絶対値のついた定積分でつまずくのは、どこで分けるかではありません。多くの人が間違えるのは「分けなくていい場合に分けてしまう」ほうです。
基準は1つ。符号の変わり目が、積分区間の内側にあるかどうか。
結論:5ステップ
- 絶対値の中身 を解く(符号の変わり目)
- その点が積分区間の内側にあるか確認
- 内側なら、そこで区間を分ける
- 各区間で絶対値を外す(中身が負なら符号を反転)
- 足す
ステップ2を飛ばすと、不要な場合分けをして計算が壊れます。
なぜ分ける必要があるのか
絶対値は「場合によって式が違う」記号です。
( のとき)、( のとき)
積分は1つの式に対する操作なので、式が2種類あるままでは計算できません。だから式が1つに定まる区間に分けるのです。
やってみる1:
ステップ1・2
より 。これは の内側です。
ステップ3・4
| 区間 | の符号 | 絶対値を外すと |
|---|---|---|
| 負 | ||
| 正 |
ステップ5
【検算】図形として求めます。 はV字型のグラフ。
- 左側:底辺1、高さ1の三角形 →
- 右側:底辺2、高さ2の三角形 →
合計 。一致 ○
やってみる2:分けてはいけない場合
を求めよ。
符号の変わり目は 。ところが積分区間は 。
は区間の外
区間内では常に なので、分けずにそのまま外せます。
【検算】図形として。 で高さ1、 で高さ3の台形です。
一致 ○
【検算2】区間の端で中身の符号を見ます。 で 、 で 。両端とも正なら、途中も正(1次式なので)○
やってみる3:
符号の変わり目
積分区間は 。 は端点、 は内側です。
分けるのは だけ。端点で分けても意味がありません。
各区間で外す
| 区間 | 外すと | |
|---|---|---|
| 負(または0) | ||
| 正(または0) |
計算
【検算】符号を確かめます。 で ○、 で ○
【検算2】大きさの見当。。区間の幅は3、高さは最大で 。妥当な大きさ ○
やってみる4:境界が両端にある場合
を求めよ。
どちらも積分区間の端点です。内側に変わり目はありません。
区間内()では 、 なので積は負。
【検算】6分の1公式で確かめます。 なので 、。
一致 ○
【検算2】 で中身は 。確かに区間内で負 ○
結果は必ず0以上
絶対値のついた関数は0以上なので、その積分(面積)も必ず0以上です。
負が出たら計算ミス——これが最も速い検算になります。
【検算】4つの答え:。すべて正 ○
学校の授業では、なぜここが飛ばされやすいのか
1. 「区間の外なら分けない」が例題に出にくいから
教科書の例題は符号の変わり目が区間の内側にある場合が中心です。そこでは必ず分けることになる。
そのため「絶対値が出たら分ける」と機械的に覚えやすい。区間の外にあるパターンは注意として触れられる程度のことが多く、本番で判断できないまま分けて誤ります。
2. 面積として見る視点が示されにくいから
のグラフは 軸より下の部分を折り返した形です。
この見方があれば図形の公式で検算できます。ところが積分の単元では計算手順が中心になりやすく、グラフを描いて確かめる習慣が身につきにくい。V字型や折り返しは、描けば一瞬で分かります。
3. 数Iの絶対値と同じ原理なのに、単元が離れているから
絶対値の場合分けは数Iの数と式で習いました。中身の符号で式が変わる——原理はまったく同じです。
ところが数IIの積分まで間があるうえ、方程式・不等式と積分では見た目が違う。同じ手順だと気づきにくい構成になっています。「中身が0になる点で分ける」——これは変わりません。
【検算】3つの方法
1. 図形の面積として求める
1次式なら三角形・台形で確かめられます。
【検算】:三角形2つで ○
2. 結果が0以上か
絶対値の積分は必ず0以上。負なら符号の付け方を間違えています。
3. 区間の途中で中身の符号を確かめる
代表値を1つ代入して、想定した符号と合うか見ます。
【検算】 で :中身は ○ だから で正しい
よくあるミス
ミス1:変わり目が区間の外なのに分ける
区間の内側にあるかを必ず確認します。
ミス2:符号を反転させ忘れる
中身が負の区間では をつけます。
ミス3:端点で分けてしまう
端点は分ける必要がありません。区間の幅が0になるだけです。
ミス4:中身が2次式のとき解を1つしか求めない
なら の2つ。両方確認します。
ミス5:分けた区間の順序を逆にする
小さいほうから大きいほうへ積分します。
ミス6:答えが負のまま提出する
必ず0以上です。見直します。
練習問題
- を求めなさい。
- 1を図形の面積としても求めなさい。
- を求めなさい。分ける必要があるか答えなさい。
- を求めなさい。
- を求めなさい。
- 5を6分の1公式でも確かめなさい。
- 絶対値のついた定積分の結果が必ず0以上である理由を答えなさい。
解答
- で分けて
- 三角形2つで ○
- は区間の外なので分けない。4。検算:台形 ○
- で分けて
- 区間内で中身は負なので
- ○
- 被積分関数 が常に0以上だから。負なら計算ミス
まとめ
- 手順は①中身=0 ②区間の内側か ③分ける ④符号を決めて外す ⑤足す
- 変わり目が区間の外なら分けない(最頻出のミス)
- 端点も分ける必要なし
- 中身が負の区間では符号を反転させて外す
- グラフは 軸より下を折り返した形
- 結果は必ず0以上
- 検算は図形の面積/0以上か/代表値で符号確認
絶対値の処理は「1つの式に見えて、実は2つの式」という状況への対処です。方程式でも、不等式でも、積分でも、やることは変わりません。符号が変わる点で世界を分ける。この操作を1つ覚えておけば、絶対値が出てきても慌てずに済みます。
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