、 のとき を求めよ—— と を求めずに答えが出る。この仕組みが分からず、わざわざ を求めてから代入している人が多い問題です。
実は求めなくていい。それどころか、 と が無理数になる問題では求めないほうが圧倒的に速い。鍵は対称式という考え方です。
結論:対称式は「和と積」だけで書ける
対称式とは、 と を入れ替えても変わらない式のことです。
| 式 | 入れ替えると | 対称式か |
|---|---|---|
| で同じ | ○ | |
| で同じ | ○ | |
| で同じ | ○ | |
| で符号が変わる | ×(交代式) |
そして次の事実が成り立ちます。
どんな対称式も、 と だけで書き表せる
この と を基本対称式といいます。基本という名前は、すべての対称式の材料になるという意味です。
なぜ和と積だけで足りるのか
核心は2乗の展開にあります。
ここから を移項すると
が、和と積だけで書けました。
【検算】、 なら
実際の値でも確かめます。、 を満たすのは 。
一致しました ○
よく使う変形
同じ発想で、次の形が作れます。覚えるのではなく、その場で作れることが大事です。
| 求めたい式 | 和 、積 で書くと |
|---|---|
それぞれの作り方を確認します。
:展開すると 。 を代入して
:通分するだけです。
:3乗の展開から作ります。
移項して
【検算】、()で確かめます。
| 式 | 公式で | 直接計算 |
|---|---|---|
| ○ | ||
| ○ | ||
| ○ | ||
| ○ |
4つとも一致しました。
威力が出るのは無理数のとき
ここが本題です。 と が汚い数のとき、対称式の効果が最大になります。
、 のとき、 を求めなさい。
まともに計算すると:、。足して14。できなくはありませんが手数が多い。
対称式なら:
- ( が消える)
- (平方の差で消える)
【検算】直接計算した14と一致 ○
和も積も整数になる——これが対称式の使いどころです。 の組は、足しても掛けても √ が消えます。
ならさらに差が開きます。
【検算】、。足して52 ○
交代式:符号が変わる式
のように、入れ替えると符号が変わる式を交代式といいます。
交代式はそのままでは和と積で書けません。理由は明確で、 と は入れ替えても変わらないのに、 は変わってしまうからです。
ただし2乗すれば対称式になります。
だから交代式の扱いは
- 2乗して対称式にする
- と で計算する
- 平方根をとる(符号は別に決める)
【検算】、 なら なので 。
実際 なら 、 なら 。どちらもありうるので が正しい ○
「大小関係が指定されていれば符号が決まる」——たとえば なら です。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 「解を求めてから代入」でも正解できるから
、 なら、解と係数の関係から を解いて 。代入すれば答えは出ます。
この方法でも正解できるので、対称式を使う必然性が生じません。差が出るのは解が無理数のときや解が求まらないときです。
「解を求めずに済む」という利点は、解が汚い問題を1度解いて初めて実感できます。
2. 基本対称式が「解と係数の関係」と別に扱われるから
と は、二次方程式 の2解について と にあたります。解と係数の関係そのものです。
ところが「解と係数の関係」は方程式の単元、「対称式」は式の計算の単元で扱われることが多く、同じものだと結びつきにくい。
方程式の2解に関する対称式は、解かずに求まる——この対応を知っていると、使える場面が一気に増えます。
3. 「作れる」ことより「覚える」ことに寄りやすいから
は短くて覚えやすい。だから公式として暗記されがちです。
ところが や まで覚えるのは非効率で、しかも混同します。
や を展開して整理するだけ——この作り方を持っていれば、どんな次数でも対応できます。
【検算】具体的な値で確かめる
対称式の変形は簡単な数を入れて確かめるのが最も速い検算です。
おすすめは (、)。
| 式 | 直接 | 公式() |
|---|---|---|
| ○ | ||
| ○ | ||
| ○ | ||
| ○ |
2組目で確かめるとさらに確実です。()で 、公式は ○
もう1つ、対称式かどうかの確認も忘れずに。 と を入れ替えて同じ式になるかを見ます。同じでなければ、和と積だけでは書けません。
よくあるミス
ミス1: としてしまう
を引き忘れるミスです。展開すれば必ず出てきます。
【検算】 なら だが 。違う ○
ミス2:交代式をそのまま で書こうとする
は書けません。2乗してから扱い、最後に符号を決めます。
ミス3: の係数を間違える
です。 でも でもありません。展開して作れば間違えません。
ミス4:符号を だけにする
から と決めつけるミス。 です。大小の条件があるときだけ1つに決まります。
ミス5:積が0のときに逆数を使う
は が前提です。 なら か が0で、逆数がありません。
練習問題
- 、 のとき を求めなさい。
- 1の条件で を求めなさい。
- 1の条件で を求めなさい。
- 、 のとき、 と を求めなさい。
- 4の条件で を求めなさい。
- 、、 のとき を求めなさい。
解答
- 29。検算: で ○
- 9。検算: ○
- 133。検算: ○
- 、4。どちらも整数になります
- 28。検算:、、和は28 ○
- より 。 なので
まとめ
- 対称式= を入れ替えても変わらない式
- どんな対称式も と だけで書ける(基本対称式)
- 作り方は や を展開して整理するだけ。覚える必要はない
- 、、
- 威力が出るのは が無理数のとき。 は和も積も整数になる
- 交代式は2乗して対称式にしてから扱い、最後に符号を決める
- 検算は など簡単な値を代入
基本対称式は、数Iの解と係数の関係、数IIの3次方程式の解の関係、さらに大学のガロア理論まで一直線につながる概念です。「解を求めずに、解についての情報を得る」——この発想は、方程式が解けない場合でも情報を引き出せる強力な道具になります。
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