を に直す——中3で習う「分母の有理化」です。
ところが授業では「分母にルートが残っていたら直す」という決まりだけを教わることが多く、なぜ直すのかは説明されません。実際に生徒からいちばん多い質問が「 のままではダメなんですか?」です。
結論から言うと「ダメ」ではありません。それでも有理化する理由がちゃんとあります。
結論:値を比べやすくし、計算を軽くするため
と はまったく同じ数です。等式として正しいので、どちらで書いても値は変わりません。
それでも有理化するのは、次の3つの実利があるからです。
- おおよその値がすぐ分かる(暗算できる)
- 他の式と足し引きしやすい(通分できる形になる)
- 答えの形が全員で揃う(採点・照合が確実になる)
順に見ていきます。
理由1:おおよその値がすぐ分かる
は覚えている人が多いはずです。この値を使って両方の形を計算してみます。
| 形 | 必要な計算 | 難しさ |
|---|---|---|
| 小数のわり算(暗算はほぼ無理) | ||
| 2で割るだけ(暗算できる) |
どちらも答えは ですが、後者は「1.41を半分にする」だけで済みます。電卓のなかった時代に有理化が定着したのは、この差が決定的だったからです。
【検算】。ほぼ1になるので、確かに の値と一致しています。
理由2:足し引きができる形になる
ここが実際の計算でいちばん効きます。次の式を計算してみてください。
このままでは通分の相手が見えません。第1項を有理化すると
となり、両方の分子が で揃います。
【検算】数値で確かめます。、。和は 。
答えの 。一致しました。
有理化は「分母を整数に揃える作業」だと考えると、通分の前段階だと分かります。
理由3:答えの形が揃う
同じ値でも 、、 など無数の書き方ができます。「分母を有理数にする」というルールを全員で共有すれば、答えの表記が1つに定まります。
採点で照合しやすくなるだけでなく、自分で見直すときにも、前に解いた答えと形が揃っていれば比較が一瞬で済みます。
やり方:分母を消す「相棒」をかける
分母が単項( だけ)のとき
分母と同じ を分母・分子にかけます。
となってルートが消えるのがポイントです。分母と分子に同じ数をかけているので、値は変わりません( をかけているだけ)。
分母が2項( など)のとき
符号を反転させた式(共役)をかけます。使うのは平方の差の公式です。
2乗するとルートが外れる性質と組み合わせます。
【検算】 として、もとの式は 。
答えの式は 。一致します。
なぜ共役をかけると消えるのか。 となり、2乗の形になった瞬間にルートが外れるからです。
【検算】有理化しても値が変わっていないことの確認
有理化は「同じ数を分母と分子にかける」だけなので、値は保存されるはずです。いくつかの例で数値を突き合わせます。
| もとの式 | 有理化後 | もとの値 | 有理化後の値 |
|---|---|---|---|
| 0.7071068 | 0.7071068 | ||
| 1.3416408 | 1.3416408 | ||
| 0.3660254 | 0.3660254 | ||
| 2.6180340 | 2.6180340 |
小数第7位まで完全に一致しています。有理化は形を変えているだけで、数そのものは動いていません。
よくあるミス
ミス1:分子にだけかけてしまう
の分子にだけ をかけて とするのは値が変わってしまうので誤りです( が になってしまいます)。必ず分母と分子の両方にかけます。
ミス2:共役の符号を間違える
の分母には をかけます。同じ をかけると
となり、ルートが残ったままで目的を達成できません。符号を反転させるのが共役です。
【検算】。もとの式は 。答えは 。一致します。
ミス3:約分を忘れる
最後の約分まで済ませます。 で止めると減点対象になることがあります。
練習問題
- を有理化しなさい。
- を有理化しなさい。
- を有理化しなさい。
- を計算しなさい。
解答
- (約分まで)
- 共役 をかけて
- なので 。【検算】数値では 、 で一致
まとめ
- 有理化しなくても値としては正しい。それでもやるのは、値の見積り・足し引き・表記の統一のため
- 分母が単項なら同じルートを分母分子にかける
- 分母が2項なら符号を反転した共役をかける(平方の差でルートが外れる)
- やっているのは「 をかける」ことなので、値は絶対に変わらない
- 最後に約分まで済ませる
有理化は高校の三角比()、数II の複素数、数III の極限計算まで、形を変えて繰り返し登場します。「なぜやるのか」を押さえておくと、高校で「どこまで整理すればよいか」の判断もつくようになります。
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