食塩水の問題は、方程式の文章題で最後まで苦手なまま残りやすい型です。「濃度を足す」「濃度を平均する」といった間違いが、いつまでも直らない。
原因は1つです。濃度は足せない量なのに、足せる量だと思っていること。足していいのは食塩の重さだけ——これを握れば、すべての食塩水の問題が同じ形になります。
結論:立てる式は「食塩の重さ」で1本
食塩水の問題で等しくなるのは、混ぜる前後の食塩の重さです。
(混ぜる前の食塩の合計)=(混ぜた後の食塩)
食塩は消えたり増えたりしません。水を足しても、蒸発させても、食塩の重さは変わらない。だからここが不変量になります。
そして食塩の重さは
食塩の重さ = 食塩水の重さ × 濃度
という形で計算します。濃度が なら100で割ります。
なぜ濃度は足せないのか
まず、この誤解を完全に潰します。
5%の食塩水100gと、15%の食塩水100gを混ぜたら何%になるでしょうか。
20%ではありません。足すのは間違いです。では10%(平均)でしょうか。この場合はたまたま正解ですが、理由が違います。
食塩の重さで計算します。
- 5%の100g … 食塩は g
- 15%の100g … 食塩は g
- 混ぜた後 … 食塩 g、食塩水 g
10%です。平均と一致しましたが、それは重さが同じだったからにすぎません。
重さが違うと平均は通用しない
5%の食塩水100gと、15%の食塩水300gを混ぜます。
- 食塩 … g()
- 食塩水 … g
12.5%です。単純平均の10%とは大きく違います。
濃度は「割合」であって「量」ではない。量でないものは足せません。足せるのは食塩の重さと食塩水の重さだけです。
基本の型3つ
型1:混ぜる
8%の食塩水200gに、3%の食塩水を何gか混ぜて、6%の食塩水を作りたい。3%の食塩水を何g混ぜればよいか。
ステップ1:3%の食塩水を gとする。
ステップ2:食塩の重さを全部書きます。
| 食塩水(g) | 濃度 | 食塩(g) | |
|---|---|---|---|
| A | 200 | 8% | |
| B | 3% | ||
| 混ぜた後 | 6% |
この表を書くのが最大のコツです。表さえ埋まれば、式は最後の列を で結ぶだけになります。
ステップ3:食塩の重さが等しいので
100倍して 、つまり 。
割り切れません。そのまま分数で答えます。 g(約133.3g)。
【検算】食塩の合計は g。食塩水は g。
6%。一致しました。
型2:水を加える
10%の食塩水300gに水を加えて、6%にしたい。水を何g加えればよいか。
水には食塩が入っていません。だから食塩の重さは変わりません。
- 食塩 … g(加える前も後も30g)
- 食塩水 … g
100倍して 、、。
200g加えます。
【検算】。6%です。
水を加えるときは、左辺が定数になる——これが型2の特徴です。式が一気に簡単になります。
型3:食塩を加える
5%の食塩水400gに食塩を加えて、20%にしたい。食塩を何g加えればよいか。
ここが最も間違えやすい型です。食塩を加えると、食塩の重さも食塩水の重さも両方増えます。
- 食塩 … g
- 食塩水 … g
10倍して 、、。
75gです。
【検算】食塩は g、食塩水は g。
20%。合っています。
食塩水の重さに を足し忘れるのが最多のミスです。加えた食塩も食塩水の一部になります。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 割合の基礎が小学校の内容として既習扱いになるから
百分率、割合、もとにする量・比べる量は小学校で学びます。中1の方程式では、これを既習として文章題の題材にします。
ところが食塩水の問題でつまずく人の多くは、方程式ではなく割合の側でつまずいています。「 をかけるのか割るのか」という迷いは、方程式の問題ではありません。戻るべき場所が小学校の内容なので、中学の授業内で立ち止まる場所が構造上ないのです。
2. 「濃度は足せない」と明示的に扱う場面が作りにくいから
濃度を足したり平均したりする誤りは非常に多いのですが、これを正面から扱うには「間違った計算」を提示する必要があります。
