多い場所です。
結論:直角三角形をやめて、座標で定義し直す
鈍角に拡張するとき、定義そのものを取り替えます。
新しい定義:原点を中心とする半径 の円を描き、 軸の正の向きから角 だけ回した位置にある点を とすると
三角形はどこにも出てきません。点の座標だけで決まります。
これなら鈍角でも定義できます。 が を超えると点は左上に来て、 が負になるだけです。
鋭角では前と同じ値になる
定義を取り替えたのに、 未満では値が変わらない——これが確認すべき最重要点です。
鋭角のとき、Pから 軸に垂線を下ろすと直角三角形ができます。
- 斜辺 … (原点からPまで)
- 高さ …
- 底辺 …
すると
=(高さ)÷(斜辺)=
もとの定義とぴったり一致します。だから新しい定義は古い定義の拡張になっているのです。
【検算】 で確かめます。 とすると、 の直角三角形から 。
- ○
- ○
- ○
直角三角形で覚えた値と一致しました ○
鈍角ではどうなるか
で考えます。半径2の円上で の位置にある点は
したがって
と が負になりました。点が左側にあるので だからです。
【検算】Pが本当に半径2の円上にあるか確かめます。
確かに円上 ○
数値でも確認します。、 ○。 ○
符号は象限で決まる
では、点は上半分にあります()。
| 角 | 点の位置 | |||
|---|---|---|---|---|
| 右上() | 正 | 正 | 正 | |
| 真上() | 1 | 0 | 定義されない | |
| 左上() | 正 | 負 | 負 |
だけが常に正—— だからです。 と は鈍角で負になります。
が定義されない理由もはっきりします。 で、 では 。0で割ることになるからです。
【検算】 で なら 。
- ○
- ○
- … 計算できない ○
の公式が出てくる
この定義から、鈍角の値を鋭角に直す公式が自然に出ます。
の点を とすると、 の点は 軸について対称な位置、つまり です。
したがって
| 公式 | 理由 |
|---|---|
| が同じ | |
| の符号が逆 | |
| で分母の符号が逆 |
覚える公式ではなく、対称性から出る当然の結果です。
【検算】 で確かめます。 なので
- ○(先に計算した値と一致)
- ○
- ○
3つとも一致しました ○
座標でも確認します。 の点は ()、 の点は 。 の符号だけが逆 ○
も同じ定義から出る
この関係も、円の方程式そのものです。
Pは半径 の円上にあるので 。両辺を で割ると
つまり。
【検算】 で確かめます。
成り立ちました ○
鋭角でも鈍角でも同じ式が使える——これが定義を取り替えた最大の利点です。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 定義が「取り替えられた」ことが明示されにくいから
教科書では直角三角形の定義のあとに座標の定義が出てきます。ところが「定義を取り替えた」という宣言はされないことが多い。
すると2つの定義が並立しているように見え、どちらを使えばいいのか分からなくなります。
実際には座標の定義が正式で、直角三角形は鋭角での特別な場合です。この上下関係を押さえると混乱が消えます。
2. 「鋭角では一致する」ことの確認が省かれやすいから
定義を取り替えたなら、もとの定義と矛盾しないことを確認すべきです。ところがこの確認は「当然のこと」として省略されやすい。
垂線を下ろせば直角三角形ができる——この1行があるかないかで、拡張の正当性が伝わるかが変わります。
3. 公式が先に提示されやすいから
はそのまま使える公式です。だから覚える対象として扱われがち。
ところが座標で考えれば、 軸対称というだけの話です。符号がどうなるかを毎回図で確認できるので、覚える必要がありません。
【検算】3つの方法
1. 点が円上にあるか
を確認します。座標を取り違えていれば、ここで必ず出ます。
| 角 | 点() | |
|---|---|---|
| ○ | ||
| ○ | ||
| ○ | ||
| ○ |
2. を確かめる
どの角でも成り立つはずです。成り立たなければ値が間違っています。
3. 符号を象限で確認する
- 鋭角 … 3つとも正
- 鈍角 … だけ正、 と は負
符号が合わなければ、点の位置を取り違えています。
よくあるミス
ミス1:鈍角でも直角三角形を作ろうとする
作れません。座標の定義を使います。
ミス2: も負になると思う
では です。点が上半分にあるからです。
ミス3: に値があると思う
定義されません。 で0で割ることになります。
ミス4: とする
符号が変わります。 です。 だけが符号そのまま。
ミス5: を1以外にすると値が変わると思う
変わりません。 は比なので、 が何であっても同じ値です。
【検算】 で なら 、 なら点は で ○
練習問題
- 半径2の円で の位置にある点の座標を求めなさい。
- 1から 、 を求めなさい。
- を求めなさい。
- と を求めなさい。
- を計算しなさい。
- と を、座標の定義から求めなさい。
解答
- は なので、 の点 を 軸対称にして。検算: ○
- 、
- 。負になります
- 。 の点は ()なので は 。よって 、
- 1。どの角でも1になります ○
- 点は なので 0、1
まとめ
- 鈍角への拡張では定義そのものを取り替える(直角三角形 → 座標)
- 新定義は、、
- 鋭角では前の定義と一致する(垂線を下ろせば直角三角形)
- 〜 では は常に0以上、鈍角で が負
- は定義されない( で0で割る)
- の公式は 軸対称から出る。覚えなくてよい
- は円の方程式そのもの
- 検算は点が円上にあるか//符号が象限と合うか
この座標による定義は、数IIで一般角( を超える角、負の角)へさらに拡張され、三角関数になります。そこでも定義は同じ のまま。定義を取り替えたのは1回だけで、あとは角の範囲を広げるだけです。数Iのここで座標の定義に慣れておけば、数IIの三角関数が「同じものの続き」として自然に入ってきます。
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