点と直線の距離の公式は、覚えるのは簡単です。間違えるのは、使う前の準備で。
のままでは使えません。必ず の形に直す。ここを飛ばすと、どんなに公式を覚えていても答えが合いません。
結論:まず「 の形」に直す
点 と直線 の距離
使う手順は3つ。
- 直線を の形にする(右辺を0にする)
- 点の座標を分子に代入して絶対値をとる
- で割る
分子は「直線の式に点を代入した値」の絶対値——そう覚えると忘れません。
なぜこの形になるのか
直線 にとって、係数の組 は直線に垂直な向きを表します。
直線上の点を とすると 。この点から へのずれのうち、垂直な向きの成分だけが距離になります。
垂直方向の成分は
ここで なので
直線上のどの点を選んでも同じ式になる——それが、この公式が成り立つ理由です。
やってみる1:点 と直線
すでに の形なので、そのまま代入します。
距離は3です。
【検算】垂線の足を実際に求めます。垂直な向きは 、その長さは5なので、単位ベクトルは 。
点から距離3だけ戻ると
この点が直線上にあるか確かめます。
直線上にありました ○ そこまでの距離は
一致 ○
やってみる2: のとき
点 と直線 の距離を求めよ。
まず移項して の形にします。
これで 。
【検算】垂線の足を求めます。垂直な向きは 、長さ 。
直線上か確かめます。
○ 距離は
一致 ○ 約1.34です。
使いどころ1:三角形の面積
、、 を頂点とする三角形の面積を求めよ。
ABを底辺、Cからの距離を高さとします。
直線ABの式
傾きは なので 。 の形にすると
高さと底辺
【検算】座標から面積を直接出す公式でも計算します。
一致 ○ が約分で消えるのがこの方法の気持ちよさです。
使いどころ2:円と直線の位置関係
中心と直線の距離 と半径 を比べるだけです。
| 関係 | 位置 |
|---|---|
| 2点で交わる | |
| 接する | |
| 交わらない |
円 と直線 の位置関係を調べよ。
中心は原点、半径は5。
なので接します。
【検算】接点を求めます。原点から の向きに5進むと
円上か: ○ 直線上か: ○ 確かに接点です。
【検算2】連立して判別式でも確かめられます。接するなら重解になります。
使いどころ3:平行な2直線の距離
と の距離を求めよ。
一方の直線上の点を1つとって、もう一方との距離を求めます。
は1本目の上にあります()。2本目との距離は
【検算】公式の形でも。 と の距離は
一致 ○ どの点を選んでも同じになります。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 証明を素直にやると計算が重いから
垂線の足を実際に求めて距離を計算する道筋は、連立方程式と分数の処理が長く続きます。
簡潔な導出にはベクトルの内積(法線方向への射影)を使いますが、数Bのベクトルはこの後。使える道具がまだ揃っていない位置にあるため、公式の提示が中心になりやすい構成です。
2. 「 の形に直す」が公式の外にあるから
公式そのものは を前提にしています。その形に直す作業は、公式には書かれていません。
ところが問題文の直線は の形で与えられることが多い。前処理の必要性は、実際に間違えて初めて気づく種類のもので、手順として明示されにくい部分です。
3. 使いどころが別の項目に散らばっているから
この公式が本当に効くのは三角形の面積と円と直線の位置関係です。
しかし前者は直線の方程式、後者は円の方程式と、別の項目に置かれます。公式を習う時点では「何のためか」が見えにくいため、単独の計算練習で終わりやすい。
【検算】3つの方法
1. 垂線の足を求めて距離を計算する
最も確実です。足が直線上にあることも同時に確かめられます。
【検算】 は直線上、そこまでの距離は3 ○
2. 直線上の別の点との距離と比べる
垂線の長さが最短です。他の点との距離は必ず長くなります。
【検算】 上の点 と の距離は ○
3. 値が0以上か、直線上なら0か
距離は必ず0以上。点が直線上にあれば0になります。
【検算】 を に代入: なので距離0 ○
よくあるミス
ミス1: の形に直さない
は に直します。
ミス2:絶対値を忘れる
距離は正です。代入値が負になることは普通にあります。
ミス3:分母の を忘れる
です。 ではありません。
ミス4: の符号を落とす
なら 。2乗するので分母には効きませんが、分子では効きます。
ミス5:平行でない2直線に「2直線間の距離」を使う
交わる2直線の距離は0です。平行のときだけ意味があります。
ミス6:円と直線で中心以外の点を使う
中心からの距離と半径を比べます。
練習問題
- 点 と直線 の距離を求めなさい。
- 点 と直線 の距離を求めなさい。
- を頂点とする三角形の面積を求めなさい。
- 円 と直線 の位置関係を調べなさい。
- と の距離を求めなさい。
- 原点と直線 の距離を求めなさい。
- 原点と直線 の距離を で表しなさい。
解答
- 3。検算:垂線の足 までの距離が3 ○
- に直して (約1.34)
- 直線ABは 、高さ 、底辺 。。検算:座標から直接でも ○
- なので接する。接点は
- 3
- 。検算:垂線の足は で、原点からの距離は ○
- 。検算:6で とすると ○
まとめ
- まず の形に直す——これが最大の落とし穴
- 。分子は代入値の絶対値
- 根拠は が直線に垂直で、その向きの成分だけを取り出すこと
- 使いどころは三角形の面積と円と直線の位置関係
- 平行な2直線なら
- 検算は垂線の足を求める/他の点より短いか/0以上か
この公式は数Bのベクトルで「法線ベクトルへの射影」として再登場し、空間では点と平面の距離にそのまま拡張されます(分母が になるだけ)。形が同じなのは、考え方が同じだから。いま「垂直な向きの成分を取り出している」と理解しておけば、そこで新しく覚えることはありません。
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