「ベクトル方程式」という名前で身構える人が多いのですが、中身は単純です。
点がどう動くかを書いた「説明書」
方程式を解くのではなく、読む——そのつもりで見ると一気に分かります。
直線:通る点+進む向き
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| 通る点(出発点) | |
| 方向ベクトル(進む向き) | |
| 実数(どれだけ進むか) |
t を動かすと点Pが動き、その軌跡が直線になります。t は「時刻」だと思うと分かりやすい。
やってみる
点A(1,2)を通り、方向ベクトル の直線について、t にいくつか値を入れて点を求めなさい。また、x と y の式に直しなさい。
成分で書くと
| t | -1 | 0 | 1 | 2 |
|---|---|---|---|---|
| 点 | (-2,1) | (1,2) | (4,3) | (7,4) |
t を消去する
から 。これを x の式に入れます。
【検算】4つの点をすべて代入します。
すべて0 ○ どの点も直線上にあります。
2点を通る直線
A、Bを通る直線は、方向ベクトルを とすればよいので
この形は内分点の式と同じです。
| t | 0 | 1/2 | 1 |
|---|---|---|---|
| 点 | A | ABの中点 | B |
A(1,2)、B(4,3)なら で
【検算】 ○ さきほどの直線と同じです。
なら線分AB、t が実数全体なら直線全体——範囲が図形を決めます。
法線ベクトルを使う形
直線に垂直なベクトル を使うと
「Aから点Pへ向かうベクトルが、 と垂直」という意味です。
、A(1,2)とすると
同じ直線になりました ○
【検算】方向ベクトル と法線ベクトル の内積は
垂直 ○ 「 の係数 が法線ベクトル」という事実も確かめられます。
円:中心からの距離が一定
「中心Cからの距離が r」——円の定義そのものです。成分で書けば
(中心(2,3)、半径5の場合)
【検算】点(5,7)を代入します。
円周上 ○
直径の両端を使う形
A、Bを直径の両端とすると
「PAとPBが垂直」という意味。直径に対する円周角は直角だからです。
A(-3,3)、B(7,3)なら中心は(2,3)、半径は5。点(5,7)で確かめると
Aから点(5,7)へのベクトルは
Bから点(5,7)へのベクトルは
この2つの内積を計算します。
垂直 ○ さきほどの円と同じものを表しています。
3つの表し方は同じもの
| 表し方 | 直線の式 |
|---|---|
| 媒介変数 | |
| 法線ベクトル | |
| x, y の式 |
どれも同じ直線です。問題によって使いやすい形が違うだけ。行き来できることが実力になります。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 「方程式」という名前で誤解されるから
方程式と聞くと解くものだと思います。ところがベクトル方程式は図形を表す式——解くのではなく読むものです。
この違いが最初に示されないと、何をすればよいのか分からないまま公式を覚えることになります。
2. パラメータ t の意味が説明されにくいから
t は実数全体を動く変数です。t が1つ決まると点が1つ決まる。t の範囲が図形の範囲を決めます。
ところが t は最後に消去してしまうことが多く、役割を実感する場面が少ないのです。
3. 3つの表現が別々に登場するから
媒介変数表示・法線ベクトル・成分の式——教科書では順に出てきます。
同じ直線の言い換えだと確認する場面が作られにくいため、3つ別々に覚えることになりがちです。
【検算】3つの方法
1. パラメータに値を入れて点を出す
最も確実です。出した点が式を満たすか確かめます。
【検算】 で(4,3)。 ○
2. パラメータを消去して x, y の式にする
【検算】 を代入して ○
3. 方向ベクトルと法線ベクトルの内積を見る
0になるはずです。
【検算】 ○
よくあるミス
ミス1:方向ベクトルと法線ベクトルを取り違える
内積が0かどうかで確認します。
ミス2:t の範囲を無視する
線分か直線かが変わります。
ミス3:円の式で半径を2乗し忘れる
右辺は です。
ミス4:中心の符号を間違える
の形です。
ミス5:媒介変数を消去せずに答える
問われている形を確認します。
ミス6:内分の式と混同する
は同じ形です(混同ではなく同一)。
練習問題
- A(1,2)、 の直線を成分で表しなさい。
- t に -1、0、1、2 を入れて点を求めなさい。
- t を消去して x, y の式にしなさい。
- A(1,2)、B(4,3)のとき、 の点を求めなさい。
- 法線ベクトル を使って直線の式を作りなさい。
- 方向ベクトルと法線ベクトルの内積を求めなさい。
- 中心(2,3)・半径5の円の式を書き、点(5,7)が円上か調べなさい。
解答
- (-2,1)、(1,2)、(4,3)、(7,4)
- (2.5, 2.5)(中点)
- すなわち
- 0(垂直)
- 、 なので円上
まとめ
- ベクトル方程式は点の動き方の説明書
- 直線は通る点+方向ベクトル+パラメータ
- 2点を通る形は内分点の式と同じ
- 法線ベクトルなら内積=0で表せる
- 円は中心からの距離が一定(直径の両端なら内積0)
- 検算は値を入れる/消去する/内積を見る
ベクトル方程式が読めるようになると、図形の問題を「点の動き」として捉えられるようになります。この見方は、数IIIの媒介変数表示や物理の運動にそのままつながります。t を時刻だと思って、点が動く様子を頭の中で再生してみてください。
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