問題演習は正しい解法を示す形で進むため、誤りのパターンそのものを主題にする場面は構成上作りにくい。結果として、各自が自分で気づくまで誤解が残りやすくなります。
だから自分で一度、重さの違う2つを混ぜて計算してみることに意味があります。5%の100gと15%の300gで12.5%になる——この1回の計算が、平均という誤解を確実に壊します。
3. 表を書く手順が、解答例には現れないから
食塩水の問題は表を書けばほぼ機械的に解けます。しかし解答例に載るのは完成した方程式とその解き方であって、表を作る過程は書かれません。
この構成上、「答えにたどり着いた道筋」ではなく「答えの形」だけが伝わります。表を書く習慣は、自分で意識して身につけるしかありません。
【検算】必ず濃度に戻す
食塩水の検算は「食塩 ÷ 食塩水」を計算して、目標の濃度になるか——これ一択です。
| 型 | 解 | 食塩 | 食塩水 | 濃度 |
|---|---|---|---|---|
| 混ぜる | g | 20 g | g | 6% ○ |
| 水を加える | 200 g | 30 g | 500 g | 6% ○ |
| 食塩を加える | 75 g | 95 g | 475 g | 20% ○ |
もう1つ、答えが常識的な範囲にあるかも見てください。
- 8%と3%を混ぜたら、濃度は必ず3%と8%の間になる
- 水を加えたら、濃度は必ず下がる
- 食塩を加えたら、濃度は必ず上がる
この範囲を外れた答えが出たら、立式が間違っています。計算する前に方向だけ確認しておくと、大きな事故を防げます。
よくあるミス
ミス1:濃度どうしを足す・平均する
や には意味がありません。足せるのは食塩の重さと食塩水の重さだけです。
単純平均が正しくなるのは混ぜる2つの重さが等しいときだけという、限られた場合です。
ミス2:食塩を加えたのに食塩水の重さを増やさない
としてしまうミス。加えた食塩も食塩水の一部なので、右辺は です。
表を書けば必ず防げます。「混ぜた後」の行の食塩水の欄を空にしないこと。
ミス3:水を加えたのに食塩を増やす
逆方向のミスです。水に食塩は入っていません。食塩の重さは変わらず、食塩水だけが増えます。
ミス4:%のまま計算する
と書いて計算すると、100倍ずれます。 にするか、式全体を100倍して整数にするかのどちらかに統一してください。
おすすめは後者です。 のように整数で扱えるので、小数の計算ミスがなくなります。
練習問題
- 6%の食塩水150gに含まれる食塩は何gか。
- 12%の食塩水200gに水を加えて8%にしたい。水を何g加えればよいか。
- 4%の食塩水300gに食塩を加えて20%にしたい。食塩を何g加えればよいか。
- 10%の食塩水100gと4%の食塩水200gを混ぜると何%になるか。
- 5%の食塩水を何gか、15%の食塩水200gに混ぜて9%にしたい。何g混ぜればよいか。
- 8%の食塩水250gから水を蒸発させて10%にしたい。何g蒸発させればよいか。
解答
- 9 g
- 食塩は gで変わらない。、、、 g。検算: ○
- 食塩は 、食塩水は 。、、、 g。検算: ○
- 食塩は g、食塩水は300g。 より6%。単純平均の7%ではありません
- 、、、 g。検算:食塩 、食塩水500g、 ○
- 食塩は gで変わらない。、、 g。検算: ○
まとめ
- 等しくなるのは食塩の重さ。式は必ずここで1本立てる
- 濃度は足せない・平均できない。足せるのは食塩と食塩水の重さだけ
- 水を加える→食塩は不変/食塩を加える→食塩も食塩水も増える/蒸発→食塩は不変で食塩水が減る
- 表を書く。食塩水・濃度・食塩の3列を埋めれば、式は自動的に立つ
- 検算は食塩÷食塩水を計算して目標の濃度になるか
- 方向の確認(上がるはずか下がるはずか、混ぜたら間に入るか)で大事故を防げる
「不変量を見つけて、それで式を立てる」という考え方は、中2の連立方程式(食塩と食塩水で2本立てる)、高校の化学の濃度計算、さらには物理の保存則まで一貫して使われます。何が変わらないのかを先に決める——中1の食塩水は、その練習として最も分かりやすい題材です。
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