三平方の定理は平面の定理です。ところが入試では立体で問われる。「立体のどこに直角三角形があるのか分からない」——中3で最も差がつく場面です。
方法は決まっています。立体を切って、平面を取り出す。取り出した平面の上でなら、三平方はいつもどおり使えます。
結論:直角三角形が乗っている平面を1枚取り出す
手順は3ステップです。
- 求めたい長さを含む平面を決める
- その平面を紙に描き直す(立体から切り離す)
- 平面上で三平方の定理を使う
ステップ2が最重要です。立体の図の上で考えようとすると、線が重なって直角が見えません。取り出して平面として描くと、ただの平面図形の問題になります。
基本:直方体の対角線
縦3、横4、高さ12の直方体の対角線の長さを求めなさい。
対角線は立体の中を斜めに走るので、直接は測れません。2段階で求めます。
第1段階:底面の対角線
底面は縦3、横4の長方形。その対角線を とすると
第2段階:立体の対角線
底面の対角線 と、高さ12で直角三角形ができます(高さは底面に垂直だから)。
対角線は13です。
【検算】座標で確かめます。頂点を と とすると、距離の2乗は
○
公式にすると
2段階をまとめると
3辺の2乗の和——三平方の定理がそのまま空間に拡張されています。
【検算】いくつかの直方体で確認します。
| 3辺 | 対角線 | |
|---|---|---|
| 13 | ||
| 3 | ||
| 7 | ||
立方体の対角線は1辺の 倍——覚えておくと速いです。
錐の高さを求める
底面が1辺6の正方形、他の辺(側面の辺)がすべて5の正四角錐の高さを求めなさい。
取り出す平面:頂点から底面へ下ろした垂線を含む平面。
ステップ1:頂点から底面に下ろした垂線の足は、正方形の中心(対角線の交点)です。
ステップ2:底面の対角線を求めます。1辺6の正方形なので
底面の対角線 =
中心から頂点までは、その半分で 。
ステップ3:側面の辺5、中心から底面の頂点まで 、高さ で直角三角形。
【検算】座標で確かめます。底面の4頂点を 、頂点を とします。
頂点から底面の頂点 までの距離の2乗は
○。問題の条件と一致しました。
「垂線の足がどこか」が鍵
この型では垂線の足の位置を最初に決めます。
| 立体 | 垂線の足 |
|---|---|
| 正四角錐 | 底面の正方形の中心(対角線の交点) |
| 正三角錐 | 底面の正三角形の重心 |
| 円錐 | 底面の円の中心 |
「正」がつく立体は、垂線の足が底面の中心——これが共通のルールです。
表面上の最短距離
もう1つの頻出型です。展開図に直すのがコツです。
縦3、横4、高さ5の直方体で、ある頂点から最も遠い頂点まで、表面を通って行く最短距離を求めなさい。
立体のままでは測れません。展開して平面にすると、最短距離は直線になります。
展開の仕方は3通りあり、それぞれ長さが違います。
| 展開の仕方 | 直角三角形の2辺 | 距離の2乗 |
|---|---|---|
| 1 | と | |
| 2 | と | |
| 3 | と |
最小は74。最短距離は です。
【検算】。他の2つは 、。確かに が最小 ○
3通りすべて計算して最小を選ぶ——これが手順です。1つだけ計算して答えると間違えます。
ちなみに直線の対角線は 。表面を通るほうが長いのは当然です ○
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 立体の図から直角を読み取るのが難しいから
立体の図は平面に描かれた立体なので、実際には直角なのに図では直角に見えないことがほとんどです。
この見え方の問題は、取り出して描き直すことでしか解決しません。ところが「描き直す」という手順は解答例には現れません(完成した式だけが書かれます)。
面倒でも1枚描く。これが唯一の対策です。
2. 空間図形と三平方が別の単元だから
空間図形は中1、三平方の定理は中3。2年空いています。
錐の体積の公式や、正四角錐の構造といった中1の内容を覚えていないと、中3の応用問題に取りかかれません。単元をまたぐ内容は、つなぐ作業が自分に委ねられます。
3. 「3通り試す」型が手順として示されにくいから
表面上の最短距離は展開の仕方が複数あり、すべて試す必要があります。
ところが解答例には正解の展開図だけが載ります。「他の展開も試して比べた」という過程は書かれません。
結果として「なぜその展開なのか」が分からず、初見の問題で選べなくなります。「全部試して最小を選ぶ」と決めておけば、迷いません。
【検算】3つの方法
1. 座標に置き換える
最も確実です。立体を座標空間に置けば、距離は計算だけで出ます。
2点間の距離の2乗 =
2. 大小関係を確認する
| 確認 | 内容 |
|---|---|
| 対角線 | どの辺よりも長い |
| 錐の高さ | 側面の辺より短い |
| 表面の最短距離 | 立体の対角線より長い |
この関係が崩れたら計算ミスです。
3. 三平方が成り立つか
求めた長さで元の直角三角形が成り立つか。錐なら 。
よくあるミス
ミス1:立体の図の上で計算しようとする
平面を取り出して描き直します。これをしないと直角が見えません。
ミス2:垂線の足の位置を間違える
「正」がつく錐は底面の中心です。頂点の真下がどこかを最初に決めてください。
ミス3:正方形の対角線の半分を1辺の半分と混同する
1辺6の正方形の中心から頂点までは(対角線 の半分)です。3ではありません。
ミス4:表面の最短距離で展開を1通りしか試さない
3通りすべて計算して最小を選びます。
ミス5:立体の対角線と表面の最短距離を混同する
- 立体の対角線 … 中を突き抜ける。
- 表面の最短距離 … 面の上を通る。展開図で直線
表面のほうが必ず長くなります。
練習問題
- 縦2、横3、高さ6の直方体の対角線の長さを求めなさい。
- 1辺4の立方体の対角線の長さを求めなさい。
- 1辺4の正方形の対角線の長さと、その半分を求めなさい。
- 底面が1辺8の正方形、側面の辺が の正四角錐の高さを求めなさい。
- 縦1、横2、高さ3の直方体で、表面を通る最短距離を求めなさい(3通り計算して最小を選ぶ)。
- 5の直方体の立体の対角線を求め、5の答えより短いことを確かめなさい。
解答
- より7
- より 。1辺の 倍 ○
- 対角線は 、半分は
- 中心から底面の頂点までは (対角線 の半分)。 より。検算: ○
- 3通り:、、。最小は18なので。検算:、、 ○
- より 。 より短い ○
まとめ
- 立体を切って平面を1枚取り出す。取り出したら普通の三平方
- 直方体の対角線は(2段階でも同じ)
- 立方体の対角線は1辺の 倍
- 「正」がつく錐は垂線の足が底面の中心
- 正方形の中心から頂点までは対角線の半分( 倍)
- 表面の最短距離は展開図で直線。3通り試して最小
- 検算は座標で計算/大小関係/三平方が成り立つか
「空間の問題を平面に落とす」という発想は、高校の空間ベクトルや空間座標でさらに徹底されます。そこではすべてを座標で処理するため、図を描く必要さえなくなります。中3の段階では「平面を1枚取り出す」——この手順を身につけておけば、空間図形が特別な難しさを持たなくなります。
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