角形の内角の和は 。なぜ2を引くのか——公式を覚えていても、この理由を説明できる人は多くありません。
理由が分かると、公式を忘れてもその場で作り直せます。しかも外角の和が になる理由も、同じ考え方から出てきます。
結論:三角形に分けると 個できるから
多角形の1つの頂点から、他の頂点へ対角線を全部引きます。すると多角形は三角形に分かれます。
そのとき三角形の個数がちょうど 個になります。三角形1つの内角の和は なので
内角の和 =
「」は三角形の個数から来ています。公式の中の には、ちゃんと意味がありました。
なぜ 個なのか
ここが本題です。1つの頂点から対角線を引くとき、引ける相手の頂点を数えます。
- 全部で 個の頂点がある
- 自分自身には引けない …
- 両隣の2つは、すでに辺でつながっている …
したがって対角線は 本引けます。
本の対角線で分けると、三角形は 個。1本引くごとに領域が1つ増えるので、「本数 」が個数になります。
【検算】実際に数えてみます。
| 多角形 | 対角線 | 三角形 | 内角の和 | |
|---|---|---|---|---|
| 三角形 | 3 | 0本 | 1個 | |
| 四角形 | 4 | 1本 | 2個 | |
| 五角形 | 5 | 2本 | 3個 | |
| 六角形 | 6 | 3本 | 4個 | |
| 十角形 | 10 | 7本 | 8個 |
四角形が なのは、長方形で確かめられます。 ○。
別の分け方でも同じになる
内部の1点からすべての頂点へ線を引く方法もあります。この場合、三角形は 個できます。
ただし、中心に集まった角(合計 )は内角ではありません。だから引きます。
同じ式になりました。分け方が違っても答えが同じ——これは公式が正しいことの強い証拠です。
【検算】五角形で試します。内部の点から5本引くと三角形は5個で 。中心の を引いて 。表の値と一致します。
外角の和が になる理由
こちらはもっと簡単です。しかも によらず一定という、驚くべき結果になります。
各頂点で、内角と外角は一直線をつくります。だから
(1つの内角)+(1つの外角)=
頂点は 個あるので、全部足すと
(内角の和)+(外角の和)=
内角の和は なので、外角の和は
が消えました。だから何角形でも外角の和は です。
直感的な説明
多角形の辺に沿って1周歩くことを想像してください。角を曲がるたびに、外角のぶんだけ向きを変えています。
1周して元の位置・元の向きに戻るので、向きの変化の合計はちょうど1回転=。
何角形でも「1周は1周」だから、外角の和は変わりません。
正多角形の1つの角
正 角形ではすべての角が等しいので、割り算だけで出ます。
- 1つの内角 …
- 1つの外角 …
外角のほうが圧倒的に簡単です。だから外角から求めて、 から引くのが速い。
例:正十二角形の1つの内角。
外角は 。内角は 。
【検算】内角の公式でも計算します。。一致しました。
| 正多角形 | 外角 | 内角 | 内角の公式でも |
|---|---|---|---|
| 正三角形 | ○ | ||
| 正方形 | ○ | ||
| 正六角形 | ○ | ||
| 正十角形 | ○ |
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 公式が短く、覚えるほうが早く見えるから
は10秒で覚えられます。導出を理解するには、対角線の本数を数え、三角形の個数を確認する必要があり、覚えるより時間がかかります。
短期的には暗記のほうが効率的に見える——この構造上、導出は後回しになりやすいのです。
ところが暗記だけだと、 か か迷ったときに確認できません。四角形で になるか試せば一発ですが、それも「確かめる」という発想があってこそです。
2. 外角の和が によらないことの意外性が扱われにくいから
内角の和は で変わるのに、外角の和は変わらない。これは本来かなり意外な事実です。
しかし公式として並べて提示されると、2つとも「覚えるべき公式」として同列に見えます。意外性が伝わらないと、記憶にも残りにくい。
「1周は1周だから」という説明を一度聞いておくだけで、外角の和は忘れなくなります。
3. 「多角形」の単元自体が短いから
内角の和・外角の和は、中2の「平行と合同」の一部として扱われます。合同の証明という大きな内容が同じ単元にあるため、多角形の角の性質に割かれる分量は限られます。
公式2つと計算練習で終わりやすく、導出まで扱う余地が構造的に少ないという位置にあります。
【検算】3つの確認法
1. 四角形で試す
公式を思い出せないときは、 を入れて になるかを見ます。
- … ○
- … ×
- … ×
長方形の内角の和が なのは確実に知っているので、これで公式が確定します。
2. 内角と外角を足して になるか
| 内角の和 | 外角の和 | 合計 | ||
|---|---|---|---|---|
| 3 | 180 | 360 | 540 | 540 ○ |
| 5 | 540 | 360 | 900 | 900 ○ |
| 8 | 1080 | 360 | 1440 | 1440 ○ |
3. 正多角形の内角が 未満か
内角が 以上になったら、計算ミスです。 を大きくすると に近づきますが、決して届きません。
よくあるミス
ミス1: を や にする
四角形で試せば一瞬で分かります。 にならなければ間違いです。
ミス2:外角の和も で変わると思う
外角の和はいつでも です。百角形でも 。
ミス3:正多角形の1つの内角を求めるとき、割り忘れる
は和です。1つぶんを求めるには で割ります。
ミス4:内角と外角を取り違える
外角は「辺を延長した外側の角」です。内角の隣にあり、足して 。
正六角形なら内角 、外角 。足して ○。
練習問題
- 七角形の内角の和を求めなさい。
- 正八角形の1つの外角と1つの内角を求めなさい。
- 内角の和が である多角形は何角形か。
- 1つの外角が である正多角形は何角形か。
- 1つの内角が である正多角形は何角形か。
- 九角形の1つの頂点から引ける対角線は何本か。また分かれる三角形は何個か。
解答
- 外角は 、内角は 。検算: ○
- より 、 で十一角形。検算: ○
- より で正十五角形。検算: ○
- 外角は 。 で正二十角形。外角から求めるのが速い。検算: ○
- 対角線は 6本、三角形は 7個。検算:内角の和は 、公式でも ○
まとめ
- の は三角形の個数
- 1つの頂点から引ける対角線は 本(自分と両隣を除く)。三角形はその で 個
- 内部の点から分ける方法でも で同じ
- 外角の和はいつでも 。1周は1周だから
- 正多角形は外角 から求めて から引くのが速い
- 公式に迷ったら四角形()で試す
「複雑な図形を、知っている図形に分解する」という発想は、この先ずっと使います。中3では面積を三角形に分けて求め、高校では多面体をオイラーの多面体定理で扱い、積分では図形を細かく分けて足し上げます。多角形を三角形に分ける——中2のこの一歩が、その最初の練習です。
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