仕事算では、いきなり「全体の仕事量を1とする」と言われます。
なぜ1でよいのでしょうか。2でも36でも100でも、答えは変わらないからです。
結論:全体量は問題に書かれていない
ある仕事をAは12日、Bは18日で終えます。2人でやると何日かかりますか。
問題文に「仕事の大きさ」は書かれていません。書かれているのはかかる日数だけ。
ということは、全体量をいくつに決めても答えは同じはずです。だからいちばん扱いやすい数を自分で決めてよい——それが「1とおく」の意味です。
やってみる:全体を1とする
1日あたりの仕事量
Aは12日で全部終えるので、1日では
Bは同じく
2人あわせて
全体を終えるまでの日数
7.2日です。
【検算1】7.2日で終わる量を計算します。
ちょうど全体 ○
【検算2】速いほうのAは12日。2人なら7.2日——単独より短くなっています ○
本当に「1」でなくてもよいのか
同じ問題を、別の数で解いてみます。
全体を36とすると
1日あたりAは3、Bは2。あわせて5なので
同じ7.2日 ○
全体を100とすると
やはり7.2日 ○
全体量を何にしても、日数は変わらない
理由は簡単です。全体量を2倍にすれば、1日あたりの量も2倍になる。割り算では約分されて消えます。
だったら36のほうが楽ではないか
そのとおりです。12と18の最小公倍数を全体にすると、分数が出てきません。
| 全体量 | Aの1日 | Bの1日 | 合計 | 日数 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 1/12 | 1/18 | 5/36 | 7.2 |
| 36 | 3 | 2 | 5 | 7.2 |
| 100 | 25/3 | 50/9 | 125/9 | 7.2 |
整数だけで計算できます。「1とおく」は決まりではなく、選択肢の1つです。
【検算】3人の場合でも確かめます。Aが6日、Bが12日、Cが4日で終える仕事なら、最小公倍数は12。
2日。全体を1として解いても
一致 ○
途中で交代する問題
Aが12日、Bが18日で終える仕事を、まずAが3日働き、残りをBが1人で仕上げます。全部で何日かかりますか。
全体を1とします。Aが3日でやった量は
残りは
Bは1日 なので
合計は 、16.5日です。
【検算1】それぞれの仕事量を足します。
ちょうど全体 ○
【検算2】B単独なら18日、A単独なら12日。16.5日はその間——Aが少し手伝ったぶんだけ18日より短い ○
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 「1とおく」が手順として示されやすいから
解き方としては「全体を1とする」で十分です。だから理由まで踏み込む場面が作られにくい。
ところが「何とおいてもよい」と分かっていれば、最小公倍数を選んで分数を避けるという手が使えます。この自由度が示されないと、毎回分数で苦労することになります。
2. 分数の割り算と同時に出てくるから
仕事算は分数÷分数を使います。この計算自体、学習してすぐの内容です。
計算の負担が大きい単元の直後に置かれる構成のため、意味の説明より計算を通すことに時間が向きやすいのです。
3. 速さの学習と別の単元に並ぶから
「1日あたりの仕事量」は、「1時間あたりに進む道のり」=速さとまったく同じ構造です。
ところが速さと仕事算は別の単元として並びます。同じ考え方だと示される場面が少ないため、新しい解法として覚え直すことになりがちです。
【検算】3つの方法
1. 日数 × 1日あたりの量 = 全体 になるか
最も確実です。
【検算】 ○
2. 全体量を別の数にして解き直す
1と最小公倍数の両方で解くと、計算ミスがすぐ分かります。
【検算】 ○ 1でおいたときと一致
3. 答えの範囲が妥当か
複数人でやれば、いちばん速い人の単独日数より必ず短くなります。
【検算】 ○ もし12日より長い答えが出たら、どこかが間違いです
よくあるミス
ミス1:日数をそのまま足す
足すのは1日あたりの仕事量です。日数は足せません。
ミス2:日数の平均を答える
15日は誤り。2人なら単独より速くなります。
ミス3:最後に逆数を取り忘れる
全体 ÷ 1日あたりで日数に戻します。
ミス4:交代の問題で残りを求め忘れる
1から引いてから割ります。
ミス5:全体量を途中で変える
1つの問題では最後まで同じ数を使います。
ミス6:日数を整数に丸める
7.2日は7.2日。分数のままでも構いません。
練習問題
- Aが12日、Bが18日で終える仕事を2人でやる日数を、全体1として求めなさい。
- 同じ問題を、全体を36として解きなさい。
- 1と2の答えが一致する理由を答えなさい。
- Aが6日、Bが12日、Cが4日の仕事を3人でやる日数を求めなさい。
- Aが3日やってから残りをBが仕上げるときの合計日数を求めなさい。
- 5の答えを仕事量の合計で検算しなさい。
- 2人でやった日数が12日より長くならない理由を答えなさい。
解答
- 、7.2日
- 、7.2日
- 全体量を何倍にしても1日あたりの量が同じ倍になり、割り算で消えるから
- 最小公倍数12で 、2日
- 、、合計16.5日
- ○
- Bが手伝うぶんだけ速くなるから。人が増えて遅くなることはない
まとめ
- 仕事算では全体量が問題に書かれていない
- だからいくつに決めても答えは同じ
- 1は扱いやすい。最小公倍数なら分数が消える
- 足すのは1日あたりの仕事量(日数ではない)
- 「1日あたり」は速さと同じ考え方
- 検算は日数×1日分=全体/別の全体量で解き直す/最速の人より短いか
「全体を1とおく」は、おまじないではありません。答えに影響しない量だから、自分の都合で決めてよい——数学ではよく使われる考え方です。何とおいてもよいと分かった瞬間から、仕事算は暗記する解法ではなくなります。
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