。中3で習う三平方の定理は使えるけれど、証明を見せられてもピンとこない——教科書の証明が図の操作だけで進むので、どこが要点なのか分かりにくいのです。
ここでは面積を2通りに数えるという一つの発想だけで、3種類の証明を追います。どれも中学の知識で完結します。
結論:同じ図形の面積を、2通りの数え方で表す
三平方の定理の証明はどれも同じ構造です。
- 直角三角形を何個か組み合わせて、大きな正方形を作る
- その面積を「1辺×1辺」で数える
- 同じ面積を「三角形の合計+内側の図形」でも数える
- 2つが等しいので、式を整理すると が出る
この「同じものを2通りで数える」が核心です。それさえ掴めば、どの証明図を見ても迷いません。
証明1:外側に正方形を作る(いちばん分かりやすい)
直角をはさむ2辺が 、斜辺が の直角三角形を4つ用意します。
これを、1辺 の大きな正方形の内側に、風車のように配置します。すると真ん中に1辺 の正方形の穴ができます。
数え方1:外側の正方形として
数え方2:三角形4個+内側の正方形
直角三角形1個の面積は なので、4個で 。内側の正方形は 。
等しいとおく
両辺から を引いて
これで証明終わりです。使ったのは「正方形の面積」「三角形の面積」「展開」だけ。
なぜ内側が正方形になるのか
ここが省略されがちですが、大事な部分です。
内側の四角形は4辺とも なのでひし形。さらに、直角三角形の2つの鋭角を とすると 。内側の四角形の1つの角は、直線から と を除いた残りなので
4辺が等しく、角が直角。だから正方形です。
証明2:内側に正方形を作る
今度は1辺 の正方形の内側に、同じ直角三角形4つを配置します。すると真ん中に1辺 の小さな正方形ができます( とする)。
数え方1
数え方2
等しいとおく
同じ結論に到達しました。配置を変えても、発想は「面積を2通りで数える」で共通です。
証明3:相似を使う(高校につながる)
直角三角形 ()で、 から斜辺 に垂線 を下ろします。
すると3つの三角形がすべて相似になります。
理由:どれも直角を持ち、角Aまたは角Bを共有するので、2角が等しいからです。
より
より
辺々を足すと
が出ました。 という当たり前の事実が効いています。
【検算】具体的な数で3つの証明を確かめる
、、 の直角三角形で数値を追います。
| 証明 | 数え方1 | 数え方2 | 一致 |
|---|---|---|---|
| 証明1 | ○ | ||
| 証明2 | ○ | ||
| 証明3 | ○ |
証明3の は、 より から出ます。同様に で、和は 。確かに一致します。
逆も成り立つ(直角の判定に使える)
が成り立てば、その三角形は直角三角形です。これを三平方の定理の逆といいます。
だから3辺の長さから直角かどうかを判定できます。
| 3辺 | 計算 | 判定 |
|---|---|---|
| 3, 4, 5 | 直角三角形 | |
| 5, 12, 13 | 直角三角形 | |
| 8, 15, 17 | 直角三角形 | |
| 4, 5, 6 | 直角でない |
【検算】4, 5, 6 の三角形で最大角を余弦定理で計算すると 、すなわち約 。直角より小さい鋭角三角形でした。
よくあるミス
ミス1:斜辺がどれか取り違える
は必ず直角の向かい側(最も長い辺)です。、 と与えられて を求めるとき、 としてしまうミスが多いです。
正しくは より 、。
確認法:出した答えが斜辺より長くなっていないか見る。 なら明らかにおかしいと気づけます。
ミス2: を外し忘れる
まで出して と答えてしまう。求めているのは辺の長さなので、平方根をとって です。
ミス3:直角三角形でないのに使う
三平方の定理は直角三角形でのみ成り立ちます。図に直角の印があるか、必ず確認してください。直角でないなら余弦定理(高校)を使います。
練習問題
- 直角をはさむ2辺が と のとき、斜辺を求めなさい。
- 斜辺が 、他の1辺が のとき、残りの辺を求めなさい。
- 直角をはさむ2辺が と のとき、斜辺を求めなさい。
- 3辺が の三角形は直角三角形か判定しなさい。
- 1辺が の正方形の対角線の長さを求めなさい。
解答
- 、よって斜辺は
- より 、
- より (直角二等辺三角形の辺の比 )
- 。直角三角形
- 対角線は正方形を2つの直角三角形に分ける。 より
まとめ
- 三平方の定理の証明は「同じ面積を2通りで数える」という一つの発想でできている
- 外側に正方形を作る/内側に作る/相似を使う——どれも同じ構造
- 相似を使う証明は、 という当たり前の事実が要
- 逆も成り立つので、3辺の長さから直角かどうかを判定できる
- は必ず斜辺(最長辺)。位置を取り違えない
三平方の定理は、高校の三角比(余弦定理は三平方の一般化)、座標平面上の距離、空間ベクトルの大きさ、数IIIの曲線の長さまで、形を変えて使い続けます。証明の発想「2通りで数える」は、その後の数学でも繰り返し出てくる考え方です。
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