は解ける。でも になると場合分けが必要で、しかも出た解を捨てるかどうかで迷う。数Iで最初に本格的な場合分けを求められる場面です。
手順は完全に決まっています。中身が0になる点で切る。そして必ず範囲を確認する。
結論:中身の符号で2つに分ける
絶対値の定義に戻ります。
( のとき) / ( のとき)
だから は
- つまり のとき …
- つまり のとき …
切れ目は 。これは中身が0になる点です。
場合分けの境目=絶対値の中身が0になる
自分で決めるのではなく、式が決めています。
手順は4ステップ
- 中身が0になる を求める(=境目)
- 境目で範囲を2つに分ける
- 各範囲で絶対値を外して解く
- 出た解がその範囲にあるか確認する(範囲外なら捨てる)
ステップ4が最重要です。ここを飛ばすと、存在しない解を答えてしまいます。
やってみる:
ステップ1・2:境目は 。範囲は と 。
範囲1:
絶対値はそのまま外れます。
ステップ4: は を満たすか——満たしません。この解は不適です。
範囲2:
符号を変えて外します。
ステップ4: は を満たす——適します。
答えは です。
【検算】元の式に代入します。
両辺とも2で一致 ○
捨てた解も確認します。 なら左辺は 、右辺は 。6と で一致しません ○(不適だと確認できました)
なぜ範囲外の解が出るのか
範囲1では「 だと仮定して」絶対値を外しました。その仮定のもとで出た解が 。
仮定と矛盾しています。だからその解は存在しません。
「仮定して解いて、仮定と合うか確かめる」——場合分けとはこの作業です。確認を飛ばすと、仮定が崩れた解を答えることになります。
不等式の場合
を解きなさい。
不等式でも手順は同じですが、もっと速い方法があります。
絶対値を距離として読むと
= 「1からの距離が3未満」
数直線で1から左右に3ずつ動いた範囲なので
【検算】場合分けでも確かめます。
- のとき … より 。合わせて
- のとき … より 。合わせて
2つを合わせると ○。距離で読んだ結果と一致しました。
不等号の向きで公式が変わる
| 式 | 意味 | 答え |
|---|---|---|
| からの距離が 未満 | ||
| からの距離が より大 | または |
なら「間」、 なら「外側2つ」——数直線を思い浮かべれば当然です。
【検算】 を確かめます。距離が3より大きいのは または 。
なら ○。 なら で不適 ○。境界の外側だけが解です。
絶対値が2つある場合
を解きなさい。
境目が2つになります。 と 。範囲は3つに分かれます。
範囲1:(両方とも中身が負)
は を満たす——適する。
範囲2:(1つ目は正、2つ目は負)
矛盾。この範囲に解はありません。
範囲3:(両方とも中身が正以上)
は を満たす——適する。
答えは です。
【検算】代入します。
- … ○
- … ○
両方とも成り立ちました ○
範囲2で矛盾が出たことにも意味があります。 では は常に3(2点間の距離)なので、5にはなりません。
【検算】 で 、 で 。確かに一定で3 ○
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 中学で絶対値を「マイナスを取る」と覚えているから
中1で絶対値を習ったとき、扱ったのは のように中身が具体的な数でした。「マイナスを取る」で全問正解できます。
ところが では中身の符号が によって変わります。ここで初めて場合分けの定義が必要になる。
中学の理解では対応できない——ここが最初の壁です。定義に戻ることが必須になります。
2. 「範囲の確認」が答案に現れにくいから
模範解答には「これは範囲を満たすので適する」と書かれますが、なぜ確認が必要なのかは説明されません。
確認を飛ばしてもたまたま正解になる問題が多い(範囲外の解が出ない問題)。すると確認する習慣が身につかず、範囲外の解が出る問題で初めて失点します。
「仮定して解いた以上、仮定と合うか確かめる」——この論理を理解しておけば、確認を飛ばさなくなります。
3. 距離としての読み方が扱われにくいから
を「 からの距離」と読めば、不等式は場合分けなしで解けます。
ところが絶対値の定義(場合分け)と、距離としての意味は、別々に扱われることが多い。定義は数Iの実数、距離としての解釈は中1の数直線です。
両方を持っておくと、方程式は場合分け・不等式は距離で使い分けられ、大幅に速くなります。
【検算】3つの方法
1. 元の式に代入する
絶対値の中身を計算してから絶対値を取ります。最も確実です。
| 方程式 | 解 | 代入 |
|---|---|---|
| 、 ○ | ||
| ○ | ||
| ○ |
2. 捨てた解も代入して確かめる
本当に不適かを確認します。 なら だが右辺は 。成り立たない ○
この確認をすると、場合分けの意味が体感できます。
3. 不等式は数直線で確かめる
境界の内側と外側で実際に値を入れてみます。
- の答え
- 内側の … ○
- 外側の … で不適 ○
- 境界の … で等号なので不適 ○
よくあるミス
ミス1:範囲の確認を飛ばす
仮定と合わない解は捨てます。これを忘れると、存在しない解を答えます。
ミス2:負のほうで符号を1つしか変えない
です。かっこの中全部の符号が変わります。 ではありません。
ミス3:境目を含める範囲を両方にする
と のように、境目はどちらか一方だけに含めます。両方に入れると重複します。
(どちらに入れても答えは同じです。境目では中身が0なので、 でも でも同じ値になるからです。)
ミス4:不等号の向きを取り違える
は「間」、 は「外側2つ」です。数直線を描けば迷いません。
ミス5:右辺が負のとき解があると思う
には解がありません。絶対値は必ず0以上だからです。場合分けする前に気づけます。
練習問題
- を解きなさい。
- を解きなさい。
- を解きなさい。
- を解きなさい。
- を解きなさい。
- を解きなさい。
解答
- 2からの距離が6なので。検算:、 ○
- 境目は 。
: より 。範囲内なので適する。
: より 、。範囲外なので不適。
答えは。検算:、 ○ - 4からの距離が2未満なので
- 4からの距離が2より大なので または
- 境目は と 。
: より 、。適する。
: より で矛盾。
: より 、。適する。
答えは。検算: ○、 ○ - 絶対値は0以上なので にはならない。解なし
まとめ
- 境目は中身が0になる 。自分で決めるのではなく式が決める
- 手順は①境目を出す ②範囲に分ける ③外して解く ④範囲を確認する
- ステップ4が最重要。仮定と合わない解は捨てる
- 不等式は距離として読むと速い。 は間、 は外側2つ
- 絶対値が2つなら境目も2つ、範囲は3つ
- はかっこの中全部の符号を変える
- 右辺が負なら解なし。絶対値は0以上
「仮定して解き、仮定と合うか確かめる」という構造は、高校数学のあらゆる場面で現れます。三角方程式の角の範囲、対数方程式の真数条件、無理方程式の同値性——どれも「解いた後に条件を確認する」という同じ作業です。数Iの絶対値は、その最初の練習です。ここで確認する習慣を作っておけば、その先の失点が大きく減ります。
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