対数方程式を解いて答えが2つ出た。片方は不適——でもなぜ不適なのかを説明できますか。
「真数条件を忘れずに」と言われますが、忘れる原因は「最後に確認するもの」だと思っていることです。正しくはいちばん最初に書く。
結論:真数条件は式を立てた直後に書く
が意味を持つのは のとき
答案の型はこうです。
- 真数条件を書く(これで の範囲が出る)
- 方程式・不等式を解く
- 範囲に入るものだけ答える
最初に書けば忘れません。しかも範囲が先に分かるので、解の取捨が機械的になります。
なぜ真数は正なのか
は という意味でした。 なので は必ず正。
したがって が0以下になることはありえません。定義そのものから出る条件です。
なぜ余分な解が出るのか
ここが本題です。原因は対数をまとめる操作にあります。
この等式が成り立つのは かつ のときだけです。
ところがまとめた後の は、 でありさえすれば意味を持ちます。
範囲が広がってしまう
| 必要な条件 | |
|---|---|
| まとめる前 | かつ |
| まとめた後 | (両方負でもよい) |
【検算】 で確かめます。積は なので は計算できます。
しかし も も定義されません ○
まとめた瞬間に条件がゆるくなり、そこに余分な解が入り込む——これが「不適な解」の正体です。
やってみる1:方程式
を解け。
ステップ1:真数条件
かつ
厳しいほうを取って。
ステップ2:解く
ステップ3:範囲で絞る
を満たすのは だけ。
【検算】 を代入します。
一致 ○
【検算2】 がなぜダメか確かめます。
どちらも負なので が定義されません ○
ただし積は なので、まとめた式だけを見れば成り立っているように見える。だから紛れ込むのです。
やってみる2:不等式
を解け。
真数条件
解く
右辺を対数の形にそろえます。 なので
底が2(1より大きい)なので、大小関係はそのまま。
合わせる
【検算】3つの点で確かめます。
| 真数 | か | ||
|---|---|---|---|
| 2(内側) | 1 | 0 | 成立 ○ |
| 10(外側) | 9 | 約3.17 | 不成立 ○ |
| 1(境界) | 0 | 定義されない | 除外 ○ |
真数条件を落とすと だけになり、 なども答えに入ってしまいます。
やってみる3:底が1より小さいとき
もう1つの落とし穴です。
を解け。
真数条件
解く
なので
底が (1より小さい)なので、対数は減少関数。したがって不等号が反転します。
合わせる
【検算】 で確かめます。
で成立 ○ なら で は不成立 ○
底が1より小さいときは不等号が反転する——真数条件と並ぶ2大注意点です。
やってみる4:もう1問
を解け。
真数条件は かつ より。
。範囲から。
【検算】
一致 ○ は真数が と で両方負。積は4で正なので、やはり紛れ込んでいました ○
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 「定義から明らか」なので、注意書きで済まされやすいから
真数が正であることは対数の定義そのものです。だから教科書には定義のところに1行書かれます。
ところが答案では毎回書く必要がある要素。定義の一部としての記述と答案で必ず書く手順の間にはギャップがありますが、それは採点の話なので教科書の記述としては表れにくい。
2. 「なぜ余分な解が出るのか」の説明が省かれやすいから
不適な解が出るのは対数をまとめる操作で条件がゆるくなるからです。
この説明には「同値変形かどうか」という論理の話が必要で、計算の流れとは別の枠組みになります。解法の説明の中に入れにくいため、「とにかく最後に確認せよ」という形になりやすい。理由を知れば、確認は忘れなくなります。
3. 底が1未満のときの反転と同時に問われるから
不等式では真数条件と底による不等号の向きを同時に処理します。
それぞれは単純ですが、2つ同時になると難度が上がる。しかも底が1未満の例は標準の演習では数が少ないため、練習量が不足しやすい部分です。
【検算】3つの方法
1. 求めた解を元の式に代入する
まとめる前の式に代入するのがポイントです。真数が正かも同時に見えます。
【検算】: ○
2. 除外した解が本当に不適か確かめる
「なぜ落としたか」を説明できる状態にします。
【検算】:真数が と で負 ○
3. 不等式は範囲の内外でテストする
内側の点で成立、外側の点で不成立を確かめます。
【検算】: で成立、 で不成立 ○
よくあるミス
ミス1:真数条件を最後に思い出す
最初に書きます。忘れる余地がなくなります。
ミス2:真数条件を1つしか書かない
対数の個数だけ条件があります。すべての真数について書きます。
ミス3:条件を「または」でつなぐ
「かつ」です。すべて同時に満たす必要があります。
ミス4:底が1未満で不等号を反転させない
なら反転します。
ミス5:底の条件を忘れる
底は正で1でない。底に文字が入る問題では必ず確認します。
ミス6:まとめた後の式に代入して検算する
まとめる前の式で確認しないと、不適な解も通ってしまいます。
練習問題
- を解きなさい。
- 1で が不適な理由を説明しなさい。
- を解きなさい。
- を解きなさい。
- を解きなさい。
- を解きなさい。
- 真数条件を最初に書くとよい理由を述べなさい。
解答
- 真数条件 。 より 。。検算: ○
- 、 で真数が負だから。積が8で正なので、まとめた式では見かけ上成り立ってしまう
- 真数条件 、 より 。。検算: で ○
- 真数条件 、底が1未満で反転して 。。検算: で ○
- 真数条件 。 より 。。検算: ○
- 真数条件 。 より 、。。検算: ○
- 先に範囲が確定するので、解の取捨が機械的になり、書き忘れも起きないから
まとめ
- 真数条件は式を立てた直後に書く(最後ではない)
- 真数が正なのは が常に正だから
- 余分な解が出るのはまとめる操作で条件がゆるくなるから
- 条件は対数の個数だけ、すべて「かつ」でつなぐ
- 底が1より小さいと不等号が反転する
- 検算はまとめる前の式に代入する
- 除外した解もなぜ不適かを言えるようにする
「変形の途中で条件が変わる」——これは対数だけの話ではありません。両辺を2乗する、分母を払う、置き換える。どれも同値性が崩れる可能性があります。変形するたびに、条件が広がっていないかを見る。この習慣がつけば、答案から「不適な解」が消えます。
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