相加相乗平均で最小値を求めたのに、点が半分しか来ない——原因はほぼ1つです。等号成立条件を書いていない。
これは「おまけ」ではありません。等号が成り立つ値が実際に存在することを示さないと、その値が最小値だと言えないからです。
結論:不等式だけでは最小値と言えない
のとき (等号は のとき)
よく使う形は、両辺を2倍したこちらです。
なぜ等号成立条件が必要なのか
たとえば が示せたとします。これだけでは最小値が4とは言えません。
が実際に4になる がなければ、4は「下から押さえた値」であって、届かない値かもしれない。
「 のとき 」まで言って、はじめて最小値4と確定します。
証明:2乗が0以上、それだけ
なので が使えます。
左辺を展開すると
等号が成り立つのは 、つまり のときだけ。
証明の中に等号成立条件が最初から含まれていることが分かります。忘れるのは、証明を経由せず結果だけ覚えているからです。
がないとどうなるか
で試します。
で、不等号が逆向きになっています。正の数という条件は必須です。
使いどころ:積が一定のとき
のとき の最小値を求めよ。
2つの項の積を見ます。
が消えて一定になりました。これが使える合図です。
等号成立条件は 、つまり 。 より 。
したがって のとき最小値4です。
【検算】 を代入すると
確かに4になりました ○
【検算2】前後の値でも確かめます。
| 1 | 1.5 | 2 | 3 | 4 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 5 | 4 | 5 |
が谷底になっています ○
積が一定になるように変形する
のとき の最小値を求めよ。
そのままでは使えません。まず展開して整理します。
と の積が16で一定。定数の10は外に出しておきます。
等号は 、、 より。
【検算】 を代入します。
一致 ○ 定数項をよけてから使うのがコツです。
最大の罠:定義域が制限されているとき
のとき の最小値を求めよ。
相加相乗平均を使うと
等号成立は 。ところが なので、 は範囲外です。
この2は最小値ではありません。等号が成り立たないからです。
正しくは
の範囲では は増加していきます。したがって最小は端点の 。
【検算】いくつか代入します。
| 3 | 4 | 5 | 10 | |
|---|---|---|---|---|
| 4.25 | 5.2 | 10.1 |
が最小で、確かに2にはなりません ○
等号成立条件が定義域に入っているかを必ず確認してください。これが書かれていないと、答えが合っていても論理が成立しません。
条件つきの最小値
のとき の最小値を求めよ。
通分すると
を大きくすれば全体は小さくなるので、 の最大値を探します。
相加相乗平均から
したがって
等号は 、条件と合わせて。これは を満たします。
【検算】代入すると
一致 ○
【検算2】 では ○
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 等号成立条件が「公式の付属品」に見えるから
教科書では「等号は のとき成り立つ」と、定理の一部として1行で書かれます。
ところが答案ではこれを書かないと最小値の議論が完結しません。公式の一部としての記載と答案で必ず書くべき要素の間には大きな差がありますが、その差は採点基準の話であって教科書の記述の話ではないため、明示されにくい位置にあります。
2. 「積が一定のとき使える」という適用条件が示されにくいから
定理そのものはすべての正の数について成り立ちます。制限はありません。
しかし最小値を求める道具として役に立つのは、積が一定になる場合だけ。この「使いどころ」は定理の内容ではなく使い方の知識なので、例題を通じて自分で気づく形になりやすい。
3. 定義域が制限された例題が標準では出にくいから
のような制限つきの問題は相加相乗平均が使えない例です。
教科書はその定理が使える例を並べる構成になるため、使えない場合の見分け方は演習の外に置かれやすい。ところが入試ではここが問われます。等号成立条件を確認する習慣だけが、この罠を防ぎます。
【検算】3つの方法
1. 等号成立の値を実際に代入する
これが最も重要です。代入してその値になれば、最小値が確定します。
【検算】 で ○、 で ○
2. 前後の値を入れて谷になっているか
等号成立の点の両側で値が大きくなることを確かめます。
【検算】 で5、 で4、 で約4.33 ○
3. 条件(正の数・定義域)を確認する
か、そして等号成立の値が定義域内か。
【検算】 の問題で は範囲外 ○(だから使えない)
よくあるミス
ミス1:等号成立条件を書かない
最小値の主張が成立しません。不等式を示しただけです。
ミス2:等号成立の値が定義域外なのに気づかない
必ず範囲を確認します。外なら別の方法(増減)で求めます。
ミス3:積が一定でないのに使う
が消えるかを先に確かめます。
ミス4:負の数に使う
正の数でないと成り立ちません。 なら として変形します。
ミス5:定数項も一緒に扱う
では10をよけてから使います。
ミス6:最大値に使おうとする
は下からの評価です。和が一定のとき積の最大を出すなど、向きに注意します。
練習問題
- のとき の最小値と、そのときの を求めなさい。
- のとき の最小値と、そのときの を求めなさい。
- のとき の最小値を求めなさい。
- のとき の最小値を求めなさい。
- のとき、相加相乗平均の不等式が成り立たないことを確かめなさい。
- のとき の最小値を求めなさい。
- から相加相乗平均の不等式を導きなさい。
解答
- 積は で一定。。等号は より 。 のとき最小値4。検算: ○
- 。等号は 。 のとき最小値18。検算: ○
- 等号成立の は範囲外。 で増加するので のとき。検算: で4.25 > 3.33 ○
- で より最小値4()。検算: ○
- 、。 で不等号が逆。正の数の条件が必要
- 積は で一定。。等号は より 。最小値8。検算: ○
- 展開して 、移項して 。等号は すなわち
まとめ
- ()、等号は
- 証明は だけ。等号条件も同時に出る
- 等号成立条件を書かないと、最小値の主張が成立しない
- 使えるのは2項の積が一定のとき(定数はよける)
- 等号成立の値が定義域内か必ず確認。外なら別の方法へ
- 負の数には使えない
- 検算は代入してその値になるか/前後で谷か/条件の確認
「不等式を示すこと」と「最小値を求めること」は別です。不等式は下限を与えるだけで、その下限に届くかどうかは別の議論。この区別は、数IIIの極限や、大学以降の解析でも同じ形で繰り返し出てきます。等号成立条件は、答案の飾りではなく論理の一部です。
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