ベクトルの成分 と、図に描く矢印。この2つがつながらない——原因は1つです。
ベクトルは「位置」ではなく「移動」だから
座標 は点の場所。ベクトル は「右に3、上に2 動く」という移動です。まったく違うものです。
結論:成分は「右にいくつ、上にいくつ」
これは 方向に 、 方向に 動くという意味です。
どこから動き始めるかは書かれていません。だから矢印は平行移動しても同じベクトル。
同じベクトルの例
| 始点 | 終点 | 成分 |
|---|---|---|
3つとも同じベクトルです。場所は違っても、移動の仕方が同じだから。
【検算】それぞれ引き算で確かめます。
○
は「終点 始点」
=(Bの座標)-(Aの座標)
なぜ引き算なのか。原点をOとすると
Aまで行ってからBへ行くのは、Oから直接Bへ行くのと同じ。だから。移項すれば引き算の形になります。
【検算】、 で確かめます。
○ 順序を逆にすると符号が逆になります。。
位置ベクトル:矢印と座標をつなぐ橋
始点を原点に固定すると、ベクトルと点が1対1で対応します。
点 ⇔
このときだけ成分と座標が一致します。これが「矢印」と「数の組」をつなぐ仕組みです。
混乱の原因はここ——原点始点のときだけ座標と一致するのに、いつも一致すると思ってしまうのです。
足し算は「矢印をつなぐ」
、 とします。
図では:原点から右3・上2 動き、そこからさらに右1・下3 動く。
結果は原点から右4・下1——確かに です ○
成分の足し算は、移動の合成そのもの。だから「右にいくつ」どうし、「上にいくつ」どうしを足します。
引き算
【検算】 が に戻るか。
○
実数倍は「同じ向きに伸ばす」
向きは同じ、長さが2倍です。
【検算】大きさを計算します。三平方の定理から
確かに2倍 ○
まとめて計算する
【検算】成分ごとに確かめます。: ○ : ○
大きさは三平方の定理
右に 、上に 動いたときの直線距離だからです。
| ベクトル | 大きさ | 近似 |
|---|---|---|
| 5 | ||
| 約3.61 | ||
| 約4.12 | ||
| 約5.39 |
【検算】:、 ○ これは3:4:5 の直角三角形です。
平行かどうかの判定
一方が他方の実数倍なら平行です。
⇔
【検算1】 と :
平行 ○ 実際 です。
【検算2】 と :
平行でない ○ 実数倍で移り合わないことも確かめられます( なら 、しかし )。
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 「始点はどこでもよい」という自由度が座標と衝突するから
座標では1つの数の組が1つの点を表します。ところがベクトルでは1つの数の組が無数の矢印を表す。
この違いは数学的には自由度の話ですが、見た目が同じ という記号なので混同しやすい。位置ベクトルを導入したところで初めて整理されるため、それまでは宙ぶらりんになりがちです。
2. 「終点 始点」の理由が結果として提示されやすいから
という1行の変形が根拠です。
ところが「終点から始点を引く」という覚え方のほうが短いので、そちらが定着しやすい。すると順序を逆にするミスが起こります。 から作り直せると知っていれば防げます。
3. 図と計算が別々に扱われやすいから
成分の足し算は「矢印をつなぐ」ことと同じです。実数倍は「伸ばす」です。
ところが計算は成分、理解は図と分かれてしまうと、計算はできるが意味が分からない状態になる。1回だけでも方眼紙に矢印を描いて足してみる——それで両者がつながります。
【検算】3つの方法
1. 図に描いて「右にいくつ、上にいくつ」を数える
成分の意味そのものを確かめます。
【検算】:右に3、上に2 ○
2. 逆算する(始点 成分 終点)
【検算】 ○
3. 大きさを三平方で確かめる
実数倍したら大きさも同じ倍率になるはずです。
【検算】、 ○
よくあるミス
ミス1:成分を座標だと思う
原点始点のときだけ一致します。ふつうは移動量です。
ミス2: を「始点 終点」とする
終点 始点です。 から作れます。
ミス3:大きさを成分の和とする
三平方の定理です。。
ミス4:実数倍で片方の成分だけ倍にする
両方の成分を倍にします。
ミス5:平行の判定で内積を使う
内積が0なら垂直です。平行は実数倍。混同しやすい。
ミス6:矢印の位置が違うから別のベクトルだと思う
平行移動しても同じです。
練習問題
- 、 のとき を求めなさい。
- 、 のとき を求め、1と等しいか答えなさい。
- を求めなさい。
- 、 のとき と を求めなさい。
- を求めなさい。
- と が平行かどうか判定しなさい。
- と が平行かどうか判定しなさい。
解答
- 。1と等しい(始点が違っても同じベクトル)
- (約3.61)
- 、。検算: ○
- より平行()
- より平行でない
まとめ
- ベクトルは位置ではなく移動。成分は「右にいくつ、上にいくつ」
- 平行移動しても同じベクトル
- 終点 始点( から)
- 原点始点のときだけ成分=座標(位置ベクトル)
- 足し算は矢印をつなぐ、実数倍は伸ばす
- 大きさは三平方の定理
- 検算は図で数える/始点+成分=終点/大きさの倍率
ベクトルの強みは「図形の問題を、数の計算に置き換えられる」ことです。矢印を成分に直せば、図を描かずに答えが出る。そのためには、まず矢印と成分が同じものだと納得しておく必要があります。方眼紙1枚と鉛筆——それが最短の近道です。
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