対数微分法は「使いどころ」が分かれば強力な道具です。使う場面は3つに限られます。
- 指数に変数がある( など)——既存の公式が使えない
- 掛け算・割り算が多い—— で足し算・引き算に変わる
- 累乗根が混じって複雑——指数が前に出せる
この3つ以外では使いません。逆にこの形を見たら、すぐ対数微分法です。
結論:4ステップ
- 両辺の絶対値の自然対数をとる:
- 対数の性質で分解(積→和、商→差、累乗→係数)
- 両辺を で微分(左辺は )
- を掛けて を出す
なぜ左辺が なのか
連鎖律です。 を で微分すると、 を通して伝わるので
合成関数の微分そのものです。新しい公式ではありません。
使いどころ1:
この関数は、既存のどの公式でも微分できません。
| 公式 | 形 | は? |
|---|---|---|
| 底が変数、指数が定数 | 指数も変数 × | |
| 底が定数、指数が変数 | 底も変数 × |
底も指数も変数——だから対数微分法の出番です。
計算する
として、両辺の対数をとります。
両辺を で微分します。右辺は積の微分。
両辺に を掛けて
【検算1】 で計算します。 なので
数値微分()で確かめると約1.0000 ○
【検算2】 では なので
数値微分でも約30.31 ○
【検算3】 となるのは 、つまり 。
実際 はこの点で最小になります(値は約0.6922)○
使いどころ2:掛け算・割り算が多い
を微分せよ。
積の微分と商の微分を組み合わせると大変です。対数をとります。
掛け算が足し算に、割り算が引き算に、指数が係数に変わりました。
微分すると
【検算1】 で計算します。
数値微分でも約0.2140 ○
【検算2】 ○ 通分を確認しました。
【検算3】。 ○
使いどころ3:指数が関数になっている
()を微分せよ。
右辺は積の微分なので
【検算1】 で計算します。、 なので
数値微分でも約1.0000 ○
【検算2】 ○ 約分を確認しました。
絶対値をつける理由
真数は正でなければならないので、 の符号が分からないときは とします。
結果は同じです。 は の符号によらず成り立つからです。
【検算】 のとき 。微分すると
同じ形 ○
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 「使いどころ」が整理されにくいから
対数微分法は手順としては短いので、方法の説明はすぐ終わります。
ところがどの問題で使うかは別の知識。①指数に変数 ②積・商が多い ③累乗根が複雑——この3条件が整理されていないと、使うべき場面で思い出せません。
2. の由来が省かれやすいから
これは連鎖律を に適用しただけです。
ところが「両辺を微分すると になる」という結果だけ示されると、公式が1つ増えたように見える。陰関数の微分と同じ考え方だと知ると、見通しが良くなります。
3. 「既存の公式が使えない」ことが明示されにくいから
は累乗関数でも指数関数でもありません。
この事実を明示せずに「対数微分法で解きます」と進むと、なぜ普通の方法ではダメなのかが分からない。2つの公式を並べて、どちらも当てはまらないことを見る——それだけで納得できます。
【検算】3つの方法
1. 数値微分と比べる
【検算】 の :公式で1、数値微分でも約1 ○
2. 特別な点で簡単になるか確認する
、、 など、値が簡単になる点を選びます。
【検算】 の : が0で消えて1 ○
3. の形が妥当か見る
分数の和になっているはずです(積・商の場合)。項の数が因数の数と合うか確認します。
【検算】因数3つ → 項3つ ○
よくあるミス
ミス1:最後に を掛け忘れる
が出ただけです。 を掛けて にします。
ミス2: をもとの式に戻さない
答えは の式で書きます。
ミス3:絶対値をつけ忘れる
とします(符号が不明なとき)。
ミス4: を とする
累乗の公式は使えません。指数が定数でないからです。
ミス5:分解を間違える
積は和、商は差、累乗は係数。順に確認します。
ミス6:積の微分を忘れる
の微分は積の微分で 。
練習問題
- ()を微分しなさい。
- 1の での値を求めなさい。
- について を求めなさい。
- 3の での を求めなさい。
- ()を微分しなさい。
- 5の での値を求めなさい。
- 対数微分法を使う場面を3つ挙げなさい。
解答
- より 。
- 1。検算:数値微分も約1 ○
- 1。検算:数値微分も約1 ○
- ①指数に変数 ②積・商が多い ③累乗根が複雑
まとめ
- 使うのは①指数に変数 ②積・商が多い ③累乗根が複雑なとき
- 手順は①対数をとる ②分解 ③微分 ④ を掛ける
- は連鎖律から出る(新しい公式ではない)
- は累乗関数でも指数関数でもない
- 対数で積→和、商→差、累乗→係数
- 符号が不明なら絶対値をつける(結果は同じ)
- 検算は数値微分/簡単になる点/項の数
対数微分法は「掛け算を足し算に変える」という対数の本質を、微分に持ち込んだものです。複雑な積を、扱いやすい和に翻訳する。計算を楽にするために、いったん別の世界へ移る——この発想は、置換積分でもラプラス変換でも同じです。
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